目 次
はじめに
1.次期総選挙・参議院選挙に勝利するための改革
1) 早期候補者の擁立
2) 新人候補者に対する支援の強化
3) 現職国会議員に対する措置
4) 予備選挙の試行的導入
5) 女性新人候補の支援強化
6) 幅広い人材確保のための具体策の検討
2.迅速な意思決定とチェック機能強化のための改革
1) 政権戦略委員会の設置
2) 常任幹事会を議決機関として位置付け
3) 両院議員総会の招集要件
4) 党大会は現行の開催方法を改善
5) 党内における衆参両院の関係を中長期的に検討
3.地域基盤強化のための改革
1) 総支部の役割明確化と強化
2) 都道府県連の整備・強化
3) 地方自治体議員の抜本的拡大
4) 党員・サポーターの拡大
5) 首長選挙における推薦基準見直し
4.その他の重要改革
1) 党財政の透明化の更なる推進
2) 政治スクールの設置・開催
3) シンクタンク機能の強化 |
はじめに
民主党幹事長に就任以来、数々の党改革を行ってきました。私が目指したのは、第一にルールに基づく党運営です。時に硬直的との批判もいただきましたが、民主党は多様なバックグラウンドを持つ人々が集まった若い党だけに、ルールに基づく公平な運営は必要なことだと考えています。第二は透明性の確保です。民主党が国民から信頼されるためには、政治資金の問題はじめ党運営における透明性と説明責任が重要です。
今回、代表選出馬にあたり、いままで党内で議論してきたこと、私が幹事長や代表として発言してきたことを中心に党改革の方向性を取りまとめました。ルールづくりと透明性重視という基本姿勢は変わっていません。この中には、更に党内論議を深める必要のあるものも含まれていますが、その大部分は代表に選任された場合に直ちに実行に移したいと考えているものです。その意味で、私の代表選出馬にあたっての公約としての性格を持つものです。皆様のご理解をいただきますよう、よろしくお願い致します。
1.次期総選挙・参議院選挙に勝利するための改革
1) 早期候補者の擁立
次期総選挙及び参議院選挙において単独過半数を獲得するためにまず候補者を早期に擁立しなければならない。総選挙においては170小選挙区における勝利を具体的目標とし、来年3月末までに300小選挙区すべてにおいて候補者を擁立することを原則とする。当面9月末までに30〜40選挙区における候補者を決定する。なお、党本部主導で選挙区を限定した公募を改めて実施する。
参議院についても、直ちに候補者選定作業に入り、順次公認予定者を決定し、3年後を目指し、準備活動をスタートさせる。今回参議院選挙で行った3人区、4人区における複数候補者の擁立については次回はより徹底し、かつ女性候補擁立を念頭に実施する。
2) 新人候補者に対する支援の強化
新人候補者に対する支援については既に、定期的な研修会の実施、ポスター・広報掲示板の作成費補助、支援チームの設置と個別研修担当議員の配置、調査委託費の支給などを実施してきた。それに加えて、常勤スタッフを雇用し、日常活動を活発に行っている者に対して、一定の範囲で人件費相当分の支援を行う。他方で活動の成果が見られない候補者は、客観的なデータに基づき、差し替えを行う。
3) 現職国会議員に対する措置
民主党は現時点においても衆議院議員176名すべてが小選挙区を持ち、日常活動を行っている。次期総選挙において、現職議員全員が、小選挙区で当選すれば直ちに政権交代が実現する。このため従来の民主党支持者を固めつつ、これを超えて女性、若者、そして従来の自民党支持者への支持を拡大することが必要である。日々の日常活動が決定的に不足しているとの指摘もあり、当選1回生に対して従来の研修担当議員の配置に加えて、研修などの充実を図る。
更に、当選回数の少ない衆参の現職議員に対する日常活動充実のための財政的支援強化を行う。
4) 予備選挙の試行的導入
候補者選定手続きの透明性をより高め、幅広い人材の政界への流入を促進する観点から、予備選挙の導入を積極的に図る。当面、衆議院小選挙区の空白区における新人候補の擁立に際し、試行的にいくつかの選挙区で予備選挙を実施する。この試行的な予備選挙は、複数の候補者を選定し、数ヶ月間の準備期間および1ヶ月間の選挙運動期間を設けたうえで実施する。選挙運動期間中は、当該都道府県連主催の立会演説会など運動の機会を設ける方式で行う。最終的な決定は、投票方式ではなく世論調査方式を行う。このような試行を通じて、早急により良い予備選挙のあり方を確立する。
5) 女性新人候補の支援強化
わが国の政治家に占める女性の割合は低く、民主党も、まだ10.1%にとどまっている。志ある女性の立候補、当選を積極的に支援し、優秀な人材の政界への流入を促すことは、民主党が果たすべき重要な役割である。10年後に女性国会議員の割合を3割以上に引き上げるなど、女性に開かれた民主党を実現する。
