民主党 参議院議員 江田五月著 国会議員わかる政治への提言 ホーム目次
第1章 国会議員の実像

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政治資金はとう使われるか

 前に示した「江田五月会」の収支報告では、組織活動費の比重が大きい。これは私の事務所が社民連の政党活動の基地になっているせいもある。自民党のように一選挙区で複数の議員が立候補する場合は、当然組織活動費よりも選挙関係費の方が多くなっているはずだ。なお五月会の組識活動費の大半が、自動車のガソリン代であって、何ともわびしいことだ。

 機関紙誌の発行その他の事業費とは、前にも記した「五月会だより」の編集から発行までの一切の経費である。「励ます会」等のパーティーを開いて経費を支出すれば、ここに計上する。

 昭和五十六年、各政治団体の収支報告が公開された際、自民党のある参議院議員のことが話題になった。彼の政治団体の支出先が、圧倒的にナイトクラブが多かったのだ。

 新聞に書かれ、羨望まじりで大いに冷やかされたが、考えようによっては、ナイトクラブの領収証を堂々と提出した正直さをほめられるべきかも知れない。なにしろ政治資金の収支報告は、幾重にもベールをかけることが可能であって、真実の報告など一つもないと言っても言いすぎでないのが現状なのだから。

霧の中の政治資金

 いかに真実をおおいかくすか、支出先をぼかすテクニックを上げてみよう。

 政治団体のある役員が、あらかじめ一定の金額を受け取り、自分の名前で領収証を出す。その領収証に 「但し何人分会合費として」とでも書き込んでおけば、それで通用してしまう。支出する側と支出先の中間に立つ彼が、一体どこのどういう店へ支払ったかは、追及されない仕組みだから、「組織対策を話し合った」といえば組織活動費、「学者を囲んでスタッフが勉強した」といえば調査研究費となる。実際はクラブでピンクまじりの快気炎を上げていたのであっても。

 実際には議員が飲み食いしたものであっても、その金をどこかの企業が交際費として落とせば、表面にはまったく出てこない。企業の中には、正面から献金をしないかわりに、社員を運転手や秘書として提供するところも多い。

 なぜ企業は車や秘書を提供し、赤坂や銀座で接待し、多額の献金をするのだろう。それは、企業として損得のバランスがとれると見込んでいるからこそなのだ。議員としての人物に惚れ込み、国を担う政治家を育てあげようと援助しているケースもないとは言わないが、多くはそんなことを言われると顔が赤くなるはず。もっともそのくらいで赤面していては、政治家は勤まらないのかも……。

 正直いって、私もそうした企業があればうれしい。ただし利害関係ぬきにしての話である。政治家としての未来の夢を私に託し、私を育てあげるために、料亭の費用も、車も、秘書も、おおいに援助してくれる企業はないものだろうか……。


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