2003年12月15日

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158 衆議院イラク支援特別委員会−(1)

質問者=小野寺五典(自民)、西田猛(自民)、遠藤乙彦(公明)、渡辺周(民主)、末松義規(民主)、赤嶺政賢(共産)久間章生(自民)、中谷元(自民)、太田昭宏(公明)前原誠司(民主)岡田克也(民主)穀田恵二(共産)、照屋寛徳(社民)、中川正春(民主)


平成十五年十二月十五日(月曜日)

斉藤委員長 これより会議を開きます。
 議事に入るに先立ち、申し上げます。
 去る十一月二十九日、イラクにおいて、在英国日本国大使館大使奥克彦君及び在イラク日本国大使館一等書記官井ノ上正盛君の両君が、職務中、何者かによる襲撃のため、不慮の死を遂げられました。まことに痛惜の念にたえません。
 ここに、両君の死を悼み、謹んで黙祷をささげたいと存じます。
 御起立をお願いいたします。――黙祷。
    〔総員起立、黙祷〕
斉藤委員長 黙祷を終わります。御着席ください。
     ――――◇―――――
斉藤委員長 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局長官秋山收君、内閣官房内閣審議官増田好平君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長小林誠一君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君及び外務省中東アフリカ局長堂道秀明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。
小野寺委員 おはようございます。自由民主党小野寺五典です。
 本日は、この大きな課題について、特に、昨日報道がありましたサダム・フセインが生地ティクリートで米軍特殊部隊によって拘束された、そのことについて初めにお伺いしたいと思います。
 この問題、恐らく日本全国、あるいは世界じゅうが驚いた、そしてまた期待感を持って受けとめた、そういう報道かと思います。
 この報道の状況を聞きますと、どうもDNA鑑定含め、このサダム・フセインと思われる人物、ほぼ特定できたというふうに考えられます。そしてまた、このことによって、私ども日本が抱えるイラクに対しての人道復興支援、その問題にも大きな影響があると考えられます。
 そこで、まず官房長官にお伺いしたいと思います。
 今回のこのサダム・フセインが捕らえられたということが、我が国にとってどのような意味を持つのか。それからまた、報道によりますと、国連におきましても国連の事務総長が、このフセインの拘束ということで一つ大きな節目になった、そしてまた世界の復興援助が、これについてまた弾みがつく、そういうことを期待感を述べてコメントされていますが、このことについてお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 昨日は大変大きなニュースがございました。私ども、大量破壊兵器の捜査も、調査と申しますか、それもはかどらない、そしてまたフセイン元大統領もなかなか捕まらない、こういうことでもって、一体どうなっているのかな、こういう気持ちも実はないではなかった。こういう状況の中で、昨晩、フセイン逮捕、拘束、こういうようなニュースを受けまして、私ども、大変これはよかったなという思いを強くいたしております。
 イラク・フセインのこの悪行、残虐、そしてまた非道の政治をもう二十年以上にわたって続けてきた、彼が治政をとってからずっとやってきたんだというように言っても過言ではないと思いますけれども、その間の悪行は、これはけさ外務省に急遽、どれだけのことをしたのかと言って調べさせたらば、これだけ厚いのが出てきたんですよ。
 いろいろございます。生物兵器、化学兵器とか大量破壊兵器ももちろんございますけれども、イラクの国民に対して大変な抑圧をしてきた。人権上の問題、拷問とか死刑、そういうようなこともしました。児童虐待もした。また、数限りない失踪事件も起こっております。また言論統制、また食糧の配給の停止だとか、そういうことを恣意的にやってきたということもあります。
 そしてその間、この十年間だけ、湾岸戦争以来、経済封鎖もございましたけれども、経済は本当に疲弊をいたしておりました。そして、その前の十年間も経済的には失政を行っておったんですね。イラクの国民は、経済的にも本当にどん底の生活を強いられていた。そして、一部の者が優越的な立場でもって振る舞っていたというのが、これがフセイン政権の実態であったということを考えれば、フセイン大統領が拘束されたということは、これは本当によかったという思いでございます。
 また、フセインを信奉する、そういう暴君を信奉するという人もいるわけでございますから、そういうような人たちの迷妄を断ち切るということから考えても、これはよかったなということでございます。
 しかし、フセイン元大統領が拘束されて、それですべて終わったということではありません。問題は、いわゆるテロ、このテロの根源が何か。これは正直申しまして、イラクで起こっている各地区におけるテロの実態、また背景、それは克明に分析されているわけではないということでありますから、フセインがいなくなればすべて解決するというわけではないのではないかというように私どもは思っております。
 これからも、そういう意味においては極めて慎重に、そしてまた、強力な国際協調を図る中でテロの撲滅ということに向かって一致団結していかなければ、イラクの復興、再建もないし、そしてまたイラクが混乱すれば中東地域の混乱、こういうことも考えれば、イラクの復興はこれはもう本当に喫緊の課題である、大きな課題である。国際社会の中における課題であり、また日本にとっても他人事ではない、そういう観点から、今後も我が国としても、このイラクの復興人道支援とか、そういうような復興に関係するいろいろな形での支援を続けていかなければいけない、そのように思っているところでございます。
小野寺委員 官房長官、昨日からの大変な報道の変化、御対応、大変だと思いますが、御答弁ありがとうございます。
 それで、このような大きな変化があるわけですが、この状況によって、いわゆる旧サダム・フセイン政権というのが本当にこれは終わりだということが、世界各地あるいはイラク人民にとっても再認識されたと思うんですが、この状況によって、いわゆるイラク人道復興支援法の中の大事な要件にあります主要な戦闘の終結ということが再確認されたかというふうに思います。