このような観点に立って、すでに党内にあるWS基金の役割を抜本的に充実するなどの措置を実現してきた。これに加えて、女性国会議員を着実に増やすため、衆議院選挙において1ブロック1名を上限とし、かつ1回に限り、女性新人候補者の重複立候補における比例名簿上位登載(比例優遇)を認めること、参議院選挙比例区に半数の女性候補、選挙区のうち3人区、4人区に必ず女性候補を擁立することを今後の検討課題とする。
6) 幅広い人材確保のための具体策の検討
幅広く人材を確保するために、衆議院比例重複においては、単独比例や比例優遇は上記 5)で今後の検討事項とした場合を除き、一切認めない。
次期総選挙・参議院選挙における勝利・政権交代を最重視するとの観点から、比例選挙における定年制の導入や当選回数の制限などは直ちに結論を出さずに今後の中長期的な検討事項とする。
いわゆる世襲候補は、わが国において今まで広く行われてきた。日本を代表する政治家が二世、三世であることは珍しくなく、世襲は一概に否定されるべきではない。しかし、無所属立候補や複数の公認候補が認められた中選挙区制度ならともかく、小選挙区制度においては、政党が一定の制限を課さない限り、世襲議員の割合は更に増すことになる。民主党にとって幅広い人材を確保することは極めて重要であることから、衆参国会議員選挙における新たな世襲立候補を今後制限することとし、3親等以内の親族(血族および姻族を含む)が同一選挙区から連続して立候補することを原則として認めないこととする。
2.迅速な意思決定とチェック機能強化のための改革
1) 政権戦略委員会の設置
民主党は代表のリーダーシップを重視する考え方を取っている。このことは引き続き維持するとともに、民主党代表の最大の使命である政権交代の実現に向けて、代表直属の機関として「政権戦略委員会」を設置する。同委員会は代表を委員長とし、若干名で構成することとし、政権交代に関する基本的な事項を議論し、方向付ける場とする。なお具体的な党としての意思決定は、党務および重要政策における総合調整機関と位置付けられている役員会の議論を経て、常任幹事会、『次の内閣』などにおいて行う。
2) 常任幹事会を議決機関として位置付け
規約上、議決機関と執行機関双方の性格をあわせもつ常任幹事会を、その実態に即して党務に関する議決機関、即ち執行部に対するチェック機関として明確に位置付ける。それにともない、従来の幹事長主宰に代え、常任幹事会は常任幹事会議長が主宰し、役員会メンバーと常任幹事で構成することとする。
常任幹事会議長は代表が選任し、大会の承認を得ることとする。常任幹事は、規約で定められた役員ならびに幹事長が必要と判断する役職者という現在の構成に代え、代表が指名する者、ブロック協議会において互選によって選ばれた者、ならびに当選期別に互選で選ばれた者で構成する。また、常任幹事の任期は1年とし、1回に限り再選を妨げないものとする。
これらの改革を行うことによって、両院議員総会に次ぐ議決機関である常任幹事会の位置付けがより明確となる。
また、常任幹事会の議事は全会一致で決することを原則とするが、最終的には多数決により決定することを規約に明記する。
これにあわせ、現在任意に設置することとしているブロック協議会を、ブロック内の相互協力をより密接にするための党の常設機関として位置付ける。
3) 両院議員総会の招集要件
両院議員総会は、党大会に次ぐ議決機関であり、その招集要件は規約において、「代表あるいは常任幹事会の要請」により両院議員総会長が招集すると定められている。通常は、常任幹事会が執行部に対するチェック機関としての役割を果たすものの、案件によっては両院議員総会において全党的に広く議論することが必要な場合がある。
そこで、党所属国会議員の3分の1以上の要請があった場合、両院議員総会長は速やかに両院議員総会を招集しなければならないとの招集要件を追加し、執行部に対するチェック機能を強化する。
4) 党大会は現行の開催方法を改善
党大会は、党の最高議決機関であるとともに、全国会議員ならびに各都道府県連の代表者が一堂に会して議論する貴重な機会でもある。そこで、基本的に現行の開催方法等を踏襲することとするものの、前段会議をさらに充実させて実質的な議論の場を増やすとともに、党支持者の参加意識をより高めるための工夫をするなど、引き続き運営上の工夫・改善を図るものとする。
5) 党内における衆参両院の関係を中長期的に検討
衆参両院の独自性を尊重しつつ、党としての一体運営を確保する観点から、衆参両院の関係を検討すべきとの指摘がある。具体的には参議院会派の役員選任のあり方、党役員選任における衆参両院議員のバランスなどが課題となる。他方で、衆参両院の役割分担について、今後党の内外で議論することが予定されている。これらの議論の方向も見つつ、党運営における今後の中長期的な検討課題とする。
3.地域基盤強化のための改革
1) 総支部の役割明確化と強化
