1999/06/16

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参院・行革税制等特別委員会 総括質疑 

参考 内閣機能強化関連法案 民主党案・政府案対比表

○江田五月君 おはようございます。お疲れでしょうが、お休みの方もひとつ目を覚ませていただきたいと思います。

 中央省庁等改革関連を中心に、民主党・新緑風会を代表してトップバッターとして質問をさせていただきます。
 まず、小渕総理、今もお話しのとおり、この国会はもうあすでおしまいなんです。あさってから総理はケルン・サミットにお出かけになる。どうされますか。この大法案、きのうは地方分権一括法できょうが中央省庁で、やっと総括、集中が始まったばかりのところなんで、これであしたまでに終わるというわけには到底いかない。

 そこで、この両法案とも、これはこの国会の当初から課題になっていたわけで、予算もありました、重要法案、いろいろありました。そして、ここへ来て、この法案を仕上げるために、私たちはすべて賛成というわけじゃありませんが、しかし審議をし結論を得るために、国会の若干の延長ということはあるいはそれはあるかもしれない。しかし、通常国会というのは百五十日とルールが決まっているわけで、延長は一回と決まっているわけです。

 いろいろ延長話が出ているようで、二十日程度という話があったかと思ったら、次は八十五日ですか、と思ったら今度は五十何日とか、迷走。八十五日というのは小渕総理は寝ずに考えた総理の決断と、こういうことだったのが、何かあっという間にしぼんだという感じですが、何をお考えなのか。自自公連立ということを考えておるのか、あるいは総裁選をどうするか、解散・総選挙というような動きを探っておられるのか、何を考えておられるのか。

 これは、延長のことをロにされたら国会はその場でストップというようなこともあるいはあるのかもしれませんが、どうされるおつもりなのかをちょっとお聞かせください。

○国務大臣(小渕恵三君) 今さらでございますが、国会の会期につきましては、国会法の規定によりまして、「両議院一致の議決で、これを延長することができる。」とされております。

 政府といたしましては、多くの法案を現在両院において御審議をいただいておるところでございます。国民のためにも、どうしても制定をしていただかなければならない法律案もございますので、ぜひこうしたものが御審議、成立をしていただけるようにお願いをいたしたい、こう思っております。したがいまして、会期の延長につきましては、国会でお決めをいただくことではありますけれども、特に政府といたしましては、去る六月十一日に、産業構造転換・雇用対策本部におきまして、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を取りまとめたところでございますので、関連の補正予算と法案につきましてできるだけ早く編成あるいは法案化いたしまして、国会の御審議をいただき、これら対策を迅速に実施に移すべきものと考えております。

 重ねてでありますけれども、現下のこの国内における雇用問題は、経済の再生とともに、企業に関連することではございます。競争力を強化するということの中には、各企業体におきましてもかなり厳しいリストラを実行しようということでございまして、これが行われるということになりますと当然のことながら雇用が失われるということでございまして、現下の政治の大きな課題であると思っておりますので、その解決のためにできれば補正予算等を国会に御審議願い、各種の政策を遂行していきたい、こう念願いたしております。そうした御審議をいただくためにも、でき得べくんば、国会における熱心な御審議によりまして、こうした問題について具体的な施策を遂行できるように御理解をいただきたい、こう考えておるところでございます。

 念のためでございますが、私のところにも、民主党の代表並びに緊急失業・雇用対策本部長、両氏から、「必要な法整備と財政措置を今次通常国会中に講ずることを申し入れる。」、こう書いてありますので、そうした民主党のいろいろ具体的政策につきましても、御審議をいただきながら、政府としてはこれを実行することができれば幸いだと、こう願っておるところでございます。

○江田五月君 いや、それだけの話なら、やれ五十何日だ八十何日だと迷走することじゃなかったんじゃないんですか。それが一体、総理のリーダーシップで言い出されたものが急にしぼむとか、非常に何かほかの思惑でいろいろとやっていらっしゃるんじゃないかと。わかりにくい。わかりにくいこと、もう一つ、総理のリーダーシップがどこにあるのかということ、私はこういう政治の流れというのは国民の皆さんにとてもわかっていただけないと思います。

 さて、今のそういうわかりにくい政治じゃなくて、あるいは総理のリーダーシップがどこにあるかわからない政治じゃなくて、もっと国民にわかりやすく、もっと政治のリーダーシップがちゃんと総理を中心に果たしていけるようにという、私は、行政改革というのはそのあたりが一番の眼目じやないかと思っておるんですが、何のための中央省庁改革、行政改革なのか、これがどうも皆さんの頭の中ですっきりしていないんじゃないかという気がして仕方がありません。

