2004年6月22日 目次      戻るホーム憲法目次

民主党憲法調査会「中間報告」 【第2小委員会:統治機構】


国民主権に基づく確かな統治をめざして

1.国民主権と権力分立

近代憲法は、立法・執政・司法による権力分立原則を採用しているが、今日では、地方分権、独立の準司法機関などを含めて多元的な権力分立の仕組みが出来上がっている。また、わが国では、三権分立の基本形の中心に「行政」を忍び込ませて立法府や政治そのものの関与を排除している側面も見られる。こうした混乱と恣意的な憲法解釈あるいは権力運用を避けるためにも、権力分立に関する明示的な規定を設けるべきである。

2.分権国家・日本

国民の信託により、中央のほか、地域にも政府が存在することを認め、日本が分権国家として構成されることを明確にする。このため、中央政府の役割について限定列記するとともに、地域にできることは地域においてこれを担うことを明記する。

3.首相主導の議院内閣制度の確立

(1)首相主導の政府運営の実現
 憲法及び同付属法における「内閣」を主体とする諸規定を再検討して、「首相(内閣総理大臣)」主体の規定へと変更すべきである。

(2)内閣が遂行するのは「行政」ではなく、「執行権」の行使
 執行権とは、行政をコントロールし、政治目的に向けてそれを指揮監督する権限を指す。憲法第65条に規定される行政権は、本来は執行権に相当するべきものであり、それが内閣ではなく内閣総理大臣(首相)に属することを明確にすべきである。
(3)政・官関係の見直しと政治任用の拡大

  1. 現行の国家行政組織法や国家公務員法によって守られて聖域化している官僚機構のあり方を見直す。行政組織権を執行権を有する内閣総理大臣に属することを明確にするとともに、政治的リーダーシップを発揮するため、政府の中に政治任用を拡大する。
  2. 内閣以外の議員の行政への関与を厳しく制限して、行政のコントロールに関する内閣の主導性を確保し、弊害の大きい政府・与党の二元構造を解消する。同時に、野党第一党に対してシャドーキャビネットの設置を義務付け、一定の範囲で行政への関与を制限的に容認する仕組みを確立するべきである。より具体的には、政治家と公務員との接触に関するルールを設けて、政府にあっては大臣を通じて与党議員は公務員にアクセスできるものとし、野党に対しては第一党のシャドーキャビネット大臣に同様の役割を持たせて、それ以外の政治家が直に接触することを原則禁止する。

4.二院制のあり方と政党の位置づけの明確化

(1)二院制のあり方と参議院の役割
 現行の参議院の役割を大幅に見直し、例えば参議院議員の大臣指名の廃止、衆議院における予算審議と参議院の決算審議の役割分担、長期的視野に立った調査権限や勧告機能の拡充などを検討すべきである。
 また、衆議院と類似する現行の選挙制度を改め、地域代表制を中心として、専門性も加味した選任方法へと改革することも検討すべきである。

(2)政党の位置づけ
 議会制民主主義における政党の重要な地位と役割に鑑み、政党に憲法上の地位を与えるとともに、財政の公開、活動の報告などを義務づけた、憲法付属法としての性格を持つ政党法を制定するべきである。

(3)国民主権の根幹である選挙制度の位置づけ
 選挙制度は、憲法の根本規範の一つである国民主権の根幹に関わるものであり、政治家や政党による恣意的な修正を許すものであってはならない。選挙制度のあり方については憲法上の規定を設け、その違反には厳格な法の適用を行えるようにすべきである。

5.国民投票制度の検討

日本でも、例えば、主権の移譲を伴う国際機構への参加などの場合について、国民の意思を直接問うことができる国民投票制度の拡充を図るべきである。そのための手続きや効力について詳細な検討を行い、細かく規定していくことが重要である。

6.憲法調査機能の拡充と違憲立法審査制の確立

憲法解釈の機関として立法府に設置されている衆参両院の法制局を強化し、執行機関の一部局たる内閣法制局は縮小すべきである。同時に、現在の司法裁判所に充実した憲法審査部門を設けるか、あるいはヨーロッパや韓国などが採り入れている憲法裁判所もしくは憲法院など違憲審査のできる固有の審査機関を新たに設置することを検討すべきである。

7.会計検査、公会計、財政に関する諸規定の整備・導入

財政及び公共団体の公会計制度は、透明性の高いルールと公正な第三者機関の監視の下に置かれるべきである。公会計のあり方に関する基本原則を明記するとともに、会計検査院及び国会の中に新たに設置すべき行政監視院による監察・調査・勧告等を可能にするべきである。財政については、内閣総理大臣の予算・決算の提出者として全責任を負うべきこと、及び予算編成方針の決定段階から国会への説明責任を果たすべきことを明記するとともに、現行財政法の基本原則を憲法に書き入れることなどを検討する。なお、決算報告について事実上2年以上かかっている現状を改め、電算処理による迅速処理を生かして、次年度予算の編成に概数による決算報告が可能な仕組みを確立して、それを義務づけるものとする。

8.準司法的機能を有する独立性の高い第三者機関の設置

政府からの独立性を確保された人権委員会(仮称)や公正取引委員会などについては、憲法上の位置づけを明確にすることが望ましい。また、国会にその根拠を持つ福祉オンブズマンの設置などについても、その高い独立性を保障するために憲法上の機関として明確にする。

9.硬性憲法と憲法改正手続き

硬性憲法の実質を維持しつつ、より柔軟な改正を可能とするために、現憲法の改正手続きそのものを改正する必要がある。例えば、(1)憲法改正の発議権は国会議員にあると明記する、(2)その上で、各議院の総議員数の過半数によって改正の発議を可能にする、(3)改正事項によっては、各議院の3分の2以上の賛成があれば、国民投票を経ずとも憲法改正を可能とする、(4)ただし、主権の移譲など重要な改正案件に限定して国民投票を義務付け、その場合、有効投票の過半数の賛成を条件とする、など改正手続きを見直す。


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