1988/01/01 社民連十年史/明日の連合にむかって |
新春対談(1988) 竪山利文〜江田五月
大きなロマンを含んだ21世紀へ
竪山「連合」初代会長と江田代表が、労働戦線統一と政権構想を視野に入れた新しい野党の大結集について語り合いました。内容は過去の経過から創世紀の展望まで多岐にわたるもの。「心の豊かさを取り戻すことを最優先課題にしたい」と熱のこもった対談です。
新たなスタート
江田 竪山さん、あけましておめでとうございます。
とうとう「連合」が実現しましたね。「連合」の船出と、その初代会長として重要な役職を担われることになりまして、単におめでとうございますというには、余りにも重大なスタートだと思います。
竪山 労働戦線統一に向け、様々な紆余曲折はありましたけれど、皆様の大変強力なお力添えを頂くなかで、今回の、「連合」の新しい発足にこぎつけることができました。この場所をおかりいたしまして、あらためてお礼を申し上げたいとおもいます。
過去、何度か統一に向けての話合いが行われましたけど、最終的には運動の路線をどうするのかということが大きな問題として残り、合意ができず失敗したという経緯がありました。
今回は、過去の経験を踏まえまして、過ちは二度と繰り返さない決意のもとに、話合いが続けられました。
また、今回の統一に向けての話合いが、このように進展した背景には、ナショナルセンター間の合意というものがありました。
ご存知のように中立労連と新産別が穏やかな連合組織を作り、総評と同盟との間のブリッジ会談によって団体間の合意を得て、民間先行の労働戦線統一の素地を形成したこともあげておかなければなりませんね。
このように八〇年代最大の課題が、労働戦線統一に向けられ、統一推進会議を経て五年前に全民労協が結成され、そして五年間の実績を踏まえて、やっと「連合」結成が実現しました。
思えば、前回の統一が不調に終わってから十五年目になります。
しかし前回の統一が失敗した時、統一のともしびを残そうと十一の組織が集まって民間労組共同行動会議を作った。それを発展させて政策推進労組会議ができ、ナショナルセンターの枠組みを超えて、具体的な共同行動を積み上げてきました。ここで民間先行統一と共同行動の具体的な母体が、はっきりと姿を見せました。このような経過も「連合」結成への、重要な背景だったと考えます。
そして、今後官民含めた、全的統一という大きな課題が残されていますが、「連合」結成前後に既存の労働四団体が、時期的なずれはあってもことごとく、発展的に解散、または解散を決めたことは、画期的な出来事です。こういうことは戦後労働運動にはなかったことです。官民を含めた全的統一に向け、また、新たなスタートが切られました。
江田三郎さんにはいろいろご支援を頂きましたし、教えて頂くことも多く、今また五月さんとお話をしていて、なつかしい思いでいっぱいです。
労働運動の役割
江田 ありがとうございます。
今の会長のお話のなかで、やはり路線における合意ができたということは、非常に重要で、その背景には、やはり客観的に労働運動の果たすべき役割を、現実的な視点で見ようとする現実が先行していたということでしょうか。
竪山 そうですね。路線の問題は、非常に苦労した問題の一つです。
路線問題には、客観情勢も背景になっています。特に高度成長時代には、組合員の要求をそのまま組織しまして、あとはストライキを含む力で決めるという大幅賃上げ論が可能でした。しかし二度の石油ショックを経て低成長時代になりますと、ストライキだけで要求が獲得できるという条件がなくなってきました。
賃金の要求も単に名目的賃上げのみを要求するのではなく、むしろ総合的な生活をどういう角度で向上させるかという発想になってきました。また企業の方も、ない袖は振れぬということもありますから、ある程度経済の現実にも整合牲をもつという闘いのしかたになってきたと思います。
総評と同盟の考え方も、実質生活を高めるという点で、だんだん近寄り、そういう背景で、路線問題が統一されてきたことは事実です。
江田 路線を一致させるというと、なにか頭の中の作業のように思われがちですが、そうでなくてやはり現実をふまえるということですね。
現実の混合経済体制といいますか、今の日本の経済なり社会なりのあり方の中で、労働運動というものが、地に足のついた役割を果たして行くことが大切だという方向に、大きな潮流が生まれて来たということです。
21世紀にむけて
竪山 そういうことは、はっきりいえると思いますね。特に21世紀に向けまして、どういう情勢の変化があるのか。また日本として世界情勢の中で、どのように進むべきかというところまで、労働運動がはっきり展望をもち、そのための体制作りを労使関係のみならず、政治的、経済的視点からも合意をつくる必要がでてきました。従来の労働運動とは様がわりした体制、運動になってきたのではないでしょうか。
