2003年10月05日 民主党政権政策/マニフェスト 戻る目次前へ次へ

四 子どもや高齢者、女性、誰もが安心して働き、暮らせる社会をつくります。

子どもたちを健やかに育み、確かな営みが築かれ、人生を通じて人が優先、尊重される社会こそが、本当につよい社会です。一人ひとりがしなやかでたくましく生きられるための基盤整備をすすめます。

2 誰もが安心して働ける社会をつくります。

(1) 誰もが仕事に就き、労働が正当に評価されるルールを確立します。

現在5%台半ばの失業率を4%台前半以下に引き下げることをめざし、就業機会の拡大を図るとともに、ワークシェアリングや男女共同参画の推進、不払い残業の解消などに取り組み、失業の新規発生を食い止め、就労者を増やします。

経済の変化に即した労働者の権利擁護、さまざまな面での官民格差の是正、国際的ルールの確立などを推進します。

(2) パート均等待遇の実現、育児・介護休業制度の拡充をすすめます。

平成16年度中に、正社員とパート社員などとの間の合理的な理由のない格差を是正し、均等な待遇を実現するパート労働法改正案を国会提出し、短時間労働であることを理由として、賃金その他の労働条件について正規社員等と差別することを禁止します。

また、実質的に1年以上の雇用契約を結んでいる有期雇用労働者であれば、育児・介護休業がとれるようにします。育児・介護休業制度全体についても、子どもが生まれてから小学校に入学するまでの間、月単位で2回まで分割して取得できるようにするなどの改善をすすめます。

(3) 能力開発と月10万円の手当支給で、失業・廃業からの再出発と暮らしを応援します。

雇用保険会計の安定を図るとともに、失業給付期間が終わっても就職できない人や、自営業を廃業した人などを対象として、能力開発訓練を拡充し、最大2年間、月額10万円の手当を支給する法案を国会提出するとともに、平成16年度途中から適用できるよう予算を用意します(平年度約2500億円を見込みます)。

また、倒産やリストラで失業した人が安心して医療を受けられるよう、医療保険料を1年間軽減します。この措置に必要な国費は年間25億円です。

2 子どもたちを健やかに育成します。

(1) 一人ひとりに目が行き届き、親の不安が解消される教育を実現します。

一人ひとりの子どもにきめ細かく目が行き届くようにするため、民主党政権4年間において、少なくとも小学校3年生以下のクラスについて、すべて30人以下とします。平成16年度から毎年約800億円ずつ予算を増額し、同時に、必要教員数については配置実態などの精査をすすめるとともに、必要な法律改正もすすめます。

学校内・地域での犯罪・災害から子ども達を守る対策をすすめるとともに、「学校五日制」や学力低下問題などに関する親の不安解消、学習指導内容を含む自治体の教育権限の充実、保護者や地域住民の学校運営への参画の推進、学校評価制度等の導入促進などについて、平成17年度中に「教育改革基本計画」を策定し、平成18年度から「平成の教育改革」を順次、実施に移します。

(2) 幼保一元化やNPO支援で保育を拡充し、学童保育も2万箇所に増やします。

約3万人といわれる保育所入所を待つ待機児童の解消をめざし、厚生労働省=保育所と文部科学省=幼稚園という縦割りによる分離を是正し、幼稚園と保育園の「幼保一元化」を推進します。また、NPOなどが行っている駅前保育・保育ママなど地域の多様な資源の積極活用を含め、平成16年度から待機児童解消に向けた具体策を実行に移します。

現在、約1万3000箇所で行われている学童保育を4年間で2万カ所に増やし、指導員も4万人から6万人へと増員します。さらに、父母の就業実態に併せた保育時間の延長などを含め、待機児解消に向けて、少なくとも初年度約300億円の予算を確保します。

(3) 無利子奨学金の貸与額を50%引き上げます。

長期の不況によって親の経済状況が悪化し、途中退学を余儀なくされる高校生、専門学校生、大学生が増えていることを踏まえ、緊急措置として、平成16年度から3年間、無利子奨学金の貸与額を、例えば自宅外私大生で現行6万3000円を9万4500円にするなど、希望者について50%引き上げます。また、就学継続が困難な生徒に対する授業料の減免措置を行う高校への財政支援を拡充します。

この政策を実施するために必要な予算は、約600億円程度となりますが、文部科学部門の予算の精査及び政府予算全体の冗費削減で捻出します。

(4) 成人年齢を18歳に引き下げ、選挙権も18歳以上とします。

若い世代に、社会の一員としての責任感を醸成し、積極的な社会参加を保障するため、成人年齢を18歳とし、選挙権年齢も18歳から付与します。次の総選挙から選挙権を付与できるよう法改正案を国会提出し、その成立をめざします。

3 「老後の安心生活」世界一をめざします。

(1) 若者からも信頼される安心の年金制度をつくります。

現行の年金法では、平成16年度から、基礎年金に対する国庫負担(税金投入)を、「3分の1」から「2分の1」に引き上げることになっています。このためには、2兆7000億円の予算が必要となり、現政権が事態を先送りしてきた中では、一気に実施することが不可能になっています。