 政府の行政改革会議の最終報告、これはおととし、平成九年十二月三日に提出されている。今回、この法案の審議に当たって、私も再度これに目を通してみました。
 その「行政改革の理念と目標」、なかなかいいことが書いてある。しかも、この文章の書きぶりというのは、先ほどもいろいろお話がございましたが、心がこもっているんじゃないか、これは官僚の皆さんにはなかなか書けない文章じゃないか、そんな感じもするようなものがいろいろあって、この最終報告の全部ではありませんが、「はじめに」あるいは「行政改革の理念と目標」、あるいは最後、「未来に向けて(結びにかえて)」、こういうあたりは与野党を通じて我々みんなの共通の基盤になるものではないかというふうに思っておりますが、総理は、今回の行政改革、中央省庁改革とこの行革会議の最終報告とはどういう関係にあるというふうに思っておられますか。

○国務大臣 (小渕恵三君) 行革会議のそういう御検討をいただきながら、前内閣におきましてこれを取りまとめさせていただいた。特に、橋本前総理が総理の時代に心血を注いで、みずから本部長となりましてまとめ上げましたのが今日提案になっております法律案の原点でございますので、そういった意味におきまして、今お示しをされたことも今日の法律の制定の原点として、そうした考え方に基づいてこれを制定しようとしておることでございます。

○江田五月君 この行革会議の最終報告というものがあり、恐らくそれに基づいて基本法をおつくりになり、その基本法に基づいて今回お出しになったと。
 最終報告で高らかにうたわれている理念と目標、これは私ども共通の基盤になる。しかし、そこから先がどうも国会の延長の話と同じように迷走をされておるんじゃないか、こういう感じがいたします。

 この最終報告では、例えば、「はじめに」のところで、「今回の行政改革の要諦は、肥大化・硬直化し、制度疲労のおびただしい戦後型行政システムを根本的に改め、自由かつ公正な社会を形成し、そのための重要な国家機能を有効かつ適切に遂行するにふさわしい、簡素にして効率的かつ透明な政府を実現すること」だと、そういうこと。あるいは、「もはや局部的改革にとどまり得ず、日本の国民になお色濃く残る統治客体意識」、だれかがやってくれるだろうという意識と言っていいんでしょうか、「に伴う行政への過度の依存体質に訣別し、自律的個人を基礎とし、国民が統治の主体として自ら責任を負う国柄へと転換することに結び付くものでなければならない。」とか、もちろんセーフティーネット、そういう制度的保障はこれは当然の話ですが、そして、「従来日本の国民が達成した成果を踏まえつつ、より自由かつ公正な社会の形成を目指して「この国のかたち」の再構築を図る。」とか、いろいろそういうことが書いてあります。

 総じて言えば、私は、これはやはり従来の日本型のシステム、これを新しい二十一世紀型のシステムへ転換する、言いかえれば、行政改革だけでそれはできないですよということも書いておられるわけで、ほかのいろんな、経済のこともあります、あるいは司法のこともあります、さまざまなことがありますと、そうやって行政改革を初めとする我が国の構造改革を実現しようと、こういうことではないかと思います。これは総理いかがですか。

○国務大臣(太田誠一君) 最終報告のことにたびたび先ほどから江田委員が言及をしていただいておるので、最終報告の考え方は、まず一番象徴的には、内閣法の国民主権の理念に基づいてという内閣法の一条と二条の改正にいろんな思いを込めて入っております。

○江田五月君 それはいいので、そうじやなくて総理に、この国の構造を、行政改革も含め、経済のこと、司法のこと、国会のこと、すべてこの国の構造を変えなきやいけない、そういうテーマに我々は取り組まなきゃいけないんだという、それがこの最終報告の主張だと思いますが、その点は総理、まさか異論はないでしょうね。

○国務大臣(小渕恵三君) 行政改革会議のこの真剣な御討議のもとまとめられたものは、そうしたことを企図しておると考えておりまして、できるものからぜひ取り組ませていただかなきゃならぬ、こう考えております。

○江田五月君 今、総理は、この三月期のGDPが前期比プラス一・九%で、大変御機嫌だというように拝見しますが、そういうことに一喜一憂ではなくて、やっぱりきちんとした構造改革をやらなきゃいけない。今、経済がちょっと明るさが見えるように感ぜられると、これからまだ先わかりませんが。そうなってきたについては、私はやはり去年我々が与野党を通じ一生懸命に努力をしてまいりました金融再生法というものがひとつあずかって力があったのではないかと思っているんですがね。