 そしてまた、イラク再建に対しての我が国の役割が一層求められると思いますが、その中で一つ、私どもが懸念されるのが、このサダム・フセインの捕捉、一部報道によりますと、テロの激化が一時復活するのではないか、そういう不安の声もあります。ぜひ、このことについて、防衛庁長官から、今回、イラクに自衛隊を派遣するに至ってのこの新たな状況の変化についてどのようなお考えがあるか、お答えいただきたいと思います。
石破国務大臣 ただいまも官房長官からお話がございましたが、これは大変大きな一歩だろうと思っております。
 他方、これによって、すべてめでたしめでたしで、テロ行為が全くなくなるというふうに私ども、楽観的には考えておりません。このことによって、確かにサダム・フセインはもう戻ってくることはない、あるいはその恐怖におびえていろいろな復興に協力することをためらっていた、恐れていた、そういう方々が協力してくださる、そういう意味でいい兆候だと思っています。画期的なことだと思っています。しかしながら、これでテロが全くなくなるとは思っておりません。
 そういうようなことで、私どもとしては、従来どおり治安の状況というものを慎重に見きわめつつ、あわせまして、そのようなテロに対して、仮に派遣することになりました場合に、私どもの要員の安全をどう確保するかということに引き続き万全の対策をとってまいる所存でございます。
小野寺委員 この人道復興支援に対しての多くの期待というのが、恐らくこれをもってさらに国際世論として強まると思います。ぜひ自衛隊派遣に関しましては万全の注意を払いまして、くれぐれも二度とあのような、二外交官の不幸のようなことが起きないように対応されることを御期待したいと思っております。
 こういういろいろな事件が今起きておりますが、その中で私考えますのは、実は正義というものの考え方です。
 確かにサダム・フセインは、イラクに対して、イラク国民に対して多くの不幸をもたらしました。しかし、その一方、アメリカ軍に対する自爆テロというのも多発しています。
 この自爆テロという言葉ですが、よく内容を考えると、実は、みずからの命をなげうって自分の一つの抵抗する使命を果たすという、非常に重い、深い意味があると思います。特に、私ども日本人にとりましては、かつて同じようなことを先輩方は経験されたというふうに思います。そういう不幸な歴史あるいはこの問題に対しての重い認識を持つ日本人だからこそ、この正義というものをもう一度よく考える必要があると思います。
 その中で、恐らく、日本国民の大多数あるいは世界の世論にとっても一つの共通の正義というのが、イラクの国民が、先ほど官房長官からお話がありました、サダム・フセインの長い間の圧制に苦しんでいた、あるいは今回のイラクのいろいろな、アメリカ軍の攻撃を含めて、内乱によって何か疲弊している、そういう困っているイラク人に対して国際的に手を差し伸べなければいけない、そしてまた日本もその一翼を担わなければいけない、このことは恐らく間違いのない正義だと思います。今回日本が自衛隊をイラクに派遣するという大きな意味も実はここにあるというふうに思います。
 そこで、もう一度防衛庁長官にお伺いしたいのですが、今回の基本計画を見ると、自衛隊の部隊による人道復興支援として、医療、給水及び学校の公共施設の復旧整備ということがあります。また、人道復興支援物資の輸送というものもあるとこの基本計画に書かれていますが、実際イラクの人たちが現地の生活あるいは日々の糧の中でどのぐらいのものをどういう形で困っているのか、日本に要求しているのか、先般の自衛隊の調査を含めて、もしそのイラクの人たちの現状、そして日本に寄せる期待ということをわかる範囲でお答えいただければありがたいと思います。
石破国務大臣 まず医療について申し上げます。
 これは委員も映像等々で御案内のことがあるのかもしれませんが、例えば日本がつくった病院というものがございますが、それが十分に機能しているかといえば、そういうわけでもございません。設備あるいは医薬品の供給、設備が老朽化している、医薬品も十分に行き届いていない、機材やスタッフも十分ではないという状況であります。したがって、病院はあるが病院が有効に機能していない、運営も十分ではない、その点についての指導助言というものは不可欠だと思っております。
 また、水について申し上げますと、確かに川はあるのです。水はあるのですけれども、これも設備が相当老朽化をしている。それでなくても南部地域というのはサダム・フセイン政権下で大変に冷遇されてきた地域であります。設備も老朽化をしている。したがって、どのようなことになっているかというと、川から直接水をくんできてそれを飲んでいるという状況を、実際に私ども確認をいたしておるわけでございます。そのようなことによって、特に子供たちあるいは病気の人たち、高齢者の人たち、そういう方々の罹患率が非常に高いのではないか、そういう懸念を持っておるところでございます。
 学校につきましては、これも相当に傷んでいる。学校そのものが運営できないような、そのような傷みが非常に激しい施設、そういうものが多くございます。私ども自衛隊として、学校そのものを建てるというようなことは能力的には持っておりません。しかしながら、壊れたところを修復して、少なくとも子供たちがきちんとした授業が受けられるような環境を整える、そのことによってイラクの子供たちにきちんとした教育を受けさせてあげる、そのためのお手伝いは十分になし得る、そのように判断をいたしておるところでございます。
小野寺委員 私も、実は現地のNPOの担当者から刻々とメールが入るんですが、その現地の方のお話でも、やはりこの飲み水の問題というのは非常に大きな問題だと。どうもイラクの川の水というのは大変苦くて、とても飲めるような状況じゃない、これはとにかく浄水して、少しでも早く一般の人たちに広く水が行き渡るということが大事だというふうに、現地の方からもお話を伺いました。
 その中で、この飲み水のこと、多くのことに関係すると思うんですが、どうしても自衛隊ということの活動、これはとても大事なんですが、イラク全土にこういう人道復興支援をするということになりますと、なかなか限界がある。その中で、このNPOの方から一つの御提案がありました。
 それは、どうもイラクというのは、井戸を掘る、特に地中深く七十メートルぐらい深い井戸を掘ると、そこからある程度水をくむことができる。飲料水にするためには、実はそういう深井戸を掘れば可能なんだということを、盛んに現地で活動されて実体験として感じていらっしゃるということなんですが、そこでこういう提案がありました。