江田 そうですね。ここまで具体的な一致をみているわけですから、異なった団体に分かれていること自体が、不自然な状態といっていいのでしょうね。
ところで、全的統一、官民含めた統一が、九〇年ころということですから、二年後ですね。これはやはり、動かざる歩みとして進んで行くと、我々は期待していていいのでしょうか。
竪山 現在の官公労働戦線というものを考えると、いろいろ難しい条件があるのですが、今のところ同一テーブルで話し合っていけるという条件にないのも事実です。
しかし、全体の統一を図るべきだという点については了解しているわけで、「連合」が発足したわけですから、一番現実的な話合いの方法は、「連合」と総評の官公労、「連合」と同盟系の全官公というブリッジ会談になるかもわかりません。いずれにしても話合いを継続して行くことになるでしょう。
全官公の中に入っていた鉄労が、民営化で鉄道労連に一本化され「連合」に加盟しましたから、後に残る主力は全郵政です。総評側のその相手組織は、全逓です。たしかに現在、全逓と全郵政はお互いにしっくりいっていないかもしれませんけど、両者が同じテーブルにつくということが、官公労と全官公が同じテーブルにつく契機となると思います。
ただ、最大組織である自治労が、積極的に「連合」とも話し合いたいということになって来ていますから、期待されます。
江田 ある程度時間の余裕を持ってのことですから、曲折があっても大きな流れは変わりませんね。
わたしたち社民連は、いまご指摘のあった二つに分かれている組織の両方にお付き合いがあります。例えば、全逓・全郵政にしても、今までの経緯から、すぐ統一といっても難しい事情はよく理解しております。しかし、前向きの話合いを進めて行こうという気分は、醸し出されてきているのではないでしょうか。
竪山 その点では総評自身が、昨年の大会で、三年後全体の統一を実現し、発展的に解消するという歴史的決定をしていますので、全的統一も加速化されましょう。
事情はさまざまありましても、統一センターを実現し、やや低迷気味の労働運動に、新しい時代を作って行くことが、ぜひ必要だと思います。
江田 先ほどお話の中にありました、21世紀を展望した労働運動ということになりますと、やや出すぎた言い方かも知れませんが、今の日教組の例でいいますと、日教組の内紛がうまくおさまったうえで、21世紀の国民にも現場の教師にも夢を与える存在に再生する必要があるわけでしょうから、かなり大変なことだと思います。
労働運動自体にしても、統一が実現してなお未組織労働者は膨大な数です。さらにその外には労働者という範疇に入らないが、額に汗して働く国民がたくさん存在する。そういう人たちに対して、労働運動が持っている指導性というものは、随分落ちているのではないかという危惧があるのですが……。
竪山 ご指摘の通りだと思います。
21世紀に向けての展望という点では、国際化が進み、各国の相互依存関係はますます強まるなかで、自分の頭の利害だけを考えての発想は、成り立たないと思います。世界経済の活性化、南北問題や経済摩擦の解消、労働面では国際的な公正労働基準の確立、政治的には世界の平和、軍縮にも、わが国が積極的な対応を求められるのは、当然のことだと考えます。
しかも、国際化、高齢化、情報化や技術革新などの進行で、各分野が大きな変革を迫られていますが、急激な変化に追随するのではなく、より良き変革をリードできるような、運動の構築が今後ぜひ必要です。
さらに、価値観が非常に多元化してきていますから、今からは硬直したイデオロギーや経験主義や価値観で多くの人を同質化するということが不可能な社会になっています。そういう意味で過去のいろいろな経験は尊重してゆかなければならないとしても、多様な個々のニーズをじゅうぶん受け止め、これに答えてゆくなかから連帯の強化をはかることが必要だと考えています。
新人類と呼ばれる人たちへの対応も含めて、労働運動も新たな視点で対応して行かなければなりませんね。私は新人類と言われる人ともよく話しますが、政治や労働運動に興味はないのか、と聞くと「いや大いにある」という人が実際はほとんどです。「ですけど現状では駄目です」と。
江田 なるほど。
竪山 硬直した価値観や、教条主義的なイデオロギーを、振り回してゆくという時代ではない。かつては赤旗を立てて「頑張ろう」でよかったかもしれませんがね。
新しい勢力を含んだ大結集