 しかし、金融再生法にもかかわらずといいますか、もとより当たり前といえば当たり前ですが、それ以前からあった大蔵省を中心とする護送船団方式によるこの国の金融と財政の運営、これがいろんな問題を起こしてきましたし、今も起こしておる。

 ちょっと最近のことを見ますと、たくさんありますね。国民銀行、幸福銀行、東邦生命、東京相和銀行、そして長銀では遂に元頭取らの逮捕と、いろいろ出てきた。これは、やはり私は、金融と財政の完全分離をきっちり図らなきやいけない、それが残って、大蔵省改革が不徹底のままではこうしたことが次から次へ起きていくような、いわゆる金融と財政、この行政改革というのは徹底しない、こう言わざるを得ないと思う。

 金融再生法のときに、衆議院の方で我々の鳩山由紀夫幹事長代理がお話をいたしましたが、あのときに私どもがどういう思いを持って総理と約束を交わしたか、それがどうほごにされているか、総理はこの点についてどうお考えなんですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 財政と金融の分離等に関する昨年の党首会談及び三会派実務者間合意の内容の具体化につきましては、これが政党間の合意であることから、政党間協議の中で整理が行われたところであります。
 政府といたしましては、政党間協議が合意に至らなかったことにつきましてはまことに残念に思っておりますが、政党間協議の経緯等も踏まえながら法案化を行ったものでございまして、この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。

 また、金融システムの健全化の問題につきましては、江田委員御指摘のように、昨年夏に国会を開かせていただきまして、この二つの金融機能再生法及び金融機能早期健全化法を通過させていただきました。おかげさまをもちまして、いろいろと今金融機関が大変厳しい現状でございますが、この法律によりまして、助けるものは助けそしてみずから立つものは立つということにおきまして、それぞれこの法律に基づいて対処いたしておりまして、このこと自体は現在厳しい環境にありますけれども、国際的に見ますると、日本の金融システムが安定化したという認識においては大きな成果が上げられておるものと思っております。

 それから、この分離の問題につきましては、さらに詳しく申し上げればよろしいかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この問題について新しい行政機構の中で対処することになっております。特に大蔵省におきましては、金融の問題について、過去御議論になった経緯も踏まえまして、これを整理整とんいたしまして、それぞれ新たに発足いたします財務省の中で、この金融の問題については主体的に扱うことは決してないという形に相なっておるわけでございまして、そういった意味では、それぞれ政党間の話し合いで対処いたしておりまして、国民にも御理解をいただけるような体制になっておると思っておる次第でございます。

○江田五月君 とても国民に御理解をいただけるようなものになっていないと言わざるを得ないですね。
 一方で金融再生法をつくった、それと同時にもう一方で大蔵省改革をやるんだ、その両方が車の両輪になって初めて構造改革になっていくんですが、財金分離不徹底と。このままで行ったら今後も金融のさまざまな不祥事というのは続いていくんではないか。幾ら不祥事が続いたって、再生法があつて一応セーフティーネットはできていますから金融秩序が乱れてしまうということにはならないでしょうけれども、しかしやっぱりそれはよくないですね。

 さらにもう一つ、金融について、健全化法をつくりました。これに私たちは構造改革として問題があるということで賛成をしなかったんですが、この仕組みの中で十八兆円のお金を用意した。そして、七兆四千五百億円の公的資金の注入が銀行に対して行われた。七兆四千五百億円。同じ時期に、銀行は放漫経営で破綻したゼネコン各社の債権放棄の要請を受け入れました。これはほぼ一兆円。一兆円のゼネコンの借金を棒引きにした。

 なぜゼネコンは借金を棒引きにしてもらえるんですか。しかも、結果的には公的資金という名の税金で穴埋めされた形になっているんですが、これは構造改革と言えるんですか。どうですか、小渕総理。

○国務大臣 (柳沢伯夫君) 今の御質疑にお答えする前に、金融、財政の分離の話は……

〇江田五月君 いいです、それは。

○国務大臣 (柳沢伯夫君) よろしゅうございますか。ただ、先生の言いっ放しでは国民に無用な誤解を与えるというおそれもありますので……

○江田五月君 時間もないですから。

○国務大臣 (柳沢伯夫君) それでは、時間の面もありますから、今の御質疑にお答えさせていただきます。
 まず、先生の御質問の中に、七兆五千億の我々の健全行に対する投融資が何か税金で、ストレートに税金であるかのような表現がありましたけれども、これはあくまでも私どもは投資であり融資であるという位置づけでもってやっておることをまず御理解賜っておきたい、このように思います。