 今こういう状況で、実はイラクの人が一番困っているのは仕事がないことだ、そしてまた水がないことだと。その際に、もし、例えばそういう石油掘削等、長年の技術、労働者がたくさんいる国ですから、その方々を日本に招聘して、日本の技術とそれから機材を短期で習得していただいて、それでまたイラクに戻り、そしてイラクで深井戸を掘ったりあるいは水の確保という作業、そういう仕事に従事してもらえれば、仕事の面でもあるいは技術の面でも、そしてまたイラク人によるイラクの人道復興支援という面でも活躍できるんではないか、こういう御提案がありました。
 このことを含めて、今回、まずこの自衛隊の派遣ということがどうしても先兵としては必要かと思いますが、その後必要とされるのが、実は本当の意味での日本の外交的な支援。特に、先般、岡本行夫さんから、私ども委員会理事会で、現地の意見をお伺いしました。その御意見によりますと、イラクの人たち、CPAの皆さんから本当に感謝をされるのは、実は政府の無償援助、日本は十五億ドルを決めたということに関して大変な歓迎を受けている、そのことをお口みずから聞かせていただきました。
 ですから、ぜひ、これからの日本の一つのあり方として、この無償援助を含めて外務省の積極的な活躍が必要かと思いますが、この政府無償援助について、あるいはこれからのイラクの人道復興支援援助について、外務大臣からその方針を伺いたいと思います。
川口国務大臣 我が国は、十五億ドルの無償ということで、委員も今おっしゃっていただいたように、国際的にも大変に評価を受けております。今までのところ、これまで十五億ドルのうち約九千万ドルを超える金額を援助として実施をしたということでございます。
 先ほどおっしゃられた井戸を掘るということも、私は、日本が深い井戸を掘るということはアフリカ等で幾つもやってきていることでございまして、そういった技術を移転する、あるいは機材も込めて行うというのは、一つ検討すべきプロジェクトではあるというふうにお話を伺いながら思いました。
 このほか、いろいろなイラクの人たちのニーズにこたえるための支援をやっていかなければいけませんし、イラクは、今度の戦争でイラクの制度が動かなくなったということだけにとどまりませんで、イラン・イラク戦争以降のサダム・フセイン政権下での、そういった国内のインフラに対して十分に対応していないという、まさにそこにまでさかのぼってやっていかなければいけない支援がたくさんあるということでございますので、引き続きNGOの方々等々と御相談をしながら、そして日本が今既にやっておりますのは、近隣の諸国、エジプトですとかヨルダンですとか、そういった国々と一緒に支援をしていきましょうと。第三国協力といいますか、そういうことも考えておりますので、そういった手法も生かしながら、イラクの復興人道支援をきちんと外務省といたしましてもやっていきたいと考えております。
小野寺委員 今回の日本がイラクに対しての対応、これは恐らく日本国内はもとより、イラクの国民もそうですが、実は中東全体、もしかしたら全アラブが非常に注目をしているのではないかというふうに思います。アメリカとは違った形の、日本型の支援ということも恐らく望まれているのではないかというふうに思います。
 例えば、今回自衛隊が派遣されたその後に、その地域には雇用が生まれ、そしてまた治安もよくなり、またいろいろな基本的なインフラ、飲み水の確保あるいは学校の整備、そういうものが足跡としてきちっと残っていくということが、恐らく日本に対しての中東、そしてまたアラブの国々の大きな意味合い、イメージとして定着していくのではないか。
 ですから、今回のこの人道復興支援というのは、実は日本の中東政策の大きな柱にもなる、そういう大きな課題だと思います。ぜひこの援助の問題、しっかりと今回立ち向かっていきまして、いろいろな問題、たくさんあると思いますが、その先にありますのは、サダム・フセインの長い間の圧制に苦しんだ人々、子供たちの笑顔がある、そういう気持ちでしっかりやっていただきたいと思います。また、私どもも、そのことに対しては懸命に支えていきたいと思っています。
 それから、今回、このような形で自衛隊が派遣されるということになりました。いろいろな国内での議論あるいは考え方があると思います。ですが、今、国際的にどうしてもイラクを復興援助するんだ、そういう大きな流れの中で、日本政府としてもしっかりやっていかなければいけない、そういう思いを恐らく多くの方が思っていらっしゃると思います。その中で、派遣される自衛官の問題、非常に国内の中でも、その安全対策について多くの心配をされていると思います。
 確かに、今回、戦闘が終了している、そしてまたテロが起きているといえども南部の方は安定している、いろんな要件があると思いますが、私ども国民が思いますのは、その上にもさらに念には念を入れてぜひ自衛官の安全については確保していただきたい、そう思っております。ぜひ、その辺の決意を防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
石破国務大臣 これは、この法律をつくりますときから多くの議論がございました。このイラク特別措置法というのは、第九条に、防衛庁長官は派遣される隊員の安全に配慮しなければならない、そういう義務規定を置いております。
 PKO、随分と実績を上げてまいりました。事故というものもありませんでした。あるいはテロ特措法に基づいて、今オペレーションを行っておりますけれども、これも事故もございません。
 しかし、イラクの場合には、さらに困難な事情がたくさんあるということを認識しながら、私は、派遣される自衛官の装備、そしてまた権限、能力、この三つの観点から、本当に想定し得るあらゆることに、これは大げさで申し上げているわけでもなくて、あらゆることに対応できる、そういうような措置を講じる必要があるだろうと思っています。
 先ほど委員が、自爆テロということをおっしゃいました。これは、自爆テロというのは、とにかく抑止力がきかない。これをやっちゃうと自分は死んじゃうんじゃないかというようなこと、それをためらって、やるのをやめよう、そういう意味の抑止力はきかない。そういうことも加えて考えると、極めて困難だと思っております。
 隊員が、もちろん無辜の方々を不法に傷つけるということがあってはなりません。しかし、迷いあるいはためらい、おくれ、そのことによって自分に被害が生じてしまうということもないのか、ここが非常に難しいんです。相手の方にそういうような危害を加えてはならない、しかし自分を守らなきゃいけない。これは理屈じゃなくて、理屈もきちんと覚えなければいけませんが、体で覚えるというところまでいきませんと、一瞬の迷いが大変なことになると思っています。
 そのことを認識しながら、委員の御指摘も踏まえまして、今後さらにきちんとした対応、相なるべくは万全というものを目指してやってまいりたいと思っております。
