2011年8月5日

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富士山と向き合う人々の活動とともに

環境大臣 江田 五月

 「富士山をきれいにする会」の発足から、50年が経過しました。「継続は力なり」と言いますが、半世紀にわたって活動を継続するのは、簡単なことではありません。50周年記念行事にあたり、心からお祝いを申し上げるとともに、驚異的な活動の継続に対し深甚なる敬意を表します。

 富士山は、日本の象徴として私たちの心に刻み込まれ、外国の人々にも良く知られてきました。日本で最も高く大きく、世界でもまれに見る優美な山容は、まさに人々を圧倒し魅了しつくし、「霊峰富士」と呼ばれるほどです。そして昭和11年2月1日、日本を代表する傑出した自然風景地として、国立公園に指定されました。

 富士山は、いくつかの火山の噴火が長い時間をかけて重なり合い、さらにそれら火山の山体を土台として、その上に一段と大きな火山が噴出し、現在の形となったと言われます。地質学者の皆さんは、富士山が美しい傾斜の裾野を引く山容でありながら、これだけの大きな山体を晒している事実に、大きな驚きを感じているようです。

 富士山は、内外から多くの観光客を集めています。現在、8合目より上部へ登山する人々の数は、開山時の7、8月には30万人を越え、山麓を訪れる観光客を含めると、年間約1600万人という国内有数の観光地となっています。しかし、喜んでばかりはいられません。来訪者が残すゴミやし尿の処理、交通混雑への対処といった問題も発生してきました。

 このような状況を改善するため、環境省では、清掃事業を実施するとともに、「自然公園クリーンデー」に代表される美化清掃作業を、関係機関と連携、協力して推進してきました。また、し尿の垂れ流しによる環境悪化を防ぐため、富士山頂や吉田口下山道7合目等に、自然エネルギーを活用した環境への負荷が少ないバイオトイレを整備し、美しい環境の維持に努めています。さらに平成6年から、地元関係者の皆さんと協力してスバルラインの交通規制などを行い、交通混雑の緩和、事故防止等の秩序ある利用を図り、観光客の利便を確保してきました。

 富士山のゴミやし尿の問題は、スバルラインが開通した昭和39年から40年代に比べ、現在ではずいぶん改善されたと聞いていますが、それは行政による事業のみでは到底なしえません。「富士山をきれいにする会」をはじめとする民間団体や地元関係者の皆さんによる絶え間ない努力があったからこそ、生み出された成果だと思います。また、このような民間活動は、富士山を美しくするだけでなく、その活動を通じて広く国民の皆さんの意識を高め、富士山を国民共有の文化財とすることにつながっているのだと思います。

 これらの成果により、先月27日には、山梨、静岡の両県から文化庁へ世界文化遺産の推薦書原案が提出されました。富士山をめぐる国や自治体と関係者の皆さんの協働が大きく花開くことを期待しています。

 これからも長く富士山が美しい姿を保ち続け、日本国民だけでなく世界の人々にとっても憧れの的であり続けるよう、地元の皆さんと共に、そしてオールジャパン規模で国民の皆さんと共に、私たち行政も努力を続けます。地元有志や賛同される皆さんの熱意により、「富士山環境美化クリーン作戦」などの活動が今後ますます発展することを願って、挨拶とします。

山梨日日新聞 2011年8月5日掲載


2011年8月5日

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