 そこで、企業が非常にうまくいかなくなったというときに、先生も御承知のとおりですが、倒産の法制によって残余財産の分配をするのがいいのか、あるいは企業の更生を図っていくことにおいてそれぞれの債権者等の権利をより多く確保していく方がいいかということは、選択の問題でございます。

 そして、債権放棄というのは、概して言うと後者において行われていることを今、先生問題とされて提起されていると思いますけれども、これは我々の金融機関の側からも回収を極大化するという経済的合理性にのっとつてやっていることでございまして、いたずらに債権を放棄してそれをバックファイナンスで、公的資金で穴埋めされているというような構造にはなっておりません。私どもは、金融機関が債権を放棄いたしましても、そんなことと関係なく私どもが投資をさせていただいた資金については回収をさせていただくという立場でありまして、金融機関はそれぞれの責任において、場合によっては代表訴訟のリスクを冒してまでそういう経営判断としての債権放棄をしているんだということをぜひ御理解賜りたいと思います。

 そうして、ゼネコンの構造改革問題を我々の金融の方で面倒を見ろと、そこまで我々の金融機関行政の中でやれというのは、余りにも多くの政策を一つの政策部門でもってやらせるということになるわけでありまして、私どもは、その問題はその問題として、今建設省の方は、この六月いっぱいに結論を出すということで検討しているということも先生よくひとつ御調査等をお願いいたしたい、このように思います。

○江田五月君 お願いですから、答弁の方もひとつ短くやっていただく技術を磨いていただきたいと思います。
 今のことで私は国民には納得してもらえない。長銀の大野木前頭取のことをぜひひとつ考えていただきたいと思うんです。

 さて、この最終報告にはすごいことが書いてありまして、個人、つまり「自律的な個人の生、すなわち個人の尊厳と幸福に重きを置く社会を築き、国家の健全な運営を図ることに」、そういう個人ということに重点を置いているわけです。そして、今社会は著しく画一化、固定化されてしまっている、知らず知らずのうちに実は新たな国家総動員体制をつくり上げてきたのではなかったか、そういうことが書いてあるんです。これを変えようと。 そういうときに、盗聴法あるいは住民基本台帳法あるいは国旗・国歌法、私は、例えば最初に盗聴禁止法をつくったらどうだ、最初に個人情報保護法をつくったらどうだ、あるいは国旗・国歌についてちゃんとした審議会などをつくったらどうだと、そうでないと構造改革に逆行するんじゃありませんか。

○国務大臣(小渕恵三君) 今、江田委員からいろいろ御主張はございましたけれども、今我々のなさんとすることは、構造改革を実行していく一つの大きなステップであると、こう考えて努力をいたしておるところでございます。

○委員長(吉川芳男君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。
 午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
   午後一時開会
○委員長(吉川芳男君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、内閣法の一部を改正する法律案外十七案を一括して議題とし、中央省庁改革等に関する集中審議を行います。
 休憩前に引き続いて質疑を行います。

○江田五月君 御苦労さまです。
 私は、午前中に平成九年十二月三日の行政改革会議の最終報告に言及をいたしました。そして、これはなかなかよくできている。改めてこの際読み直してみたんですが、本当に同感同感また同感ということで、お互い共通の基盤がここにあるじゃないか、ここからスタートして、しかし今の政府案というのは不徹底きわまりない、こういうことをこれから申し上げたいと思うんです。

 午前中の最後に、行革会議の最終報告を引きましてこんなことを言いました。
 今、社会は著しく画一化、固定化されてしまっている。敗戦の廃墟の中から立ち上がり、経済的に豊かな社会を追求する過程で、知らず知らずに実は新たな国家総動員体制をつくり上げたのではなかったか。こういう反省、そこに立って、これからは個人の尊重、一人一人の人間が独立自尊の自由な自律的存在として最大限尊重されなければならない。そういう自律的存在たる個人の集合体である我々国民が、統治の主体として、自律的な個人の生、すなわち個人の尊厳と幸福に重きを置く社会を築こうじゃないか、そういうことが書いてある。これが今必要とされる構造改革。

 この国会は、振り返ってみると、例えば情報公開法であるとか、男女共同参画社会基本法であるとか、こういう自律した個人がみずから責任を負いながら社会をつくっていこうという方向に資する法律もつくりました。しかし、どうも最後になって、盗聴法あるいは住民基本台帳法、国旗・国歌法といった、何かそういう方向とはちょっと違うんじゃないかというようなものが出されていて、私は逆に、盗聴禁止法とか、あるいは個人情報保護法とか、国旗・国歌については審議会をつくるとか、そういうところからスタートしてはどうかと思っております。