江田 率直に言って、こういう歴史的な大転換を、労働運動や革新政党がリードしてきたかというと、そうでなかったのが残念ながら現実ではないでしょうか。
なぜそうなったかというと、運動体としては労働運動がバラバラになっていて、考え方も、新しい時代を先取りするものではなかった。政治の側も、同じように分裂していました。
「連合」が登場して過去の否定的な面から自由になり、新しい時代に、新しいリーダーシップが発揮されることになれば、そのことが、とりもなおさず労働運動に対する多くの人の目を変えていって、現在の組織されていない労働者を含め、広い支持の基盤となりますね。
労働運動の分野が大きな役割を果たさなければ、健全な社会システムになってゆかないという現代社会において、「連合」の登場は画期的な出来事です。しかし同時に、政治がその果たすべき役割をきちんと果たしていないといけませんね。
そこで政党のほうに対しての注文、「こんなことでいいのか」というお叱りを頂きたいのですが……。
政権をめざす野党へ
竪山 私たちは、議会制民主主義を尊重するという基本的な立場にあるわけです。そして、いつでも政権交替可能な野党があってこそ、はじめて議会制民主主義の活性化が可能なのではないでしょうか。
ですから現状のような体制が続いているということは、とりもなおさず議会制民主主義が形骸化しているという危機感をもたざるを得ないですね。
やはり現在の政府自民党に対して、いつでも政権交替ができるという野党の再編、ないしは新しい政治勢力を結集していくことが、ぜひ必要ではないかと考えます。
「連合」結成と労働戦線統一の意義も、これにインパクトを与えることにあります。したがって今後それを、いかに具体化するのか、皆さんと話し合って行かなければなりません。
政党について言及すれば、ただ単に社・公・民・社民連といった、既成の政党の組合せや、優先順位といったことだけに終わらないで、むしろ新しい政治勢力を掘り起こすということも含めての、大結集を目指していただきたいですね。
またそうでなければ、今の自民党に取って代わる勢力になって行かないのではないでしょうか。
私たち労働運動の方でも、企業内の、労使関係の枠組みに閉じこもってしまいがちな運動から、本来、労働運動としてもになわなければならない社会的、国民的な課題にも取り組んでいくんだ、という姿勢に、大胆に歩み出ていきたいと思っています。
単に足腰を鍛えるということだけではなく、大きなロマンを含んだ運動が今後の大きな課題だと思います。
江田 私たちも「どうぞ意見を言ってください。政策実現については責任を持ちます」ということができる政党を、早く作らなければいけないと痛切に感じます。今こそそれをやらないと、結果として「連合」というものが、現政権に政策実現を期待するというようなことになってしまうのではないかと心配します。野党の一政党としてこのようなことを言うのは、お恥ずかしい限りなのですが……。
「連合」 のスタンス
竪山 その点については「連合」の路線は、はっきりしています。連合というのは労働運動ですから。
政策推進労組会議は、性格的に政策制度の課題に限って、限定共闘するためにできた組織です。要求を通すためには、あらゆる政党にアプローチしたというのが事実です。そのなかで、自民党に対して申し入れをしたらということもありました。
しかし「連合」の立場は、おのずから政策推進労組とは異なっています。したがって先ほども申し上げましたように、自民党政権に対して野党体制がいつでも政権交替できる、というようになってほしいということが、「連合」の運動のスタンスでなければなりません。
ですから政策と要求の合意さえすれば、自民党を含めて支持していきますという路線は「連合」の目指すものではありません。その点だけは、混乱しないようにはっきりさせておきたいと思います。そのためにも野党はしっかりして欲しい。
江田 労働運動が大きく一つにまとまってゆくというのは、単にそこに参加している労働者の生活と権利を、守って向上させるということを超えた、社会のシステムに直接働きかける部分があって、いま私たちが考えているのは議会制民主主義を通じて、そしてまた政権交替というシステムを通じて、労働者の生活・権利が確保されなければならないということですね。
私たち社民連は、まったく会長のおっしゃることに大賛成です。
政治の場での社・公・民・社民連の四党の結束、政治の面での連合を実現してゆきたい。去年は売上税闘争、あるいは野党の首班指名候補擁立の模索など、いろいろ試みてきました。
そのような既存野党の連合、そうしてもう一つは会長もご指摘のとおりさらに広く新たなる人材を、政治の場に登場させる。そのために無用な野党間の摩擦が余りにも多すぎるので、根が一つの社会・民社・社民連あたりはまとまって、そこに広く様々な人々に参加してもらい、新党を目指そうと考えています。
