2003年10月05日 民主党政権政策/マニフェスト 戻る目次前へ次へ

II.私たちがめざす信頼される政策 ―民主党ビジョン(D-Vison)―

 私たちは国民のみなさんにお約束します。

  1. 失業のない、つよい経済を再生します。
  2. 税金の無駄遣いをやめ、公正で透明性のある政治を実現します。
  3. 「自立力」をもった、活力に輝く地域を創造します。
  4. 子どもや高齢者、女性が安心して暮らせる社会をつくります。
  5. 国民の命と健康を守るつよい社会を実現します。


経済政策
 私たちは、景気を回復させ、「仕事」と「雇用」を生み出すような経済政策に転換します。そのためにも、税金のつかい道を徹底的に見直し、正しい経済政策を行うための財源確保が必要です。

 勇気をもってムダな公共事業をやめることで、財源確保は可能です。

 そのうえで、国民のみなさんからお預かりしている税金のつかい道を、生活・環境重視に転換するのです。その象徴的な目標が、道路公団を廃止し、高速道路を原則無料化することです。欧米では高速道路は無料です。それが普通です。日本という国は、どうしてよその国でできることができないのでしょうか。「当たり前のこと」ができない国、日本。その原因が税金のムダづかいの構造です。私たちはその構造を改革し、税金のつかい道を大胆に変えます。

 それこそが構造改革です。

 そして、掛け声だけではない「経済再生5ヵ年プラン」と「財政再建プラン」を策定し、日本経済を復活させます。

地方分権
 税金のつかい道を大胆に変えるための手段のひとつが、地方分権をすすめることです。地域の問題は自分たちで決められる社会をきづく、この「当たり前のこと」を私たちは実現します。

 でも、この「当たり前のこと」を行うことが日本では相当むずかしいことなのです。だから私たちはこれを「分権革命」と呼びます。

 「当たり前のこと」ができない原因は、中央が地方を支配する構造です。中央では利権政治家、背徳的官僚、結託業者がウヨウヨしています。その象徴が補助金制度です。

 もともとは国民のみなさんからお預かりした税金を、まるで自分たちのお金のような顔をして官僚が地方に分配する補助金制度、これが諸悪の根元です。

 私たちは18兆円の補助金を廃止し、地方が責任と自覚をもってつかえるお金に変えます。また、中央省庁の権限を限定し、自治の確立と住民の行政参加をすすめます。

政界、官界の大改革
 補助金を含む予算の権限をつかって、利権政治家や悪徳官僚は自分たちの利益を追求しています。真面目で正義感に富んだ官僚もたくさんいますが、残念ながらそうでない官僚もたくさんいます。

 私たちは、私利私欲をうみだすきっかけになっている官僚の天下りを禁止し、ムダの少ない政府をつくるために、公務員の総人件費も縮減します。

 利権政治家と背徳的官僚は、不正に利得を得ようとしている不公正な業者と結託しています。こうした関係を明らかにし、政治家の不正を根絶するために、企業・団体献金を全面公開します。

 官僚制度のムダを見直すとともに、当然、私たちも議員定数を削減します。当面は衆議院の比例議員定数を80議席減らすことが目標です。

 また、政権交代というよその国では「当たり前のこと」が起きない原因である一票の格差是正をめざします。一票の格差がなければ、日本でもとっくの昔に政権交代は起きているのです。

NPO
 政界、官界の大改革をすすめる一環として、私たちは多くの国民が公共的な政策や自治体の運営に参画できるような対応をすすめます。

 政策課題がどんどん複雑かつ高度になり、変化のスピードも速くなっています。行政組織の中にずっといる官僚や役人だけでは、世の中の実情やニーズについていけなくなっています。そのことが、国民のみなさんのニーズに対応できない、場合によってはニーズとかけ離れた行政を行うことにつながっています。

 これからの日本は、民間企業や行政組織の中で専門知識を身につけた人たちに加え、NPOで非営利活動に従事しているみなさんの力もお借りして、多くの国民の知識と技術を国や地域の運営に活かすべきです。