 さて、そこで中央省庁の法案に入ります。
 今回のこの法案は大きく括って三つ、一つは内閣機能の強化、もう一つが中央省庁の再編、そして独立行政法人の通則法、こういう括りになっているわけですが、いろいろ我々は批判したいところがあります。

 国土交通省、どうしてこんなばかでかい公共事業担当の省をつくったのか。総務省、どういう任務でこの総務省というのは括られるのか、あれもこれも全部入れてごたまぜになっているじゃないかとか、政策評価が総務省というところでいいのかとか、いろいろとあります。

 例えば、小渕総理は行政コスト三〇%削減とおっしゃるんです。三〇%というのはいつと比べて三〇%削減なのか、その数値は幾らになるのかということは、これははっきりするんですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 行政コストの削減につきましては、私は、行政の生産性向上に全省庁挙げて取り組むための政策イニシアチブとして掲げたものでございまして、去る四月二十七日に行政コスト削減に関する取り組み方針を閣議決定いたしました。

 この取り組み方針では、行政の減量化と行政の効率化という両輪によりまして、行政コスト削減のための不断の努力を行っていく必要があるとし、行政の減量化については、当面、中央省庁等改革の推進により、行政の効率化について今回の方針で掲げられた取り組みを中心として全力を挙げて取り組むことといたしております。

 また、この方針におきまして、中央省庁が所掌する行政は、おのおの行政目的や手法を異にし、その効率化のための手法もさまざまであること、行政コストについては単に人件費や事務費といった行政経費としてとらえるよりも、むしろ広く行政全体の生産性向上に資する概念としてとらえる方が適切と考えられることから、各省庁が所掌する行政分野ご上に、時間、人員、経費等さまざまな指標により計測される行政コストを平成十一年度から十年問に三〇%削減することを目標といたしております。

 各省庁は、今後この方針に従いまして行政コスト削減に積極的かつ計画的に取り組むこととしており、その進捗状況を見きわめつつ、二〇〇一年の中央省庁再編による新たな体制の中で改めてどのように削減できるか再点検するなど、行政コスト全体について見直しを常時図りながら、この目標を達成できるように最大限努力してまいる決意でございます。
 御質問に対してちょっと長くなりましたが、要は、十一年度から十年間のコスト削減を図ろう、しかし省庁再編が行われますので、そのときもう一度、新しい行政官庁としてどのように削減の方向が定められるかということをもう一度点検させていただこう、こういうことでございます。

○江田五月君 総理自身もおわかりですよね。長くずっとお読みになって、どうもこれでは余り国民には伝わらないなというので後、言いかえられましたけれども、それでもまだ伝わらないんじゃないか。要するに、生産性向上で政治的イニシアチブだと言われるんですけれども、三〇%という数字がさっぱりそれではわからないんです。私は、午前中の最初にも申し上げましたけれども、やっぱり政治のわかりやすさ、そして政治のイニシアチブというかリーダーシップ、特に総理大臣のリーダーシップ、これが今必要なときだと思うんです。

 中央省庁の改革については、実は私たち民主党は基本方針を決定いたしまして衆議院の方で法案を出しました。その基本的な考え方は、これまでの行政改革、随分ありました。いろんな取り組みがございました。しかし、公社改革のように実を上げているものもあるけれども、いずれも竜頭蛇尾といいますか途中で切れてしまうというか、成果が上がらない。多分その理由は三つあるだろうと。

 一つは、やっぱり理念がはっきりしない、何をするんだと。私たちは、昔、大学で勉強したときの言葉をだんだん思い出して、行政の中に給付行政と権力行政、例えば治安の維持とかあるいは通貨とか法務とか、こういうのは権力行政。公共施設とか福祉とか、そういうものを給付行政。権力行政、これは国がやらなきゃいけないでしょう。給付行政のうちの国全体の基準とかあるいは調整のルールとか、これは国が決めなきゃならぬけれども、その他はすべてもう地方にやってもらってもいいんじゃないか。そういうような理念を持って、もちろんこの最終報告の理念もすばらしい理念ですが、そうした理念を持つことが必要。

 二つ目は、行政改革というのは、時代とともに変遷する行政に対する要請、これに常にこたえる不断の取り組みなんだと、そのことが忘れられているんじゃないか。ですから、これからの行政改革というのは、そういう不断の取り組みに常に立ち向かっていける仕組みを内蔵していなきやいけないんじゃないか。そして、三つ目は行政改革をやる責任主体、これがはっきりしない。

