1979年

戻る目次前へ次へ


総選挙アピール
  全力をあげて「五五年体制」をつき崩そう!

代 表 田 英夫

 いよいよ「決戦」のときがきた。それはわが社会民主連合の命運を決する、文字通りの決戦である。

 昨年の三月二十六日、日本で七番目の政党として誕生したわが社会民主連合は、会員、協力会員の皆さん、そして多くの「市民」の方々に支えられ、小さいながらも着実にその基盤を固めてきた。

 地方組織も二十都道府県を超え、会員、協力会員の数も四ケタを数えるまでになった。

 われわれが主張しつづけてきた「五五年体制の打破」「“市民”が主人公の政治」といった考え方も、次第に国民の皆さんの間で理解されつつある。

 しかし同時に、既成政党の壁は厚い。今春の統一自治体選挙の結果もそのことを示している。われわれの候補者は、各地で善戦しながら、いま一歩でその壁を破れずに終わったところが多かった。

 日本の政治変革は、まず「勝つ」ことから始まる
 いまやわが社会民主連合は、存亡の岐路に立っていると思う。われわれが掲げた旗は、日本の政治を「生きた民主主義」の政治に変えようという旗である。いまわれわれが挫折するならば、日本の政治は、自民党の腐敗した政治に支配されつづけることになる。いまわれわれは、党の存立をかけるとともに、日本の政治変革の使命を果たせるかどうかの重大なわかれ路に来ているのである。

 私たちが主張していることがどんなに正しくても、われわれが掲げている旗がいかに正義の旗であっても、政治の世界では、選挙に勝つことがすべてに優先するという冷厳な現実がある。いま私たちにとっても、目の前に迫った総選挙に「勝つ」ことこそが第一である。

 私たちが確認団体としての資格を得られる二十五人以上の候補者擁立を断念し、敢えて少数の候補者に絞ったのも、「勝つ」ためであった。衆議院における三人の現有勢力から、一つでも二つでもいいから、議席を増やすことを目ざして闘いを進めよう。率直にいって、いま私たちは「なりふり」にかまってはいられない。

 候補者を押し立てて闘う地区の皆さんは、文字通り死力をつくし、ひとりひとりの会員の皆さんが、その持てる力のすべてをこの選挙のために投入していただきたい。

 候補者を持たない都道府県の皆さんは、その力を、隣接した地区の候補者のために発揮する工夫をしていただきたい。また現在進行している、いわゆる「四党選挙協力」の中で全力をつくしていただきたい。

 われわれがこの「四党選挙協力」を決断したこと自体、私たちが目ざす日本の政治変革への一歩だと考えたからである。 わが社会民主連合がこの選挙に勝ち、四党選挙協力が成果を収めたとき、日本の政治は変革へ向かって大きく一歩を踏み出すことになるのである。そのときには私たちの前に、明るい前途が開けるだろう。

 正しいものは生き残らなければならない
 世界はいま、大きな転換のときにきている。東西対立、冷戦構造が崩壊し、新しい政治構造が確立されつつある。かつて第二次世界大戦後の世界は、アメリカを中心とする自由主義陣営と、ソ連を核とする社会主義陣営に、イデオロギーによって大きく二分されていた。それが日本の政治に影を落としたのが、自民・社会両党対立という構造の、いわゆる「五五年体制」であった。

 しかし世界はいま、アメリカと中国の国交樹立に象徴されるように、また第三世界、非同盟諸国の台頭、発言力の増大に表れているように、イデオロギーで白か黒かを選択するという構造ではなくなりつつある。

 日本の政治もまた、この世界政治の構造の変化とともに変わらなくてはならないし、また変わりつつある。まさに五五年体制は崩壊しつつあるのである。

 その意味からも、わが社会民主連合が主張しつづけてきた政治変革は、世界の構造変化に沿った正しいものである。だから私たちの主張は必ず実現するという自信を持っていいはずである。

 だからこそ繰り返していいたい。私たちの正しい主張が実現できるために、われわれはまず生き残らなければならない。逆のいい方をすれば、私たちがこの選挙に勝てば、必ず日本の政治は変わるのだ。

 全国の同志の皆さん、明るい前途を目ざして、目の前の総選挙に勝とう。そのためにみんなの力をひとつに結集しよう。


政権交代のできる野党をつくろう

 わが国の議会制民主主義が形骸化し、活力を失ってから久しい。現状を放置するならば、民主主義はいよいよ空洞化し、国民の政治不信はいっそう強まらざるをえない。

 この状況を招いた原因は、まずもって、余りにも長く続いた「五五年体制」であり、この間、政権交代が一度もなかったことに起因する。かくも長期にわたって政権交代を経験しなかった国は、先進諸国では日本だけである。政権交代のない民主主義は「生きた民主主義」とはいえず、議会制民主主義の生命力は失われる。

 この結果として、わが国の政治には次のような特徴的欠陥が生じた。

 第一に、長期にわたる自民党単独支配のために、政治の腐敗が構造的に定着し、公開の原則とはおよそ程遠い密室政治が日常化している。

 第二に、その場しのぎの政治がつづき、政策選択における緊張感が政界から欠落してしまっている。

 第三に、既成政党は、既得権擁護に執着する圧力団体の庇護の下に集票活動を行い、かつまた圧力団体の利益を優先させる政治行動に明け暮れ、この行動様式から逃れられないという不毛な状況に陥っている。このため国民に対する政党の責任感がいちじるしく低下し、国民全体に対する公平な政治が実現しにくくなってしまった。