 そのためにも、私たちはNPOがより大きく育つように、NPOの6割に税制優遇が可能となるようなNPO税制の仕組みをつくります。

中小企業・金融
 国の基本は民間経済です。そして、民間経済のいのち綱は金融です。

 金融は人間のからだにたとえると血液です。血液が流れなければ健康を害します。

血管の役割を果たすのが銀行ですが、今その血管が本来の働きをしていないことが日本経済の大きな問題になっています。

 金融機能が衰えているために、日本経済の屋台骨である中小企業のみなさんがたいへん苦しんでいます。私たちは血液をからだ中に十分に循環させることのできる「お金を貸せる銀行」をつくります。

 また、かけ声だけの中小企業対策を見直し、中小企業・商店街予算の7倍増、政府系融資の個人保証撤廃を実現します。現在のように、国の予算の0.1%程度の対策でどうして中小企業対策に力を入れていると言えるのでしょうか。

農業
 農業は国の基本です。「食料安全保障」という言葉があるように、国民の生活と生命を守るためにも食料政策はたいへん重要な分野です。

 この分野には、これまでも毎年1兆円以上の財源が投入されています。しかし、農家や農業関係の仕事をしているみなさんからは、日本の食料政策がうまくいっているという声は聞こえてきません。なぜでしょうか。

 それは、食料政策という名目でつかわれている予算の大半が、実は、農産物を生産し易くする、あるいは農家のみなさんの生産意欲を高めるようなことにつかわれるのではなく、「農業土木予算」などとしてムダづかいされているのです。

 必要のない農業空港をつくったり、減反を強制する一方で新たな農地造成をすすめたり、つまり、建設土木事業のための予算になっているのです。これでは農業政策、食料政策が不十分になるのは当然です。

 私たちは「農業土木予算」として支出されている農業関連補助金を削減し、ムダのない直接支援、直接支払制度をつくります。農家のみなさんの切実なご要望に真面目にお応えします。

 また、食料政策は最終的には消費者のみなさんに安全な食料を提供することが目的です。私たちは、「食」の安全をきびしくチェックする政策をすすめます。

環境
 日本の人口はまもなくピークを迎え、いよいよ本格的な少子高齢時代にはいります。人口が減るのですから、人間が住み、利用する土地や空間は今までほど必要はなくなるはずです。

 にもかかわらず、上述のように「農業土木予算」をつかって山や森が切り開かれ、美しい川が破壊され続けています。もうそんなことは終わりにしたいと思います。

 私たちは「緑あふれる地域」を次世代に引き継ぐために、10年間で1000万haの森林を再生します。森林は高い保水能力をもっていますので、利水・治水対策と称してコンクリートのダムを造る代わりになります。つまり、「緑のダム」となって、自然と私たち人間を育むのです。

 「緑のダム」以外でも、私たちは、環境に優しく、自然を復元させる政策をすすめます。風力、太陽、波力などのクリーンな新エネルギーのための予算を倍増させ、低公害車の普及、拡大に努めます。
 また、過渡的エネルギーとしての原子力については、安全を最優先し原子力行政の厳格な監視をすすめます。

働く人たちを守る
 経済、産業、環境などに関係するさまざまな政策は、いずれも国民の皆さんが豊かで安全な生活を送れるようにするためのものです。そして、生活の基盤は国民のみなさんが働くことによって支えられています。

 誰もが安心して働ける社会の実現、それが私たちの目標です。私たちは、誰もが仕事につき、労働が正当に評価されるルールを確立します。パートで働くみなさんの待遇の改善、育児・介護休業制度の拡充もすすめます。

 また、不幸にして失業・廃業を余儀なくされたみなさんに直接役に立つよう、能力開発訓練の充実と月10万円の手当支給、医療保険料軽減を実現させ、失業・廃業から再出発しようとする人たちを支援し、暮らしの安定を応援します。

子どもたちを守る
 どこの国でも、その国の将来は子どもたちが担っています。私たちは、子どもたちを健やかに育成する政策をすすめます。そのためにも、一人ひとりに目が行き届き、親の不安が解消される教育を実現します。

 地域の実情に応じた幼保一元化やNPO支援で保育体制を拡充し、学童保育も2万カ所に増やします。

 また、学ぶ意欲のある子どもたちを支援するために、無利子奨学金の貸与額を引き上げます。

 国の借金は将来の納税者、つまり子どもたちに重くのしかかっています。国の運営について、将来世代にも意思表示の機会を保障することは大切なことです。私たちは選挙権年齢を18歳に引き下げます。