 私は、かつて社民連時代に国鉄改革で逐次地域分割、非公社化という案を出したことがあるんです。つまり、国鉄改革はいろんな案があるけれどもどれもどうしても実現できない。だれが責任を持ってやるかがわからないからできないので、そういう責任主体をつくるところからまずということを提案したことがございますが、同じような気持ちを今も持っております。

 そこで、この最終報告にも「行政に求められる役割は時々刻々めまぐるしく変遷しており、半永久的な、堅牢な行政組織を構築することは、新たな硬直的行政を生ぜしめかねない。政策内容の評価を行うがごとく、行政組織についても、不断の見直しを行い得るような仕組みを組み込むことが必要不可欠であろう。」、そういうことを書いておられるんですね。

 そこで総理、私は、皆さんの行政改革でどの部分が行政改革の責任主体になり、これがあるからこれから不断に行政改革に取り組んでいけるんだという、どの部分がそういうものになるのかということをお伺いしたい。総理に伺っています。

○国務大臣(太田誠一君) 小渕内閣は一体でございますので、お許しをいただきたいと思います。
 総務省が基本的にはその仕事を担うわけでございますが、どういうふうにしてやるのかというと、いわゆる総務庁が行う仕事の中で政策評価というものがございます。各省庁が行う仕事について絶えずそれの評価をする。評価をして、これが要らないとかこれは不適切であるということになると勧告をいたします。勧告をしたことに対して、どうなったかという報告を求めます。報告を求めて、言うことを聞かなければ内閣総理大臣にその是正を求める意見具申をいたします。内閣総理大臣は、憲法に定められた行政改革に対する指揮監督権を行使して是正するということになるわけであります。総務省がやります。

○江田五月君 私は、それではだめだと思うんです。やっばり総理大臣のリーダーシップだと思うんです。
 今、私は総理に尋ねた。そうすると太田総務庁長官が出てこられた。太田さんはまだ総理になっておられないので、総理大臣のリーダーシップというものをしっかり確立することが、行政改革を行うについても、あるいはその他の改革を行うについても今必要なのです。

 ですから、私たちの提案は、行政改革というのは、一つは官から民へ、もう一つが中央から地方へと。しかし、もう一つは、行政に行政改革をやらせたって、それはまないたの上のコイにみずから包丁で刺身になれと言っているようなものですからそれではだめなので、行政に対して改革をしようというのはやっぱり政治のリーダーシップなんです。行政から政治へ、これが内閣機能の強化であり、同時に、単に内閣機能と言ったって、その内閣機能を行政をいっぱい入れて強化したってだめなんですから、その内閣の中の総理大臣の政治的リーダーシップの強化、これをやらなきゃいかぬ。

 そこで、私たちは首相府、内閣府、こういうものをしっかりつくって、内閣総理大臣がちゃんとした政治的リーダーシップを果たせるようなそういう仕組みをつくり、そしてこの二つのものができて、その上で総理大臣及び総理大臣がしっかりリーダーシップを果たす内閣が行政各部をちゃんと掌握した上で行政改革というものをきっちりやりなさいよ、そういうプロセスを経なければできないでしょうということを言っているわけです。ちょっと時間をおかりして、我々の説明をもう少し続けたいと思います。(図表掲示)

 こういう形でここに内閣。総理大臣が一つ飛び抜けているわけです。その総理大臣を助けるために首相府という、これはざっと全部で百五十人ぐらいの規模になりますか、民間とかあるいは政治家だけでも三十人程度をここへばっとそろえる。これで総理大臣を完全に支える。

 そして、内閣全体については、内閣府というものを置いて、こういう強力な総理大臣のリーダーシップを確立した内閣でこれからの改革を行っていこうという、そのために内閣法を改正する。

 そして、閣議というもので決めなければ総理大臣は動けないというのじゃなくて、例えば閣議を引っ張っていくための総理大臣の発議権であるとかあるいは閣議運営の基本方針を総理大臣が一人で決められるとか、そういうことをやる。

 もちろん、総理大臣にいろんな力が集中しますが、それは中央集権というのじゃないんです、政治のリーダーシップです。その総理大臣がだめなら国会は不信任すればいいわけですから。しかも、そういう総理大臣がいると、あの人を総理大臣にしてこの国を変えたいと国民が願えば、総選挙のときに、今度は小選挙区制ですから、そういうものが生きる。総理大臣を直接自分たちで選びたいという国民の思いが今あるんです。これはあるんです。そういう思いにもある程度こたえることができるようになって、国民がみずから主体になってこの国の形を変えようという、そういう内閣をつくろうと。