 このような特殊日本的状況のなかで、政財界一体となった集権的管理社会がつくられ、国民は政治的にも文化的にも、可能性と活力を閉ざされている。この不幸な状況が、青年のアパシー現象や政治不信となってあらわれている。

 こうした状況をつくりあげた責任は、まず、ひたすら黒い利益をむさぼる政治を追求してきた自民党にある。とはいえ、野党側の責任も免責されない。ここ十数年間、自民党の長期低落傾向は、国民側からの自民党批判のあらわれであるにもかかわらず、この傾向を正しくうけとめ、政権交代の条件づくりと政権取得能力の形成に真剣にとり組まなかった野党、なかんずく社会党の責任は大きい。

 政権交代を可能にする条件成熟を前にして、古色そう然たるイデオロギー論争に明け暮れ、圧力団体にほんろうされてきたこの党になによりも欠けているのは、政治的知性であり、時代への洞察力である。六〇年代、構造改革論を圧殺し、教条主義へのシフトを強めてきたこの党は、いま、高度成長期につくられた利益集団の既得権を保守することによって、からくも生きのびているにすぎない。新しい政治的リーダーシップを創りだす活力も能力もほとんどないまま、低落の道をたどっている。

 公明党、民社党に関していえば、政権交代を可能にするためにも、それぞれの党に対し発言力をもつ圧力団体の利害に影響されることなく、また中道勢力としての立場を放棄することなく、政治的リーダーシップを確立するよう、体質改善を期待したい。

 新自由クラブは、「五五年体制」を打破するという一点においてわれわれと共通するし、圧力団体の拘束から自由であるという点でも、市民的政治実現への連帯の可能性をもっており、現在の困難を克服することを期待する。

 以上のような政界の見取図から、われわれは次のような課題を設定する。

 第一に、政権交代の条件づくりを他のなにものにも優先し、このことによって議会制民主主義を蘇生させる。当面する選挙をはじめ、あらゆる運動領域でこの原則を貫いてゆきたい。

 第二に、革新中道連合の構築に焦点を合わせた活動に全力をつくす。政権交代を最も近い将来に実現する道はこれ以外にないからである。このため次のような活動を展開する。

(a) 総選挙における具体的な共闘、協力の追求。

(b) 院内における協力、とくに公明党、民社党、新自由クラブとの間で院内交渉会派の結成。

(c) 政策実現における協力を最大限に追求する。政策要求のための大衆団体間共闘への、政党側の政治的リーダーシップの発揮がとくに重要となるだろう。

 第三に、社会党の解体的出直しと新生社会党再建運動の活性化を期待したい。

 以上を通じて、余りにも長かった日本の停滞した政治に流動状況をつくりだし、既存の圧力団体から解き放たれた自由で多様な市民政治を実現してゆくことに全力をつくす。

 一九七九年八月二十八日

社会民主連合


政策スローガン

○中立・不戦の憲法第九条を貫き、
 共存と連帯の新しい国際秩序をつくろう!

○エコロジー・宇宙船地球号と調和した
 産業・経済・エネルギーをつくりだそう!

○マイカーとNOが氾濫する都市を、
 緑とゆとりのある美しい郡市につくり直そう!

○非人間化を進める管理集権型の政治から、
 分権と参加による多様な自治を!

○時間短縮と生涯教育、経営参加で労働の人間化を!
 より人間的な福祉社会を築こう!

○政治の停滞と腐敗をたち切り、
 政権交代を実現しうる新しい野党とその連合をつくろう!

○古い教条と圧力団体の絆を解き放ち、
 新しい多様な市民の政治参加と社会的公正を実現する社会民主連合!


四党アピール  中道・革新共闘へ第一歩

 公明、民社、新自ク、社民連の四党は、八月十四日正午から、東京都内で党首会談を開き、自民党の一党支配体制をつき崩すことが緊急の政治課題であるとの認識を改めて確認し、このための選挙協力の具体化について、つっ込んだ意見を交換し、左記のような 「四党アピール」を発表しました。


 今日、われわれ政党人に課せられている緊急の責務は、危機的状況にあるエネルギー、インフレ財政、福祉など、八〇年代に向けての進路を明確に策定することである。

 さらに、政治不信の根源をなす航空機疑惑の解明など、国権の最高機関たる国会の任務は、与野党を問わずますますその重要性を加えている。

 しかるに大平総理は、国会に安定勢力を得ようとして党利党略、派利派略によって、全く名分なき解散を画策している。

 この現状を拱手して放置するならば、前国会から懸案の生活関連法案は犠牲にされ、新時代に対応する政策展開は遅れをとり、疑惑の解明はなおざりにされて、国民の政治不信はつのるばかりである。

 大平総理のかかる恣意のシワ寄せは、中間所得層への増税か一般消費税の導入かといった二者択一の形で、国民大衆にかぶせられることは火を見るよりも明らかである。

 財政再建の根本をなす行政改革による経費の節減や、不公平税制の是正に目を覆い、安易な増税対策に走ることは、いたずらに国民の負担を増すに過ぎず、財政の再建は遠のくばかりである。

 この危機的状況を打開する道は、まず自民党の一党支配体制をつき崩し、現状を打破するところから始めねばならない。

 われわれ四党は、それぞれ独立した政党として固有の主義主張をもちながらも、大平総理が国会の任務を軽視し、その独断によって衆議院を解散するならば、良識ある野党の立場から、条件の整った一定地区での選挙協力をも含めて、堂々と選挙戦を展開し、「現状の打破」と「新しい政治の時代」の構築を、国民各位の幅広い理解のうえに闘いとる決意である。


戻る目次前へ次へ