小野寺委員 今回派遣される自衛隊、派遣される予定の自衛官の皆さん、本当に誇りを持って、また多くの皆さんがみずから志願してこの任に当たるということを伺っております。
 ですから、私ども国民としましてもぜひ、日の丸をつけて、国際貢献のために、イラクの人道復興支援のために、遠いイラクに家族を日本に残して赴くこの方々の気持ち、それを全面に酌み取りまして、ぜひ誇りを持ってこの活動が最後まで全うされますことを心から御支援申し上げるということを私ども自由民主党としても確認しまして、きょうの質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。
斉藤委員長 次に、西田猛君。
西田委員 自民党の西田猛でございます。
 私は、今の小野寺議員の質問に続きまして、我が国の安全保障をめぐる法制整備の状況などにつきまして、短い時間ですが、御質問いたしたいと存じます。三大臣におかれましては、早朝から大変お疲れさまでございます。ありがとうございます。
 まず、戦後の我が国の憲法、特に第九条と、そしてその後の我が国の安全保障をめぐるいろいろな法制整備の状況の進化と申しますか、この流れを見ておりますと、私は本当に法律をつくる、法制のこれはもう芸術、アートではないかなというふうにまで思う次第でございます。
 これはもう皆さんもよく御存じだと思いますけれども、我が国の戦後、国際平和協力法、平成四年、そして平成十年の国際平和協力法の改正法、そして周辺事態安全確保法、これが平成十一年、そして平成十三年のテロ対策特別法、そして今回の、平成十五年のイラク人道復興支援特別措置法というふうないろいろな、もちろんそのほかの法律もございましたけれども、流れがございます。これらの中において、かつて日本の領空、領土外には一歩も出ることがならない、いかなる目的であれ出ることができないとされていた自衛隊の皆さんが、今国外に出て活動をすることができるようになった、あるいはすることが求められているという状況、そしてその状況を許すようになったこの法制整備の歴史があるのでございます。それらの問題点、それからこれからの展望を語っていただければというふうに思っております。
 まず、個別具体的な問題点から入りたいと思いますが、今回も、サダム・フセイン元大統領が捕捉されましたけれども、例えば、そもそも今回のイラク支援特別措置法に基づきます、我が国は戦闘行為に参加しないというのがもちろん大原則でございますし、しかもイラクの復興のために人道復興支援活動を中心にして活動するということになっておりますが、それに加えまして安全確保支援活動というものもできるようになっております。これは法によれば、イラクの国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために我が国が実施する措置であるというふうになっております。
 そこで、いろいろな概念区分を整理していただきながら、例えばというと仮定の問題には答えられないというふうになるかもしれませんが、いまだにイラク国内においては旧フセイン政権の残党の皆さんとの間において戦闘行為を行っているというふうに、かの地に展開をしている米軍を初めとする各国が戦闘行為を行っているのではないかと評価される場合に、当該我が国の自衛隊が展開したときに、本法に基づいて支援を行えるのかなという点について、まず防衛庁長官からお答えいただけますでしょうか。
石破国務大臣 お答え申し上げます。
 基本的に今アメリカが行っておる掃討作戦というものは、基本的にはでございますが、イラク国内における安全及び安定を回復する活動と思っております。では、イラクにおいて米軍が行っていることで我が国が定義するがところの戦闘行為、すなわち国または国に準ずる組織が行う国際紛争を解決する手段としての組織的、計画的な武力の行使に該当するものがあるか、こう言われますと、これがそうなのだというふうに断定できるだけの根拠を私自身有しておりません。
 つまり、この法律で、委員よく御案内のとおりでございますが、決めておりますのは、我々が行う活動は武力の威嚇、武力の行使に当たるものであってはならないということと、我々がやる活動は非戦闘地域でなければならないということを決めているのであって、日本の一・二倍国土がありますイラクを二つに分けて、はい、ここは戦闘地域、はい、ここは非戦闘地域というような行為を行うことは予定していないのは、委員よく御案内のとおりでございます。
 そういたしますと、理論的には、仮に米軍がやっておることがそのようなものだと仮にいたしましても、我々が行う活動というものが非戦闘地域で行われる、そして武力の行使、武力の威嚇に当たるものでなければ、理論的にはそれは行い得るということなのだろうと私は思っております。
西田委員 今の法制からすると、そのようになるというふうに考えます。
 そこで、よく私たちも耳にすることですけれども、例えば、バグダッドにある日本の大使館を自衛隊もしっかりと防護するべきではないか、あるいは人道復興支援職員として民間人の方がこれからイラクに展開することも考えられますけれども、そういう方たちを、日本の自衛隊もしっかりと邦人を防護するべきではないかなという議論も当然今後出てくると思います。
 この法律に基づけば、そのような大使館あるいは日本人、邦人の防護ということが、展開する自衛隊が可能なのかどうかという点についても、防衛庁長官、お答えいただけますでしょうか。
石破国務大臣 これは、委員御案内のとおり、このイラク特別措置法でもって、大使館の警備あるいは政府職員の警護というものは、この法律に基づく限りはできないということでございます。条文に書いていないことをやっていいなぞということにならないのは、委員よく御案内のとおりでございます。
 そうした場合に、ではあとは立法論としてどうなのだという御議論なんだろうと思います。立法論として、委員冒頭に憲法との関係というお話をなさいました。では、憲法第九条からそのような活動は一切できないという結論が論理的にそのまま出てくるかといえば、これは多くの御議論のあるところなのだろうと私は思っております。
 すなわち、憲法九条が禁じているのは、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇、武力の行使は行わないということ、そしてまた、国または国に準ずる組織というものがそういうような活動を行っている場合に、我々がそれと一体化したというような評価を受けてはならないというために、非戦闘地域という概念を二重に設けておるわけでございます。