 そして、次はこれで行きましょう。
 これはちょっと大きいですけれども、「民主党行革の手順」で、一番上が現在です。中央政府がだあっと権限を持っています。そして、地方の政府も持っていますが、民間はこうやってぐっと圧縮されてしまっている。

 もう不要になった事務ではないか、これはやめましょう。民間部門でできるのではないか、規制緩和とか民間開放しましょう。地方の政府でできるのじゃないか、地方分権しましょう。私は、公共事業なんていうのはもう原則地方へ全部落として、国土交通省というのは本当にぎゅっと小さくしてしまっていいと思います。

 そうやって残った中央政府の仕事がここにあります。このうち、さらに民間委託できるものは外部サービス購入。あるいは実施部門を分離できるもの、そこで初めて独立行政法人というのが出てくる。そして、残った本当に小さくなった中央政府、皆さんの行革会議の事務局長の水野さんが、三十何万人でしたか、随分小さな数を言われる。そういう小さな中央政府をどういうふうに構成したらいいか。そこで初めて省庁再編というのが出てくるのじゃないか。そういうのが私たちの考える手順です。

 これをちなみに政府のものと比較してみますと、一番上、ちょつと字が小さいですが、総理の地位は、皆さんのは単なる首長、我々の方は首長として内閣を統括する、総理の強い権限をちゃんと明示する。行政事務の分担管理については、政府案は固定的縦割り行政、我々の方は課題に応じて柔軟に対応。閣議の運営は、内閣総理大臣が基本方針を決定して閣議を主宰する。

 案件発議について太田長官はいろいろおっしゃいますけれども、今でももちろん総理は当然発議権はありますね、書いていないだけで当たり前の話です。それから、ほかの大臣が内閣総理大臣に案件を示して閣議を求められると。発議権はほかの大臣にあるとはいったって、総理大臣がそれはだめだと言ってしまえばおしまいですから、これは内閣総理大臣にのみ与えればいいじゃないか。

 あるいは、行政の指揮監督の関係、権限疑義の裁定の関係、中止権の関係などなど、詳しくは申し上げませんが、私どもの案は政府の方と、何か政府案の焼き直しだというような批判もあるように聞きましたが、それは理解していない、全然そこは違うんです。

 では、伺いましょう。政府案の方で、これは総理大臣のことですから、一体どこが内閣機能が強化されているんですか。政府案はどこが内閣機能が強化されているんですか。

○国務大臣(小渕恵三君) まず、民主党の行政改革に対する基本方針、今、江田委員がお示しをされまして、公党としてこの省庁改革についての御見解を示されました。そのことについては我々も謙虚に承らせていただいております。

 そこで、中央省庁改革等の一つの大きなポイントといたしまして、総理や内閣のリーダーシップの強化ということでございます。この点につきましては、民主党の案につきましても検討をさせていただきましたが、内閣機能の強化という基本的な考え方につきましてはほぼ政府案と同様であるというふうに認識をいたしておりますが、内閣総理大臣が、内閣としての意思にかかわりなく、内閣総理大臣の単独の意思決定により指揮監督を行うことを認めているなど、合議体である内閣を行政権の帰属主体としている憲法の趣旨に照らし問題があると考えられるものも含まれておると考えておりまして、したがって政府案においてその強化につきましての、先ほど来お話しのように、発議権の明確化等の問題によって内閣総理大臣のリーダーシップが発揮できるような組織体としての政府案をもって是といたしておるところでございます。

 と同時に、副大臣制度や政務官の導入、これも結果的にはそういうことになるんだろうと思います。総理大臣としてそれぞれの大臣にいろいろな指示を行いますが、また同時にそれが各省庁に参りまして、大臣の考え方を行政のそれぞれ直にある方々にお示しをして協力を求めていかなきゃならぬと思います。そういう過程の中で、国会議員の方々が、それぞれの役所に今の大臣並びに政務次官、政務次官にかわりまして副大臣あるいは政務官という形で役所の中に入って、スタッフ並びにラインとしてきちんと仕事をしていくということも結果的には内閣の権限を強化し、かつ内閣総理大臣のリーダーシップを発揮できる背景をつくるということも今回の改革の大きな柱である、こう考えております。

 そうしたものを実行することによりまして、内閣総理大臣の権限といいますかリーダーシップが発揮できる体制を整えていきたい、こう考えておるところでございます。

○江田五月君 どこが内閣機能の強化になっているんですかということについて、今、総理の説明は、内閣総理大臣の発議権等というのは一つおっしやいました。だけど、そのほかには何もおっしゃっていなかったんですよ。そして、発議権については、さっきも言いましたとおり、それは今でも総理大臣の発議権はある、当たり前の話です。

