統一地方選挙政策
提 案
十一月十五日「86秋季研修会」にて来春の統一地方選挙に向け、菅直人政策委員長から「八つの政策」と「選挙スローガン」が披露されました。これはあくまで各地方段階で具体的なものを出す際の参考として、政策委員会が作成したものです。
政治を生活の道具に
新しい地方の時代
「地方の時代」と言われてから久しくなります。福祉や公害、環境、都市問題等については、「画一的中央集権」より「分権と参加の地方自治体」の方が、キメの細かい規制や独自の政策によって、多様な住民のニーズに対応できると考えられたからです。
確かに市民運動や先駆的自治体の努力の結果、地域は八〇年代後半の今、六〇〜七〇年代のナイナイづくしではなくなっています。
保育園、幼稚園、学校、集会・福祉施設はかなり充足し、下水道も、一部の地域では、完了しつつあります。また、雇用保障や生活扶助等の社会保障、公共衛生や食品衛生等の社会保健も一応のレベルに達しつつあります。未解決の公害や公共住宅を除けば、量的充足の見通しがつきました。
では、今後の課題は何でしょうか。自治体の役割は、終わったのでしょうか。
国民の政治に対する関心は、物価、住宅、環境といった生活に関連したテーマが中心で、モノトリ型や利益誘導は、過去のものとなりました。高齢化問題、廃棄物処理問題、食品添加物問題等に関心が集まる、いわゆるライブリー・ポリテイクス(生と生活に関するいきいきとした政治)の時代となってきました。
別な言い方をすれば、シビルミニマムの量整備から質整備に移行しているのです。
これからの課題について、国は、中曽根流のコーポラティズム型の中央集権(審議会等を多用し、議会を形骸化させる大統領的中央集権)で対応しようとしていますが、私達は、分権と参加の地方自治体こそが主役となって解決すべきだと考えます。
シビルミニマムの量から質への転換にはどうしても市民の参加が必要です。学校をつくるのにも、コンクリートとブロック塀の兵舎のようなものでいいのか、それとも、ツタのからまるような校舎をつくれないのか、公園や遊び場は、金網でなく生け垣で囲えないのか、道路もただアスファルトをはりつけただけでよいのか、みすぼらしい街の改善のため、看板についても錆びて醜くならないような工夫はできないのか等々、行政の文化水準をあげるためにも参加がなくては、対応できないものばかりです。
まさに、自治体の役割は、以前より重要となり、「新しい地方の時代」となったのです。
また、これらの新しい課題に対しては、従来の上意下達型の国県市町村から、市民自治型の市町村県国という発想が必要となってきます。市町村が中心で、県はそれを補完し、国は全国基準を設ける役割を担うという考え方です。
私達は、現代における政治的民主主義は、「公開」「分権」「自治」「参加」を保証するものでなければならない、と主張してきました(「われわれのめざすもの」)。そして、「市民参加は、政治・経済・文化すべての領域において自治をめざす民主主義の原点であり、社会の改革と活性化に不可欠である」と確信しています。
私達は、この市民自治の原則にのっとり、政治の基本単位である自治体の改革に取り組む決意です。
八つの基本政策
以上の基本視点にたって、社会民主連合は統一地方選挙にあたり、次の八つの基本政策を提唱します。
一、地域福祉社会の確立を
病気をしても、年をとっても、その地域の中で、地域の病院や人間がケアしていく体制づくりが必要です。住民参加により、地域福祉体制づくりを進めます。
(1)高齢者福祉
(1) 自治体が福祉公社を武蔵野方式で設立し、地域のボランティアやホームヘルパーの派遣を行い、在宅ケアを可能にする。
(2) 早期発見、早期治療の一般施策の推進と、これを阻害する老人保健法の改悪を阻止し、地域医療毎にホームドクター制を促進する。
(3) 老人介護士の創設
(2)障害者福祉
地域の中には障害者や健常者が混在するのがノーマルである、とするノーマライゼーションの理念により政策を推進する。
(1) 教育では、障害者と健常者の総合教育を推進し、障害に応じ特殊教育を施す。
(2) 全ての都市建設において、車椅子に支障なき配慮を行う。
(3) 雇用確保のため、現行雇用法の水準アップを図り、第三セクター方式の雇用開拓を行う。
(3)保健の維持増進