竪山 社民連の存在は非常にユニークだと思います。確かに数は少ないですけどね(笑)。新たな野党の結集、再編の中で大きな役割を果たしていらっしゃると思いますし、今後も大いに活躍して頂きたい。
現在の政治戦線を、どのように整理していくかということは、たしかに難しさをもっています。しかし、余りにも対立点だけを強調させて、自党の存在の位置づけをされるということは、主体性強化という点では理解できますが、野党の政治勢力の強化や結束という視点にも努力してほしい。
労働運動も、活動の領域がますます広がってゆきます。たとえば、労働者福祉一つ取ってみても、例えば労働金庫がありますが、これは労働金庫法の枠内での事業活動ですので、これをたとえば西ドイツあたりのように、労働銀行というような性格にして、零細・中小企業の企業家に対しても利用を拡大してゆくとか、未組織の労働者にも利用が拡大されてゆくということが、運動の拡大や支持母体の拡大につながってゆくのではないかと思います。
そういう運動のあり方、労働者福祉事業のあり方というものを、追求してみたいと考えます。
われわれは雇用の場においては、生産労働者ですが、地域社会に出ると、これは一人の市民であるわけです。生産者としての職場労働運動とともに、生活者としての地域市民としての活動を拡大、強化することによって、新たな政治勢力も掘り起こされるのではないでしょうか。
生活者としての視点
江田 軸は各々の職場における勤労者としてということになるかと思いますが、これから「生活者」としての国民のニーズを、どれだけ実現するかということがなければ、政治運動自体が成り立たない時代がきているわけです。枠組みを乗り越えて、思い切って脱皮することを、政治の世界もしなければならないのではないでしょうか。
竪山 そうですね。単に既成の四党の中で、つまみ食い的な結集をしても、意義のある政治勢力にはなりませんし、限界があると思います。
労働運動は、労働運動の中で活動領域を拡大し、一方、政党は、政治活動の中で活動領域を拡大し、それを結集して協力関係が強まることが、自民党に代わって政権交替ができる政治勢力を作る要因になるのではないでしょうか。
そういう意味で「連合」のバックアップできる新しい政党、あるいは政治勢力の結集が必要でしょう。そして政策の合意を拡大し、それを「連合」が全面的に支援してゆく、そういう気運になっていけば、と考えています。
江田 これまでどうしても我々政党というのは、これこれこういう路線、こういう政策と、かなり分厚い政策・路線の文書ができていて、それにみんなが結集するという形で、政党の組織論を考えていました。
しかし現在、このような複雑・多様化した社会の中でそういった組織論は、現実にはあまり通用しないのではないか。それよりも、ある程度の枠内の相違を認め、後は党内の議論にまかせるといった、穏やかな組織論をもたなければ、政党というものが成り立たないように、最近は感じます。
竪山 そうですね。多様なニーズに応えていくためには、政策的にも幅を持たなければいけないと思います。そういった点に政党としてどう対応するか、もっと議論を深めて頂きたいという気がしますね。
ある企業の組合の運動方針書を見て驚いたことがあります。表紙などもカラフルで最初は女性週刊誌かなと思ったのですが、よく見たら運動方針書と書いてあるんですね。中を見ましたら活字も大きいし、写真も豊富に使ってあって、漫画もあり、できるだけ分かりやすく訴えようとする努力を感じました。
労働組合では単位組合、職場の労使関係が変わってきているわけですから、当然、産業別の労使関係や国全体の労使関係についても様変わりしてゆくことによって、初めて職場と全国的な運動が直結してゆくことになると考えています。
心の豊かさをとりもどす政治
江田 さて、今年八八年は、竹下内閣が本格的にスタートしますが……。
竪山 どういう経過で誕生したかということをたどれば、自ずから性格がはっきりします。派閥均衡、中曽根継承という色彩が前面に出ています。但し指摘したい点は、今後二、三年の内に政治的な激変が予想されますから、竹下内閣は継承というだけでは済まされない局面に、立たされるでしょう。野党も発想を大胆に変えて、何を自分たちがやるんだということを国民の前に明らかにしてほしい。
江田 そうですね。野党としても竹下流の政治に対して、我々ならこうする、ということをきちんと主張してゆきたいですね。先の総選挙で自民党は大勝したんだから、こんどは野党が勝つ番だと、安易に考えていると危険です。