 そのほかに、総理大臣、あなたがおっしゃったことは、それぞれの省庁について政務官とか副大臣とかそういう政治任用のポストがあって、これが大臣の権限を強めて、それぞれの省、行政機構に対する掌握の能力を強めていくだろうと。それはもちろんあります。だから、我々もその点は、もちろんこれは反対していないどころか今一緒にそういうものをつくろうとしているところですね。しかし、そのことによって内閣総理大臣の権限が強まっていく、リーダーシップが発揮できるようになっていく、これは間接的にはもちろん役に立つでしょうけれども、直裁じやないですね。今、総理は、民主党案は内閣総理大臣が単独の意思決定でいろんなことが行えるようになって、それは憲法上問題じゃないか、そういう趣旨のことをおっしゃったんでしょうね、いろいろ言われたから。

 しかし、内閣制度というのは戦前からずっと続いてまいりました。そういう戦前からずっと続いてきた制度や慣行を受けて、新しい憲法のときに内閣法というものをつくって戦前からのものを受け継いだ。しかし、それをちょっとわきに置いて考えてみたら、戦前と戦後と憲法はがらっと変わっているんですね。行政権は内閣に属する。内閣というのは確かに合議体的性格はある。

 しかし、一方では内閣総理大臣の位置というもの、地位というもの、これは大きく変わったわけで、国民から直接選挙で選ばれる国会によって直接指名されるんです、内閣総理大臣が。しかも、内閣総理大臣一人だけが直接指名される。あとの大臣は内閣総理大臣が選んでいくわけです。しかも、いつでもやめさせることもできる。罷免自体は内閣総理大臣の任意の意思で行える。その罷免の上奏は内閣の決定が要るでしょうけれども、罷免自体は自由にできる。内閣総理大臣一人で内閣を構成することもあります。わかりますね。あれは総選挙後ですか、前の内閣が総辞職をして、あるいはその前でもいいです。しかし、総辞職をしてもまだ大臣の皆さんはずっとその職務は続きます。続きますが、次の内閣総理大臣が国会で選ばれればそこで終わりです。そして、その次に各省大臣が選ばれるまでの間は総理大臣一人ですべての大臣の任務を遂行していくわけです。

 そういう内閣総理大臣、つまり今の憲法はそういう二つの原理があるんです。その二つの原理があるときに、内閣の合議体的性格というところばかりに重点を置いて、内閣総理大臣と。ひょっとしたら小選挙区制になりますと国民があの人を内閣総理大臣にしたいと思って選挙をする、ひょっとしたらじやない、そういうことは強くこれから起きてくると思います。そういう内閣総理大臣にもっともっと権限行使できるような仕組みをつくらないと、そうでないと内閣という政治の一番中心部分の構造改革はできないじゃないかということを言っているんですが、いかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 先ほどは発議権の問題の明確化を申し上げましたが、これも前に御答弁申し上げたところでありますが、今回の政府案におきましては、内閣府及びこれに置かれる四つの合議制機関の新設、それから強力な調整権限を有する特命担当大臣の新設、それから内閣総理大臣の直接補佐体制の整備等によりまして内閣機能の強化を図っておるところでございます。

 そこで、今、江田委員がお話しされた点にっいては、現行の内閣総理大臣も、御指摘のようにかつて旧憲法下における内閣総理大臣、各閣僚が署名を拒否すれば御案内のように内閣が常に瓦解しておったという歴史的な経過にかんがみれば、新憲法下における総理大臣の権限というものは極めて強力なものでございます。ある学者によりますれば、日本の総理大臣というものは各国に比較いたしましてまことに権限が強力であるという考え方もなされる。それは閣僚の任命権あるいは罷免権というものを現実に有しておるということはそのとおりだろうと思います。

 しかし、同時に、内閣総理大臣としての権限をさらに発揮する意味での発議権とか、こうした形あるいは組織としての内閣府というものを一つの組織体としてきちんと整備するということにおいて、より一層総理大臣としての権限を国民の意思に沿ってこれを実行するということが可能なものとして、政府案としてはこの組織体で十分発揮できる、こう認識をして出させていただいておると、こういうことでございます。

○江田五月君 行革会議の最終報告はこの点ではやっぱりこれはちょっと弱いんですよ。内閣機能の強化は内閣の調整機能の強化だと、こういうことであって、政治的リーダーシップの確立という点に欠けている。このことを申し上げて、あと同僚伊藤委員の関連質疑に譲ります。


1999/06/16

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