 そういたしますと、立法論の問題として、それが明らかに国または国に準ずる組織でないというような場合に、そのようなことはできないのかと言われた場合、従来からもこれは政府が答弁申し上げていることでございますけれども、そういうのが本当に明らかであった場合には、それは憲法上必ずしも全く許されないというわけではない。しかし、そこを法の技術としてどのように条文を書くのかということになりますと、これは、私どもとしてもいろいろな考え方があるのだろうと思っております。その点につきましては、本当に国会における御議論を踏まえまして私どもとしても勉強してまいりたい。
 その必要性があるというような世の中の御議論がある、御意見があるということはよく存じております。ですから、法律に書いていないことはできないんだというような切って捨てたようなことを私は申し上げるつもりはございません。ただ、これを条文に起こした場合にどのような条文になるのかということが、私自身、まだ答えを出しあぐねておるところでございます。
西田委員 我が国の安全保障ないし国際平和に関する根幹をなすような御答弁をいただきまして、そして、それを踏まえましてさらにお尋ねしたいのですけれども、今回のイラク特措法に基づく自衛隊の派遣についても、国民の皆様方の中にいろいろな概念の混同が見られるというふうに私も思います。
 そこで、ここで一つ整理を大臣の方からしていただきたいと思うのですけれども、私自身が整理するところによりますと、我が国の安全保障をめぐる法制整備、専ら自衛隊を日本の領土外に展開するという法制の中で、やはり二本流れがあるのではないかなと。特に、周辺事態への対応の流れとそして国際社会の平和と安定に対する流れというふうに二本あって、これをまず整理しておかなければいけない。
 そして、今回のイラク特措法は、とりもなおさず国際社会の平和と安定に対する我が国の責務を果たすものであるという流れでございますよということは、はっきりと国民の皆さんの前に何度も何度も提示をしておかなければいけないと思います。
 もちろん、軍備の、武力の行使はもうしない、これはもう行わないというのが大前提ですけれども、特に、国際社会の平和と安定のためにこの法律ができて、そして自衛隊が派遣されるのだということだと思うのですね。
 その意味においては、平成十一年の周辺事態安全確保法や平成十二年の船舶検査活動法とは、私自身の整理によれば一線を画するものであるというふうに整理をしておいた方がいいと思いますが、ただ、自衛隊法という切り口を見れば、実に、これまた驚くべきことではありますけれども、今申し上げたすべての法律は全部いわゆる付随的業務になっているわけですね、これはもう自衛隊法上によれば。ここらあたりが国民の皆様にとっては非常にわかりにくいことだと思うのです。
 周辺事態確保という非常に大切な、我が国の直接の安全保障にかかわる問題のことも付随的業務だし、そして、国際社会の平和と安定、これももちろん我が国の安全保障に直接かかわる大変な問題ですけれども、それも全部自衛隊法によれば付随的業務であるというふうな仕切りがなされているわけです。これはもう、私は、法律を読めばそう思いますし、恐らくそういうことなんだと思うのです。
 したがって、これらのことをこれからきっちりと整理をしていかなければならないのではないかというふうに思うのですが、まず、官房長官、恐縮ですけれども、今回の国際平和協力に関する総括をされる立場から、今後とも我が国が国際社会に対する平和と安定に責務を果たしていかなければいけないという中で、憲法を含めた法制整備をいかになしていったらいいかということについてお答えいただきたいと思います。
 それから、一つ、これは外務大臣に対しても、お尋ねではありませんけれども、申し上げておきたいのは、よく貢献という言葉が政府側から出てくるのですけれども、もちろん国連決議の中で貢献という用語が出てきますから、それを引いての言葉遣いだとは思うのですけれども、私は、今回のイラク問題についても、これは我が国は貢献ではないと思います。まるで、自分には関係ないけれども何かしてあげるというふうな非常に第三者的なことではなくて、石油の問題にいたしましても、我が国はこれはもういわばステークホルダーというか利害関係人ですから、ぜひ我が国は責務を果たすという立場で、私の今の話について、まず官房長官からお話をいただければと思います。
福田国務大臣 委員から今おっしゃられたとおり、これはまさに我が国の国益からの判断でもって、今回の法律に基づいて自衛隊並びに文民を派遣しよう、こういう枠組みになっておるわけでございます。
 こういうことはどういうことか。それは、我が国が国際社会の中でどういう立場にあるべきか、こういうこともありますけれども、しかし、それと同時に、現実の問題として、イラクの混乱は中東の混乱である、中東の混乱は我が国の経済にも直接打撃を与える問題である、そればかりでなく、テロとかいったような温床化するようなことを防ぐ、こういうような観点からも、我が国のまさに国益であるというように考えてこの課題に取り組んでいるというところでございます。
 そしてまた、こういうような我が国の対外的ないわゆる貢献というものは、これはすべて私は国益だというふうに考えております。我が国の国益を考えた上でさまざまな貢献をしているというのが今の実態でございまして、PKO活動というのはまさにそのためであるというように私どもは認識しているわけでございます。
 そして、このことは、今後も同様に、また、その枠を広げて国際平和のためにという枠組みの中であれば、これは私はかなりの活動が今後できるのではないか、また、そういうようなことに向けて法制の整備をするということも必要ではなかろうか、こう思っておりまして、国際平和協力のための懇談会というものも昨年開催しまして、その提言を受けております。そして、今その検討を開始いたしておりますけれども、来年中じっくりと国会でも御議論いただいた上で、この法制整備を進めていきたい、そのように考えているところでございます。
西田委員 ありがとうございます。
 実は、私自身、平成四年の国際平和協力法ができて、自衛隊の皆さんが日本の外で国際平和協力業務に従事することができるようになる前の、我が国で初めての組織的なPKOへの活動参加として、アフリカのナミビアに二十七名の文民の方を連れて行ったんですね。これは、二十一名の地方公務員の皆さんと、それから六名の国家公務員の皆さんで、選挙監視を中心に行ったんです。非常に私たちとしてはつらい立場、活動の内容ではありましたけれども、一生懸命やってきたつもりでございました。
 その後、こういう国際平和協力法ができて自衛隊の皆さんが行っていただけるようになったということでございまして、その後の法律の流れは、私にとっても非常に、先ほど冒頭、法の芸術だなというふうに申し上げた、ということは非常に、何と申しますか、技術に陥っている感がある、もっと骨太な議論で憲法を含めた根本的な話をしていかなければならない時期に今我が国は来ているのではないかなというふうに思うのでございますが、そのあたりのことを含めて、防衛庁長官、お話しいただけますでしょうか。
