2003/07/09

戻るホーム主張目次会議録目次


156 参院・憲法調査会

13時から16時半まで、憲法調査会。平和主義と安全保障につき、植村秀樹教授、志方俊之教授、渡辺昭夫研究所理事長から、参考人意見聴取。質疑の後、委員間の自由討議に移り、私は、公聴会に公募公述人として意見陳述してくれた藤井富美子さんとのメールのやり取りを紹介し、私が1993年11月に提唱した安全保障基本法要綱にも言及して、集団的措置につき日本の行うべき国際貢献策などの意見を述べました。


平成十五年七月九日(水曜日)    >>会議録全文

○江田五月君 発言の機会を与えていただきありがとうございます。

 私は、毎晩、自分のホームページに活動日誌を書き込みまして、週二回、これを張り付けて、資料サービスのほか、時々の問題についてショートコメントを付したメールマガジンを発行しております。最近の号に書いたものに対して、藤井富美子さん、覚えておられるでしょうか、ちょっと前に公聴会で公述人として来ていただいた大阪の主婦の方ですね。その彼女から今朝、感想のメールが届きました。そこでまず、その抜粋を読んでみます。

 江田五月様。今回の派遣は、米軍のイラク占領を支援するためにすぎず、絶対反対。創設以来初めて戦闘で殺傷という事態に直面するのが、自国防衛でも国連活動でもなく、米軍の占領支援というのでは、自衛隊の皆さんにとっても気の毒だ。

 もう一つ。小泉首相のイラク復興支援策は大間違いだ。一刻も早く、現在の米英軍による統治をイラク人自身による暫定統治政権に移行させるべきだ。そうすれば、国連PKO活動や人道支援活動が始まり、これに自衛隊も派遣できる。形式のことではなく、実質の話だ。今のイラク特措法では、自衛隊は米英占領軍のポチかパシリになってしまう。

 びっくりされるかもしれませんが、これは私がショートコメントで書いた部分であって、これに対して御意見を寄せていただいたということです。

 以上のコメントには私も全く同感です。ここまでは感想ですが、途中を省略しまして、彼女の意見が次に書いてあります。私は個人の尊重を国家を保持することよりも上位に置いています。でも、それを真に実現するために、自衛権の制限と、国際的に公正な警察軍の創設によって各国の独立を守るということの二本立てによって国家間の戦争が起きないシステムを作り上げ、人間の理性に任せて戦争が起きないようにするのではなく、世界に法の支配を推し進めることで戦争を違法としようというのが一番言いたかったことなのです。

 ちょっと、間、省略して。国際警察軍というもののみが他国領に入って武力行使ができるということになれば、世界市民の一人一人がそれによって被った損害を国家賠償ならぬ国連賠償を要求できるようにする人権救済も考えています。

 またちょっと省略して、次に時事問題に移ります。

 今日の社説では、イラク特措法が参院で修正されることを望んでいるような内容でした。民主党が自衛隊派遣を駄目としたので、衆院では原案のまま通過してしまったと、半ば民主党の責任にしています。私はそれは筋が違うだろうと思いました。

 またちょっと省略して。その後、確かに今のままイラク特措法が参院も通過するのでは最悪だなと思ってきました。数の力で、国民そっちのけで決まってしまう法って何だと改めて思ってしまいます。小泉首相が自衛隊派遣をブッシュに確約したかどうかは分かりませんが、少なくとも暗黙の了解があったのではないかと思います。小泉さんも首相でいる限りはその約束を果たさないわけにはいかないのでしょう。これは、小泉さんをいいように言い過ぎているかもしれませんが。そもそも、イラク特措法の出発点は小泉さんのイラク戦争支持声明からです。支持なんてするから、してはいけないことまで理屈をこね上げてやらなければならぬようになるのです。それはさておき、小泉さんのメンツも立てて、日本の進路を誤らせないようにするにはどうしたらいいか、これがこの問題のましな解決法を導くでしょう。無理なのかは分かりませんが、自衛隊の派遣を暫定政権樹立まで待つというのは提案できないことでしょうか。イラク人による民主的な政権ができ、その政権の依頼で行くという形式を取ることで人道援助の色彩が濃くなります。ある種、米軍が始めた戦争で、国連に戦後統治には関与させない姿勢で米国がいるんだから、暫定政権樹立までは責任を持たせてやらせればいい。その後、自衛隊を送ると言えば、アメリカとの間にも支障は出ないのではないでしょうか。考えが甘いかもしれませんが。藤井富美子。