総支部は党規約上も党の基本組織であり、総支部における党活動が活発になされることが最も重要である。総支部長である現職国会議員や公認予定候補者は、総支部運営の要であり、その権限を明確にするためのガイドラインを党が設定する必要がある。特に、公認予定候補者が総支部長を務める総支部には、総支部長が次の国政選挙で当選することが総支部活動の最大の目標であり都道府県連や党本部のサポート体制を強化することが重要である。
2) 都道府県連の整備・強化
都道府県連は規約上総支部の連合体であり、本部と総支部の間又は総支部間の連絡調整を行うとともに、都道府県議会活動や地方自治体選挙、参議院選挙などにおける中心的な役割を担う重要な組織である。都道府県連の代表者は、総支部長が互選により選任することを基本とすることについては、都道府県連の性格上明らかと考えるが、他の役員の選任、協議機関としての都道府県連幹事会などの権限などについて、かなりバラツキがあるのが現状である。これらについても一定のガイドラインの設定が必要である。
都道府県連の財政基盤を強化するために、政治資金パーティーの開催を奨励することとし、所属国会議員が1名ないし不在の都道府県連が同パーティーを開催する場合には、党本部の財政的支援や党本部役員の優先的派遣を行う。
3) 地方自治体議員の抜本的拡大
国政における政権交代実現を目指すとともに、地方議会においても多数派を形成することを目指し、まずは都道府県及び政令指定都市の議会議員選挙において、すべての選挙区に公認または推薦候補を擁立するとともに、定数3以上の選挙区に複数の候補を擁立することを基本方針とする。新たな候補擁立にあたっては、女性や民主党の支持層拡大につながることを重視する。
党本部が公認権を有する都道府県及び政令指定都市の議会議員選挙に対する財政支援強化を行う。その際上記基本方針に基づいているかどうかを支援強化の判断材料とする。
党の地方自治体議員ネットワーク組織である地方自治体議員フォーラムの活動を強化するとともに、その都道府県ないし地域ブロック単位の活動を促進する。民主党と主張の近いローカルパーティーとの連携を深め、同フォーラムへの参加を求めていく。
4) 党員・サポーターの拡大
党組織のすそ野を広げるとともに、党財政の基本である党費・サポーター会費の収入増を図るため、党員・サポーター拡大目標を毎年設定し、拡大運動を展開する。同時に、総支部における党員・サポーター登録数に一定のノルマを設定することを検討する。
党員・サポーターが党本部役員と接する機会を提供するイベントとして、地域ブロックが主催する党員・サポーター集会を新たに開催することとし、当面は各ブロック年1箇所程度、各都道府県連の持ち回りで開催する。
5) 首長選挙における推薦基準見直し
都道府県知事および政令市長選挙候補者の現行の推薦基準は、原則70歳以下、かつ3期目までとなっている。これは、3期を超える場合は例外なく推薦しないが、70歳を超える場合には個別状況によって例外を認めることがあるとの趣旨であり、この基準は現行どおり維持することとする。
なお、都道府県知事及び政令市長選挙については、都道府県連独自の推薦は行えないことを確認するとともに、党本部の推薦決定にあたって推薦基準を満たしている場合には、都道府県連の申請を尊重することを基本とすることを推薦基準に明記する。
4.その他の重要改革
1) 党財政の透明化の更なる推進
ここ数年の改革によって党の政治資金の透明化は大きく進展した。即ち、党本部及び都道府県連支部に対する外部監査導入、党HP上での公開、党所属国会議員の閣僚並みの資産公開、党経理基準の厳格化などを実行してきた。今後とも政治活動に必要な資金の透明化に更なる努力が必要であるが、現時点で政治資金に関し抜きん出て透明性の高い政党であることは明確である。以上の実績に基づき、党の政治資金団体である国民改革協議会の所要の改革を行ったうえで、企業団体献金を受け入れることを先般、党として確認した。
今後は更に開かれた国民政党を目指し、党に対する個人献金の一層の拡大努力をすることとする。その一環として、本部が党所属国会議員や地域組織に対してネット献金・カード決済システムを提供するなど、幅広く献金を募る仕組みの整備を検討する。また、有志議員による個人献金パーティーの試行的開催を奨励し、それを党本部が支援するなど、新たな取り組みを進める。
2) 政治スクールの設置・開催
優秀な人材を発掘・育成するために、地方議員、候補者公募試験の合格者、党支部職員、議員秘書そして、広く政治に関心を持つ人々を対象とした政治スクールを設置することとし、平成17年度中の開催を目指して具体的な準備作業に入る。
3) シンクタンク機能の強化
党として中長期的な政策課題を専門的見地から検討するためのシンクタンクを育成することとし、法人格を持ち、かつ党との連携が取れることを前提に、既存のシンクタンクの活用も選択肢の一つとしながら、具体的検討に入る。市民政調など外部の既存シンクタンクとの具体的テーマに即した連携もより強化する方向で考える。