石破国務大臣 先生御指摘のとおり、こういう場合は自衛隊法でいうと百条系列というものでやっているわけですね。本来任務ではないということになっているわけです。これから先もそれでいいのかという御議論はPKOの議論のときにもありましたが、これを本来任務化しなきゃいけないんじゃないの、こういうお話がありました。
 ところが、問題は、ではそれだけの能力が我々にあるのだろうか。つまり、我が国の平和と独立も守らなければいけない、その状況が、四面環海、全部静穏かといえば、それはそうではないかもしれない。その中で海外の任務も本来任務化とした場合に、では我々はどうなるんだろうか。
 テロ特のときにも、では自衛隊はそんなに余裕あるのかいというような御質問をいただいたことがありました。余裕なんかございません。本当に、一年に三回も出るようなぎりぎり厳しい中にあって、休みもとれないような中にあって、ぎりぎりいっぱいやってここまでなんでございます。そこをどのように考えていくかということもあわせて、そして、委員御指摘の憲法との問題もあわせて、委員の表現をかりれば骨太の議論をしていきたい。
 自衛隊の能力というものにも、それは当然人間の営みでございますから、限りはあるのです。では、そこをどのようにして配分をしていくのかということは、これはもう国全体でお考えをいただくべきものであります。私どもは、命があればそれにきちんと従うのが務めであります。しかしながら、全体をどう見渡して、どのような能力を与え、どのような任務を与えるべきかということを、また委員の御指導もいただきながら私どもも考えてまいりたいと思っております。
西田委員 それではこれで質問を終わりますが、これからも自民党そして国会で、骨太な、そして国民の利益になる議論をしていきたいと思います。
 終わります。
斉藤委員長 次に、遠藤乙彦君。
遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。
 三大臣におかれましては、朝早くから御苦労さまでございます。
 冒頭、質問に先立ち、イラク復興支援に尽力をされ、殉職をされた奥大使並びに井ノ上書記官の果たされた、道半ばとはいえ大きな功績をたたえるとともに、お二人の御遺族に心からお悔やみを申し上げるものでございます。
 さて、昨日、サダム・フセイン元大統領の拘束というビッグニュースが飛び込んでまいりました。これによって今後、治安情勢が収束に向かうことを期待するものでありますが、なかなか必ずしも状況は予断を許さないものがありまして、とりあえずの分析、評価につきましては既に御答弁があったわけでありますので、私はもう一つ別の角度からお聞きしたいと思っております。
 それは、サダム・フセイン元大統領の裁判の問題でございます。多分この問題は今後最も大きなテーマになると思われますので、どういう容疑でだれがどこで裁くのかということは今後の大きなテーマになり、また、今後のイラク復興支援問題全体にかかわる重要な影響を与えるものと思われます。これについて、昨日、ブレア・イギリスの首相は、イラク人の手によって裁くべきだとの態度を表明したわけでありますけれども、日本の場合はどうなのか、また、その考えがあれば、イニシアチブをとる用意はあるのか、まずこの点につきましてお聞きしたいと思います。これは外務大臣ですかね。
川口国務大臣 おっしゃるように、裁判の問題ということはこれからの問題になっていくと思います。
 今の時点では、これはいろいろな意見があるわけでして、サンチェス司令官が記者会見をいたしましたときに、これについては今まだ何も決まっていない、今後検討されていくということを言っているわけでございます。それで、今後、関係当局においてサダム・フセイン元大統領に対して尋問が行われていくだろうというふうに思います。その過程で、どういうような処遇を今後していくかということが出てくるんであろうというふうに思います。
 今の時点で、そういう事実関係等々把握をする、まだ始めている状況にございますので、我が国として、どういう形で裁判を行うのが一番適切なのか、そのときに、彼の行ったどういうことについて行うのが適切なのかということについては、まだ申し上げることができない段階でございます。
遠藤(乙)委員 この問題、日本がどういう態度をとるか、これは非常にある意味で重要な影響を持つと思いますので、ぜひとも日本独自の見識を持つことが必要かと私は思っておりますので、ぜひ御検討をいただければと思います。
 次いで、自衛隊派遣の問題。基本計画を決定したわけでございますが、我が公明党の神崎代表も、慎重には慎重を期してということを申し上げたわけでございます。
 特に、国民の目からすれば、人道復興支援のニーズは非常にあることはわかる、また自衛隊でなければできない任務である、自己完結型の能力を持ち、また危険にも対処できる能力を持った自衛隊でなければならないということはよくわかると。
 一番の国民の懸念は、そういったところへ派遣され、任務を行う隊員の安全がどこまで確保できるか、これが最大の関心事でございまして、これが多分今後の派遣の最終決定に対しての最大のポイントだと思うわけでありまして、この点につきまして、これは防衛庁長官にお聞きしたいと思っておりますが、イラクの情勢は予断を許さない、国連ですら今一時退避をしておりまして、国連事務総長の報告によっても、現時点で復帰することは余りにも危険が大きいという判断を示しているわけでありまして、そういった中で、自衛隊を送るかどうかの最終決断が今迫られているわけでございます。
 理論的に言えば、そういったテロに対するためには、テロというのはどうしても脆弱な部分を突いてきますので、やはり自衛隊の側が十分な、切れ目のない抑止力と防御能力を十分に準備できるか、これにかかっているわけでありますが、実際にそれがどこまでできるかということが具体的な問題であると思います。長官も先ほど、あらゆる事態を想定して対処するとお答えになっておりますけれども、具体的に、やはり国民に納得いくように御説明いただきたい。
 例えば、常識的に、テロ攻撃が想定されるのは、部隊の移動中であるとかあるいは作業中、そういったところへ迫撃砲やロケット砲が撃ち込まれる可能性は、非常にこれはあると思います。また、輸送機の離着陸のときに携帯用ミサイルで攻撃をすることはしょっちゅう起こっているわけですから、これにも対処する必要があるかと思っております。
 こういった具体的なケースを含め、手のうちをもちろん見せないことはありますけれども、国民に対して納得できるような、自衛隊の安全確保について御説明いただきたいと思います。
