1987年 

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土地問題対策 地価対策で政府に提言

 社民連は、一九八七年十月三日、中曽根総理大臣にあて、「地価対策に関する申し入れ」をしました。

 先国会において、菅政策委員長をはじめ社民連は、具体的な地価高騰への対応策を提言して注目されました。

 次の臨時国会および通常国会では、土地問題に対する抜本的な解決をはかる必要があり、社・公・民各野党も次期「土地国会」にむけて「土地問題特別委員会」設置などに足並みをそろえて対処するとみられます。


 社民連の申し入れの内容は、地価高騰による過大な相続税負担を、三百三十平方メートルまでの面積控除によって軽減するなど、実情にそくした新鮮な視点によるものです。
 以下はその全文です。

  「地価対策に関する申し入れ」

一、地価高騰に伴って、相続時に小規模な住宅地まで過大な相続税負担が生じている。そのため現在大蔵省は相続税の課税最低限の引き上げを検討中と聞いている。しかし、地価は地域によって大きな差があり、土地を資産としてではなく居住用の利用という面から考えて、金額でなく一定面積まで、面積で控除することが望ましいと考える。そこで我が党は330uまでの小規模宅地については相続税から控除するよう法改正することを政府に要請する。なお金額控除と面積控除の選択性の導入も検討されることを併せて要請する。

二、地価高騰に伴って、固定資産税の負担の急増を心配する声が挙っている。我が党は、土地については“利用”と“資産”の面を区分して考え、居住用の小規模住宅は負担を低く抑制し、しかし居住用を超える大規模な土地所有に対しては資産課税の公平の点及び地価抑制の点から地価上昇に見合う負担を課すべきと考える。そこで、固定資産税評価額の変更は地価上昇に応じて行い、その代わり一世帯について330uまでの居住用宅地については課税額を現行水準に据え置き、それを超えて所有する土地については評価変更に応じた課税をすべきであり、その点を申し入れる。

三、土地政策の混乱の大きな原因に地価認定制度が省庁バラバラに行われている点が挙げられる。そこで我が党は現在の国土庁の地価公示制度、大蔵省の相続税評価のための路線価認定制度、自治省指導による各自治体の固定資産評価額認定制度の三つの地価認定制度を早急に一元化することを強く要請する。

 一元化にあたっては、国土庁の地価公示制度を拡充し、市街地については現行の路線価方式を取り入れ、市街地以外の地域は現行の固定資産税評価方式を取り入れ、認定価格もできるだけ実勢価格に近づけるよう強力に、推進すべきである。そして一元化された認定価格に基づき固定資産税、相続税を課税すべきであり、負担の調整は税率の引き下げに より行うべきである。


四野党で土地対策緊急提言

 十一月十日午後、社民連ほか社会、公明、民社の野党四党の政策責任者が国会内で「土地対策に関する緊急共同提言」を小淵恵三官房長官に申し入れました。

 提言は、都市地域での地価の急騰に対処するため、(1)国土利用法の改正と運用強化、(2)土地投機を排除し、国民生活を守るための土地税制改革、(3)企業の投機的活動の規制、(4)国公有地や国鉄清算事業団貯地の有効活用と処分方法、(5)地方自治体主導による土地利用、(6)東京一極集中の是正、(7)土地評価制度の一元化を骨子とした多岐にわたるもの。

 国民共有の有限な資源としての土地を公共の福祉のために有効に活用するための当面の対策を示した具体策です。

土地対策に関する緊急共同提案(要旨、1987/11/10)

 わが国の土地問題は大都市地域の地価の急騰で極めて深刻な状況にある。地価高騰の原因は、根本的には、政府が長期にわたり、実効ある土地対策を怠ってきたためである。

 このように異常に高い地価は、国民生活や経済全般に様々な悪影響を及ばしている。
 第一に、土地高騰で土地所有者と土地を持たないものとの資産格差が拡大している。
 第二に、住宅価格が、国民の住宅取得能力をはるかに超え、また家賃の高騰もはなはだしい。
 第三に、二十一世紀の高齢化社会を前にして急がれる社会資本の整備が地価高騰のため遅れている、等である。