シンクタンク「連合総研」
竪山 与野党とも従来の発想を変えた路線が出てこなければ、なかなか今後の難局は乗り切っていけないというのが率直な感想ですね。
「連合」という立場に話題を変えますが、昨年の十二月一日、シンクタンク「連合総研」を発足させました。21世紀に向けての日本の役割と進路を明確にし、労働連動の視点から雇用を守り、経済力の発展に相応しい国民生活の質を向上するための具体的アプローチを方針づけたい。
企業は円高に対応するために、厳しい合理化や雇用調整を実施し、競争力を強めると、これがまた円高をよんで合理化や雇用調整を増幅するという悪循環を、どうしてもここで切断する必要があると考えます。特に野党の皆さんも、そういう点を明確にしていただきたいと思います。
また具体的な論議のテーマが提示されていないわけですが、今の野党四党の政策スタッフも「連合総研」のシンクタンクの中に参加していただいて、合意形成ができるとなれば、野党再編の新しい展望が開けるのではないですか。今後の協力関係の中で、そのような政策合意の拡大についての抱負もあります。みなさん頑張って頂きたい、というのが率直なお願いです。
江田 私たちの方が、例えば土地、税制、食糧、教育、高齢化社会、産業構造の国際的調和などの問題に、自分たちの痛みを感じながら、政策提起をできるところまでやらなければいけませんね。そのことなしに政権交替可能な野党作りはできません。
それをひとつシンクタンク「連合総研」に期待したいと思います。
モノと金、といった視点からではない生活の質、いきがいといったものも、私たちそして労働運動のなかでも考えていって、価値観をリフレッシュしてゆきたいですね。戦後四十年で、だいぶ価値観を考える頭脳構造に、錆がたまっている感がありますね。
竪山 はい。心の豊かさをもう一度取り戻すということを、考え直したいですね。そういう点を政策の最優先において合議すべきですね。経営者団体も、従来の発想を変えざるを得ない所に追い込まれていると思います。政党も、立ち遅れしないように……。
情熱の対象がある社会を
江田 責任重大ですね。
一人ひとりが情熱を燃やす対象のある社会。モノと金ではない、人の心を沸きたたせる何かですね。経済的繁栄の陰で、忘れられた部分ですね。
「連合」発足の最初の年にあたって、ぜひ政党も政党のエゴをすてて、参加してゆく道を探ります。
さて今年一年、会長としては、大変お忙しいと思いますが……。
竪山 「連合」の運動の発展に全力を尽くします。そして、結果的に私が初代会長を引き受けることになりましたが、今後は世代交替をして、新たな意欲と、清新な発想の強力な執行体制を期待します。
江田 政党として今年は、国政選挙を翌年に控えた重要な年です。来年の参議院選挙、あるいはダブル選挙があるかもしれませんが、野党間の選挙協力体制作りにぜひ「連合」のご協力をお願いしたいと思います。
ところで竪山さん、今後の夢として伺いたいのですが、「連合」を後継者に託した後、個人として何をなさりたいですか。
竪山 政治家もそうでしょうが、自分自身を取り戻す時間的余裕がありませんでしたから、役割が終わるということになれば、四十数年間の連動というものを、最初から再訪問してみまして、そのなかで考えたこと、教えられたことなどを含めて、何か書き留めておきたいという気持です。そのような、自分自身を取り戻す時間がほしいですね。
さて、最後に一つお願いしておきたいと思います。
売上税国会の野党四党の共闘で、政策や我々の行動いかんによっては、自民党支持層まで、こちらの主張を支持してくれるということがわかりましたね。貴重な教訓であったと思います。今後も四野党を中心とする結束の強化に期待したいですね。
来年の参議院選挙、あるいは予想される総選挙など、国政選挙にむけまして、「連合」として、うんと燃え上がって政治闘争を盛り上げてゆく条件づくりを、ぜひしなければならないと思います。
そのためには、われわれの内部で合意を作ってゆくために、特別委員会の設置などを含めて検討したいと考えています。最初の一年程度で合意を形成し、後の一年は、むしろ具体的な行動を盛り上げて行き、選挙を迎えるというのが理想だと思います。
江田さんには、連合のトップだとお考えになって、野党の方もリードしてもらうようお願いします。
江田 お正月ということで、最後に過分なお言葉を頂きまして……。
今日は「連合」結成以来、会長として重責を担う竪山さんに、貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。今年もよろしくお願いします。
竪山 こちらこそよろしく。(1988年1月1日)