石破国務大臣 手のうちを見せないで具体的にわかるようにというのは、なかなか難しい御質問であります。委員はそのことをすべて御存じの上で御質問いただいておるのだと思いますが。
 結局、委員がおっしゃるように、移動中が危ないんだということ。そしてまた、自爆テロのように抑止力がきかないものに対してどうするのかということ。あるいはそれが、我こそ自爆テロと言って突っ込んでくるようなことはないのでありまして、それは、見た目は本当に普通の市民である、あるいは友好を装っておるのかもしれない、そういうものに対してどう対応するんだ。あるいは、仮に派遣が決まったとして、宿営地をつくった後はそれなりの防御力はあるわけですが、つくっている最中、ここが一番危ないのではないか。そういうようなことを本当に、冗談ではなく、朝から晩まで、土曜日曜なく、実際に赴きます自衛官、そして武器を扱うことに習熟しておる自衛官たちと、この場合はどうだ、この場合はどうだ、この場合はどうだ、すべてのことを検証しながら私どもやらせていただいております。
 例えば、移動中の場合には、それはやはり基本的には前後に警護車両を挟むというようなこともございましょう、そしてまた、防弾能力を高めるということもございましょう、そして、どれだけのスピードで走るのかということもございましょう、そういうこともあわせて考えておるところでございます。
 また、飛行機についてのお尋ねがございました。これはいろいろなところで紹介をされているわけでございますが、私どもが考えられる限りの、相手方が持っておると想定されます武器、その射程、あるいは届きます高さ、それから計算をして、どのような飛び方をすればよいのか、地表面においてどれだけの地域をクリアにすればいいのか、そういうことも含めて、本当にありとあらゆるもの、こういうものは考えられないか、それは、先生御案内のとおり、実際に赴く人たちが一番よく考えております。
 万全ということは世の中にはございません。しかし、その万全に近いものをやりたい。そして、装備だけではない、権限もそうです、訓練もそうです。あわせて、我々は武力の行使に行くわけではない、そして治安維持そのものに行くわけではない、人道支援、そして安全確保支援ということをやるわけです。そのことを幾ら我々がそう思っていたって、相手がそう思わなきゃどうにもならないんじゃないか、こういう御議論があることもよくわかっています。だとすれば、どうやって現地の方々にそれをわかっていただけるか。溶け込む努力もいたしましょう。しかし、そのときにソフトターゲットにならないようにというのは、本当に極めて難しいことだと思っております。そういうことをなし遂げる能力を持っているのも自衛隊ではないのか。だから総理は、自衛隊でなければできないこと、そのようにおっしゃったのではないかと私は思っております。
遠藤(乙)委員 ぜひ徹底した対策をお願いしたいと思っております。
 もう一点、自衛隊の安全確保に関連して、国連安保理のタリバン・アルカイダ制裁委員会というものがありまして、そこの監視グループの報告書が最近出ておりますが、その中で、イラクのテロにおいて生物化学兵器が使われる可能性ありとの報告が出ております。この問題につきましては、準備はありますか。
西川政府参考人 生物化学兵器に備えた対策についてのお尋ねでございますが、内容をつまびらかといいますか明らかにすることは、いわゆる手のうちを見せるということになりますので、詳細なお答えは差し控えさせていただきます。
 ただ、生物化学兵器の検知あるいは防護に必要な装備の携行というものは現在も十二分に検討しているところでございまして、部隊あるいは隊員の安全の確保には最大限の配慮を持って現在やっております。
遠藤(乙)委員 何といっても、自衛隊員の生命の保護、安全確保、最大の国民の関心事項でありますので、念には念を入れ、あらゆる事態を想定して努力をしていただきたいと、この際、強い要望をしておきます。
 そこで、今度、官房長官にお願いしたいんですが、基本計画を決定され、総理はテレビでも会見をされて、力強く説明をされたわけですけれども、国民の九割近くがまだ納得しにくいといういわば世論調査も出ております。
 いろいろな人道復興の必要性、あるいは自衛隊が行かなきゃならない必要性もわかるけれども、なぜこれほどの大きな危険を冒してまでこの時点で行くのかということについては、まだまだ国民の大半は納得できない状況にありまして、どういう具体的な国益がかかっているのか、どうしても避けられない国益がある、それをぜひわかりやすく官房長官の口から御説明をいただきたいと思います。
福田国務大臣 委員のおっしゃるとおり、世論調査をしますと、国民の大方は、なぜ自衛隊が行くのか、こういうことでありますけれども、しかし、最近の世論調査をよく見てみますと、復興支援に協力をした方がいい、そういう意見というのは過半数を占めている、こういうようにも見ております。何もしないでもいいというのは少数派だということでございますので、やはり国民は、このイラクの復興に、日本人として、日本は関与すべきだという考え方、これはしっかりお持ちなんだろうと思います。それはやはり日本の国民の全体を見て、平衡感覚を働かせて、日本のあるべき方向としてそれがいいのだという判断をされているんだろうというように思います。
 問題は、今、このテロの多発するような、そういうような時点においてなぜ自衛隊が行かなければいけないのか、こういう点に絞られてくるんだろうというふうに思います。
 確かに、テロの報道は、テロの部分だけ、イラクの国内においてテロの部分だけを事件として報道するということがありますと、それはもうイラクの国内じゅういつもテロがあるんだというような印象を受ける、そういうことはやむを得ないことだというふうに思っておりますので、私は、国民がそのような状況を見て、危ないところに行かせるべきでない、ひょっとしたら戦争を起こすのではないか、こんなようなことを考えていらっしゃるのではないかと思います。
 そこでもって、政府としては、そういうようなイラクに自衛隊を派遣するということの必要性、これはやはり、今は本当に言えばイラクの国民も苦しんでいるときであり、また、米英を初めとする諸外国、三十数カ国の諸外国も同じ悩みを持って今闘っている最中だ、苦闘しているんだろうというように思います。そういうような悩みをお持ちの中で、我が国がそれをただ見ているということでよろしいかどうかということは一つ考えなきゃいけないことだろうというように思います。