 土地は、国民が社会的、経済的、あるいは文化的活動のために不可欠な生存基盤である。しかも、土地は国民共有の有限な資源であり、公共の福祉のために有効満活用されるべきである。

 日本社会党・公明党・民社党・社会民主連合は、今日のこのような深刻な土地問題を解決すべく、当面の土地対策として、次の緊急提言をするものである。

一、国土利用計画法の改正と運用強化で地価を抑制。

(1) 東京都心郡をはじめ地価高騰の著しい地域を対象に規制区域を指定して地価を抑制する。指定要件は、投機的な取引が行われていない場合でも、地価が急激に高騰した場合は規制区域に指定できるものとする。

(2) 国公有地等の処分に関しては届け出の対象にする。

(3) 監視区域については、面積要件を「百平方メートル以上」に引き下げる。

(4) 国土利用計画法に基づく遊休地指定の面積要件を大幅に引き下げ、土地の有効利用を促進する。

二、土地投機を排除し、国民生活を守るための土地税制改革

(1) 土地譲渡所得課税、居住用資産・事業用資産の買い換え特例については、さらに総合課税の強化、買い換え特例の見直しを進める。また、公共施設用地等のために売却した土地に関わる譲渡所得課税の特例控除を大幅に引き上げる。

(2) 市街化区域内農地は、生産内容、長期営農意志等を的確にチェックして農地課税と宅地並課税のふるい分け作業をより厳正に行う。また、長期営農地については地域の実情に応じて生産緑地地区への転換、いわゆる逆線引き等を行う。

(3) 来年の固定資産税評価替えに際しては、小規模住宅用地や、零細な商店、工場併用住宅等については生存権的な生活空間であることを十分配慮して、特例的に据え置きを含む大幅な軽減措置を行う。

(4) 相続税については、異常な地価高騰にともなう過重な負担を軽減するため小規模住宅地(居住用・事業用資産)の一定面積について軽減措置を拡充するとともに、基礎控除、配偶者控除等の控除額も引き上げる。

(5) 勤労者の住宅取得を容易にするため、住宅取得促進税制を拡充する。

三、企業の投機的活動の規制

(1) 国土利用計画法に基づく届け出対象の土地取引については、融資元金融機関を届け出るとともに金融機関についても一定の報告義務を課する。

(2) 一部の悪質な不動産業者に厳しく対処するため、法改正による規範強化、罰則強化、免許要件の強化を行う。また、不動産業鑑定のあり方についても検討を進める。

四、国公有地や国鉄清算事業団用地の有効活用と処分方法

(1) 周辺の地価高騰を誘発するような売却は行わない。また、地方自治体に対しては先買い権を与え、公共用地先行取得権の枠を十分に確保する。

(2) 地方自治体は、国公有地等の土地利用について適切に指導を行う。

五、地方自治体主導による土地利用

(1) 土地の有効利用のため、用途地域の見直し、容積率の見直し、線引きの見直し等についても一律的な手法をとらず住民の意向を十分に尊重し、地方自治体の権限を強める。また、都市計画審議会等をオープンにする。

(2) 国公有地等の有効利用とともに、住民参加のもと都市再開発を計画的に進める。また、遊休地やいわゆる遊休農地に対する地方自治体の先買い権を有効に施行できるようにする。

(3) 地価の異常に高い大都市地域では住宅取得が困難になってきたため、公共住宅供給の抜本的見直しを行い供給促進を図る。

六、東京一極集中の是正

(1) 管理中枢機能の地方分散を具体的に推進する。必ずしも東京に立地する必要のない政府機関を全国各ブロックヘ分散する。

(2) 中央に集中している行財政権限を地方へ移譲する。

七、土地評価の一元化

 地価公示を一相続税評価、固定資産税評価等、まちまちの土地の公的評価制度については一元化を目指す。


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