民主党政権は、平成16年度から徹底して予算のムダづかいにメスを入れ、それによって生み出される財源を段階的に基礎年金に充てることで、5年間で国庫負担率を2分の1に引き上げます。

また、民主党政権は、将来にわたって持続可能な年金制度として、国民すべてに適用される新たな「二階建」の年金制度を再構築します。

まず、厚生年金等と国民年金を一元化し、すべての人を対象に、所得に比例した拠出を財源とする「所得比例年金(仮称)」を設けます。所得比例年金では、現役時代の拠出に応じた給付を受けることになります。利権の温床として食い物にされている、運用の実態すら明らかにされていない年金積立金をガラス張りにして、高齢化のピークにあわせて50年程度で取り崩し、保険料の引き上げを抑制します。

これに加えて、税を財源とする「国民基礎年金(仮称)」を設け、老後の最低限の年金を保障します。国民基礎年金は、所得比例年金の給付額が少ない人に、より厚く支給することとして、すべての人に同レベルの国民年金・基礎年金を支給する現行制度に比べ、相対的に少ない財源ですべての人に最低限の年金を保証できることになります。また、税が財源ですので、国民年金のような無年金者や空洞化という問題も生じません。

新制度発足後の国民基礎年金の財源は、政権一期目に予算のムダ使いに大きくメスを入れて実現する国民年金国庫負担分1/2の財源に加えて、デフレ経済を克服して安定的な経済成長が回復することを条件に、年金控除の見直しや消費税の一部を年金目的税化することで確保します。

新制度への切り替えにあたっては、十分な経過期間をとり、また既に年金を受け取っている人への給付水準や、既に保険料を支払った期間に対応する部分の給付水準は維持します。

国民年金のような無年金者や空洞化という問題は生じません。国民基礎年金の財源については、現行の国民年金国庫負担分の財源に加えて、年金控除の見直しと、政権一期目に予算のムダ使いに大きくメスが入ることと、デフレ経済を克服して安定的な経済成長が回復することを条件に、消費税の一部を年金目的税化することで確保します。

所得比例年金を導入するには、すべての人の所得を公平かつ正確に把握することが不可欠です。また、所得の捕捉が正確になされなければ、将来の年金財政を正確に把握することもできません。民主党政権では、公平かつ正確な所得の把握を可能にするための税制改革を推進し、これに基づいた具体的数値を示しつつ、年金改革を実行します。

参考:民主党の年金改革案についてのポイントメモ

(2) 地域介護の拠点として、グループホームを1万カ所増設します。

待機要介護問題の解消をめざし、平成16年度から年間約850億円の予算を確保し、4年間で、地域の身近な介護拠点―グループホームを1万ヶ所、約10万人分増設するとともに、ヘルパーなど必要な人員を養成します。

併せて、地域の実情と自治体の創意により、都心における介護付住宅の整備やバリアフリーのまちづくり、高齢者医療の充実などを推進します。

(この政策には、実際に地域で介護問題に日々取り組んでいる、地方自治体議員さんからの提案が含まれています)

4 一人ひとりの人権が尊重される社会を実現します。

(1) 差別の解消をめざす法律を制定します。

社会にまだまだ残っているさまざまな差別を解消するため、平成17年度末までに、法務省から独立した人権委員会の設置などを盛り込んだ、「人権侵害の救済に関する法」、すべての障害者に「完全参加と平等」を保障し、具体的な差別の禁止を規定する「障害者差別禁止法」、年齢を理由とした就職差別を禁止する「年齢差別禁止法」 など、差別解消のための法律の制定をめざします。

(2) 盗聴法、住基ネット法、個人情報保護法を見直します。

政権獲得後直ちに、盗聴法の運用を凍結し、2年以内に抜本改正の法律案を国会に提出します。また、住民基本台帳法の住基ネット条項と個人情報保護法についても、直ちに見直しに着手し、平成17年度中に抜本改正のための法律案を国会に提出します。

(3) テレビの字幕化を推進します。

聴覚に障害がある方々もテレビ放送を楽しみ、情報を確保できるようにするため、平成19年までに、技術的に可能なすべてのテレビ番組の字幕化を実現します。字幕化を行う放送事業者や製造業者に対しては、事業支援措置として約100億円の助成を行います。

(4) 外国籍の人も希望により住民票に記載します。

現在、外国籍の人は、日本国籍の人と結婚して一緒に暮らしていても、住民票には名前すら記載されないため、さまざまなトラブルが生じています。そこで、本人が希望した場合には外国籍の人も住民票記載を行うよう、住民基本台帳法を改正します。

(上記二つの政策は、民主党がインターネットを通じて政策を募集した際、聴覚に障害をもつ方、国内に居住する外国籍の方から提案いただいた政策です)


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