 そして、我が国が派遣される場合には、それは憲法上の制約がございますから、戦争をするようなところには行かない、そしてまた安全もこの法律上、確保していく、こういうようなことを、これを法律にも書いてある。ですから、法律に基づいて粛々とその仕事をしに行く、そういうことであって、決して戦争をしに行くものではないわけで、これはもう当然でございます。また、そういうような予知をされるようなところについてはなるべく活動しないようにしよう、まずは、とりあえずは我が国の憲法、そして法律の範囲でやっていこう、こういう考え方で、この辺については慎重の上にも慎重を期して行動しなければいけないというように思っております。そしてまた、危険が予知されるというようなことがあった場合には、法律上撤退をするというようなこともありますし、それは今後、十分にそういうところを見ながら活動していくということになります。
 いずれにしましても、今支援をしない、復興に対して協力をしないでもって、そしてもっと状況がよくなってからしましょうということで、そういうことでもって我々として気が済むのかどうかという問題もあります。
 ですから、可能な限り早い時期に、また、みんなが苦しんでいるときに協力をするというのが、これがあるべき姿ではないのかな。そういうことによって、国際社会の中においても我が国が一生懸命やっているという姿も見えるし、またイラクの人もそのことはきっと理解してくれるものというように思っております。
遠藤(乙)委員 最大限の説明責任を果たしていただきたいということを要望として申し上げておきます。
 続いて、今度は外務大臣にお聞きしたいんですが、今、自衛隊の派遣問題ばかりにいわば焦点が当たっているような気がしますが、実は、大変危険なイラクのバグダッドにおいて、日本人の民間の外交官が、非武装の外交官が既に任務に当たっており、しかも二人のとうとい犠牲者を出しているという厳しい現実があるわけでございます。こういった自衛隊の問題ももちろん重要でありますけれども、民間の外交官がそういう危険な任務に当たっているということに対して、もっともっといわば国として最大の配慮をすべきじゃないかと私は強く思うわけでございます。
 特に、今大体バグダッド等にある外国の公館の場合には、ほとんど自国の軍隊ないし特殊警察が警護に当たっているのが通常でありまして、それから比べますと、日本の場合、在外警護官制度のもとで若干の強化がされている程度でございまして、相対的に見ると非常に手薄であるということが言えるわけでありまして、まさに絶好のテロのターゲットではないか。テロから見れば、心理的、政治的効果が大きい、そして、かつ脆弱性があるということは最大の実はターゲットになる条件でありまして、そういった条件をすべてそろえているのが今の在バグダッド日本大使館ではないかと思っておりますし、また、アフガニスタンも同じような状況にあると私は思っております。
 私は、個人的には、国連すら今退避している状況にあって、日本の公館といえども一時退避の検討をしてもいいぐらいに思っているわけでありますが、なかなかそうはいかないと思いますので、そのためには、何としても最大の防御態勢、警護態勢をとるということが大事だと思っております。
 そういった意味で、今回のお二人の大変とうとい犠牲という事件を踏まえて、どれほどこのバグダッドの在外公館の警備強化に当たったか、そういうことにつきまして御説明をいただきたいと思います。
川口国務大臣 イラクにいたしましても、アフガニスタンにいたしましても、それから、その他の地域にある公館にいたしましても、この安全を確保するということは、我が国が外交活動をきちんとやっていけるということのために大変に重要なことでございます。
 イラクにおきましては、今回のことがございましたので、といいますか、その前からも十分にいろいろ手配いたしておりましたけれども、さらに警備の強化を行いました。
 こういった情報自体が、国際化、グローバル化している世界のことでございますので、どこかが脆弱であるということであればそこにテロリストの攻撃が集中しかねないという状況でございます。したがって、細かく何をしたということは、恐縮ですが申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、先生がおっしゃられたような意識ということをきちんと持ちまして、我が国は今行えることはすべて行っているということでございます。
 それで、おっしゃったように、ほかの国でやっている、自国の軍隊あるいは特殊警察による警備ということで、これはほかの国がそうやっているということも事実でございます。我が国として中長期的にどういうようなやり方で警備をやるということが一番いいのか、これはそれなりの広がりを持った問題でもございますので、そういった問題意識を持って外務省といたしましては検討を始めたところでございます。
遠藤(乙)委員 今、自衛隊による警護任務を与えろという議論もありますが、私は、国民感情からいっても、また自衛隊本来の任務でもないし、テロ対策は自衛隊の専門でもないので、これはちょっと適切でないと考えておりますが、他方、在外公館警護の抜本的強化の必要性はあるわけでありまして、例えば、そういうテロ対策に特化した専門チームをどう外務省としてつくっていくかということだと思います。
 例えば、外務省の所轄下にでも、現在の在外警護官制度を発展的にさらに拡大して、仮称、例えば外交警備隊のようなものをつくって、機動性のある、かつ専門的なチームをつくって、そういう危険な地域に直ちに対応できる、機動性のある、また国民からも理解の得られやすい、また目的合理的なそういった制度をつくることは必要だと思っておりまして、第二段階で、例えば、現在の警護官制度のもとでできる限りのそういった充実をする、次の段階では、法整備も含めて、そういったものの検討を考えるといったことが日本のイメージにふさわしい防護体制ではないかと思いますが、これにつきまして、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 第二段階としてどのようなやり方で警備を行っていくのか、これについてはいろいろな考え方があると思います。そういったことを幅広く視野に入れまして検討をまさに始めたところでございます。ということでございますので、今の時点で何が一番いいかということの結論を出すにはまだ至っておりません。おっしゃられたようなことも視野に入れて、幅広く検討をいたしたいと思っています。
遠藤(乙)委員 公明党の神崎代表も、政府・与党協議会の場で、在外公館の抜本的警備強化ということを訴えておりますので、官房長官以下、防衛庁長官も含め、ぜひともこの点、御理解を賜り、最大の努力をお願いいたしまして、私の質問にさせていただきます。
 以上で終わります。


2003/12/15

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