 こういうメールで、いや、あの日のときのことをもうほうふつとさせて、なかなか彼女は考えているなと思いました。

 そこで、今朝、私は返事のメールを書いたんですが、前段は省略して後段だけ。

 イラク人による暫定政府の要請が来るまで自衛隊派遣を待つというのは面白いのですが、問題があります。アメリカがかいらい政権を作ったらどうしますか。私は、やはりきちんとした政権ができ、国連の行うPKOが成立した後に、その活動として自衛隊を送る方法しかないと思います。その場合は特措法は不要です。その際の旗は国連旗です。私の意見は、自衛隊の中の陸海空とは違う別組織です。小泉さんの顔は立たないかもしれませんが、しようがないでしょう。ブッシュ支持が間違ったのだから。どうぞよろしく。江田五月。

 公聴会を開いて、公募の公述人から直接国民の声を聞いて、その後このようなキャッチボールをすると。これは、余り我田引水になっちゃいけません、自画自賛になってもいけませんが、結構、国民との間で論憲をやるという私たちの活動の大方針に合致しているんじゃないかと思って、今日はその紹介をひとつさせていただきました。

 実は、私は今、日本国憲法の国際協調主義が本当に大変な危機に直面をしていると思っております。国際協調主義というのは、何か一つの外国あるいは幾つかの外国の集団、これと協調するというんではなくて、やっぱり国際社会と協調するということ。国際社会というのは昔からあったんじゃなくて、次第次第にその主権国家というのが国際社会にいろんな権限を譲り渡して国際社会の一つの制度を作っていくという形でできてきているものですね。

 今やっぱり国際社会というのを考えるときに、国連がいかによちよち歩きであろうとも、国連を無視して考えるというわけにはいかないんで、その国連が今本当に危殆に瀕しているということだと思いますね。もうアメリカが提供する軍事力による平和にみんな世界じゅうがゆだねてしまえ、日本もゆだねてしまえということにするのか。それとも、やっぱりここは、いかによちよち歩きの状態でも踏ん張って、国連というものをしっかりさせてこの国際社会が制度化されていく、その国際社会の中に法の支配が確立できる、そういうところへ行くのか。日本がどっちを取るのかという重要なところへ来ていると思います。

 そんなことを考えながら、実は今日は安全保障基本法のお話が随分出ましたので、私自身の提案をひとつ御紹介をしておきたいんですが、私はそのようなことを考えながら、この個別の主権の拡張概念としての集団的自衛権ではなくて、やっぱり集団的自衛権、個別の主権を超える集団安全保障システムというものをしっかりさせる、そのために日本は役割を果たす、そんなことを考え、一九九三年の十一月に、実は当時、科学技術庁の長官当時だったんですが、安全保障基本法案要綱というものを提唱をしたことがございます。

 もうそろそろ時間なので詳しくは申し上げられませんが、現在の日本国憲法第九条の解釈確定法のような性格を持っていて、まず、戦後五十年の憲法論争を踏まえて、自衛権の発動に必要な防衛力としての自衛隊の保有を認めると。そして第二に、第九条から生まれた平和八原則、八つぐらい原則があるんですね、これを守ると。第三に、国連の平和維持活動と集団安全保障措置に、私は別組織、国際公務員がいいと思うんですが、積極的に参加をし、協力をすると。そういう内容のものでございまして、先ほど平野さんのお話の自由党の安全保障基本法案、あると思いますが、多少違う部分もあるかもしれませんが、ひとつそういう方向でしっかりと議論をしていきたいと思っております。この内容は私のホームページに載っておりますので、是非ごらんいただきたいと思います。

 ちょっと時間を過ぎました。

参考:安全保障基本法要綱


2003/07/09

戻るホーム主張目次会議録目次