病気に陥る以前に、地域において、予防医療の見地より定期健康診断の対象を拡大する。各種スポーツや催し、スポーツクラブ等への積極的援助を行う。
二、都市を緑のネットワークで包みなおそう
今後の日本経済は、フローからストック中心の経済、つまり社会資本の充実を柱とする内需拡大型に変えるべきであるという合意はできていますが、その戦略が不明確なことから、輸出にシフトしたり、海外投資に向かってしまうのが現状です。
中曽根首相は「民活」と称して、市民無視の企業ベースの開発を進めています。緑は、再開発によって確保できます。市民参加、職員参加の緑・再開発により河川・湖沼の再生を計り、歴史遺産を保護し、ひいては、内需拡大に寄与せんとするものです。
(1) 環境アセスメント条例の制定
(2) 国道・都市県道の街路樹育正によるグリーンベルト化
(3) 自治体による樹林緑地の先行取得(みどりの基金)
(4) 清流の確保
下水道は処理能力に問題があり、合併浄化槽は、浄化率も高いので、清流の確保のためにも、合併浄化槽の普及を促進する。
三、市民と一体となって自治体改革を
シビルミニマムの量整備から質整備へと変わっていく中で、施策のスクラップ・アンド・ビルドが必要となってきます。
(1) 財源ならびに人員の適正配置
飽和状態にある分野からシビルミニマム未達成分野への移行、たとえば、幼稚園の老人用施設への転用も考慮する。
(2) 民間委託
質を落とさないで効率を確保できる分野では、民間委託を考慮する。
(3) 情報公開の徹底
市民参加は、情報公開を前提としている。従来の報告(お知らせ)から、政策決定前の情報(考える情報)の提供。
(4) 市民の手による条例制定
政治倫理条例、合成洗剤追放条例等の例があるが、市民の直接参加による条例制定を推進する。また、公約に反した逗子の市長に対するリコール運動は、市民の直接参加として特筆される。
四、エコロジーを重視して安全と環境保全を
(1) 食品の安全性確保
食品添加物規制、合成洗剤の追放などにより、「安全な食品、素姓の確かなもの」を追求する。
(2) リサイクルの推進
資源輸出国の環境破壊防止と無資源国日本の資源確保。リサイクル産業の安定化を図る。
(3) 安全性に関する審議会、調査データの公開
食品添加物、廃棄物規制、医薬品の許可等の生活の安全性に係わる各種審議会の調査・実験データの公開。
(4) 飲料水の安全確保
上水道の水の安全性の確認と井戸水の安全性確認後の有効利用。
五、多様性を生かす教育を
現在は、異質を排除する管理化と序列化が進みすぎています○分権化と複線化を進め、画一的「教育」でなく、多様な資質を伸ばす「共育」が重要です。
(1) 教育委員の準公選
個性豊かな教育実現のため、分権化をすすめ、教育委員を準公選とする。
(2) 家庭科の男女共修習化
(3) 四十人学級の実現促進
六、地域産業の活性化を
急激な円高による産業の空洞化が急速に進んでいます。その結果、雇用不安と仕事を求め地方から都市への一層の人口流入が進み、過疎・過密現象を加速する恐れがあります。そしてこのことは都市の住宅地の高騰を招き、スラム化にもつながります。全国的に適正な人口分布をめざすためにも、地域産業の活性化を図らなければなりません。
(1) 生業資金、近代化特別融資等の枠拡大
(2) 経営相談、商工会の育成。信用保証制度の拡充
七、土地政策の見直しを
大都市、特に東京都心の商業地の異常な高騰(年五〇〜一〇〇%の値上がり)は、いずれ住宅地に波及します。土地は普通の商品と異なり、“売らなければならない”という理由がないため、需要がふえると供給がへる傾向があります。土地は国民の共通の財産の一つであり、投機の対象にするなど許されないことです。
(1)国土利用計画法による規制強化
(1) 土地取引き価格の届出義務の対象土地面積を引き下げる。
(2) 同法第四章十二条により、規制区域を指定し、一時的な地価凍結を図る。
(2)急騰地の固定資産税の増税緩和
急騰地に住む住民は固定資産税の増税により居住を続けるのが困難となり、実質“追い出し税”となっている。
八、自治体の一国際化により平和を
市民間の国際交流が、相互理解を深め、究極的に平和につながり、自治体はそれを.バックアップすることができます。
(1) 共通問題の条例の国際化
非核都市宣言の普遍化を目指す。
(2) 柿妹都市間の交流の促進