 選挙権をもつということは、社会の一員として自分の言動に責任をもつということです。選挙権を持つと同時に成人年齢も18歳に引き下げ、少年たちの自覚の向上にも期待したいと思います。

お年寄りを守る
 現役を引退した高齢者の皆さんにも老後を安心してすごして頂けるような国づくりをめざします。「老後の安心生活、世界一」を実現するために、地域介護の拠点としてグループホームの1万カ所増設が目標です。

 子どもたち、若者たちも、いずれは歳をとります。現役世代、将来世代からも信頼される安心の年金制度をつくります。

医療
 世代に関係なく、健康な生活を送るためには適切な医療政策が欠かせません。

 まずは、病気になることを予防することが大切です。健やかさを保つ生活環境づくりに努め、早期発見、早期治療を実現する予防医療を充実させます。

 現在の医療政策が国民のニーズを満たしていないことは、子どもたちを守る小児医療があまりにも不十分であることが象徴しています。私たちは、350カ所の小児救急センターを整備し、小学生卒業までの医療費負担を1割に軽減します。

 また、患者と医師の信頼・協力関係を増進させるため、カルテ開示・医療費明細書発行の義務化を実現します。

 同時に、現在の医療政策の根幹である診療報酬制度は、医療の現場で頑張っている医師のみなさんにとってきわめて不透明な内容になっています。私たちは診療報酬改定プロセスの徹底的な透明化をすすめ、医療政策の歪みの構造を是正します。

人権、治安
 安心できる社会の実現は、国民一人ひとりの人権と安全が保障されることが大前提です。

 私たちは、そうした視点に立って人権が尊重される社会をつくります。差別の解消をめざす法律を制定し、盗聴法、住基ネット法、個人情報保護法など、国家権力による人権侵害のおそれのある現在の法制を見直します。

 また、社会的に弱い立場にある人たちを守ることにも力を注ぎます。テレビの字幕化を推進し、外国籍の人も希望により住民票に記載されるようにします。個人の人権が守られる共存共栄の社会、それが私たちのめざす日本です。

 さらに、犯罪にはきびしく対処し、安全な地域をとり戻します。警察官の3万人増員で犯罪検挙率を高めるとともに、仮釈放のない「終身刑」を創設し、凶悪犯罪の罰則を強化します。ドメスティック・バイオレンス(DV)防止法も強化します。

 私たちは、被害者を出さない社会、被害者を守る社会を実現するために、全力をつくします。

安全保障・外交
 国民の皆さんの生命と財産の安全を守るためには、安全保障や外交政策の強化に力を注ぎます。

 信頼できる外交、国民を守る安全保障体制を築くために、自立的な外交と国連機能の強化にとりくみ、防衛力整備も怠りなくすすめます。

 拉致事件の解決に全力をあげ、犯罪対策の強化など「日米地位協定」の改定問題に真正面からとりくみます。

 戦闘が続くイラクへの自衛隊派遣は行わず、イラク特措法は廃止を含め見直しを図ります。被災したイラク国民に対して、医療・教育・経済分野等の人道・復興支援について積極的に取り組みます。イラク国民による政府が樹立され、その要請に基づき安保理決議がされた場合には、わが国の主体的判断にもとづいて憲法の範囲内で、自衛隊の活用も含めた支援に取り組みます。

 さらに、外交を国民の皆さんの手にとり戻すために、外務省改革に力を注ぐとともに、大使等の民間登用率を2割に向上させます。外交官適任者を広く国民各層から募ります。

 地球環境保全に向けた基本条約の制定など、環境外交を積極的に展開し、世界から一目おかれる「環境大国」日本をめざします。

憲法
 「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という憲法の3つの基本理念を踏まえ、時代に即した憲法論議を積極的にすすめます。

 憲法を「不磨の大典」とすることなく、またその時々に都合のよい憲法解釈を編み出すのではなく、憲法が国民と国の基本的規範であることをしっかりと踏まえ、国民的な憲法論議を起こし、国民合意のもとで「論憲」から「創憲」へと発展させます。


2003年10月05日 民主党政権政策/マニフェスト 戻る目次前へ次へ