1988/03 五月会だより No.39 ホーム主張目次たより目次前へ次へ


野党のリーダーから 日本のニューリーダーへ


明日の江田五月

あなたなら何をさせたいか 「影の内閣」に登場した江田議員
文部大臣・法務大臣・それとも……

 今、新しい、大きなうねりが起こっています。来年夏にも予想される衆参同日選挙に向けて、野党結集の動きが活発になろうとしています。労働界でも、昨年秋に発足した「連合」(全民労連)を軸に、官民一体となった労働戦線の統一が進められています。

 こうした動きは、実は江田五月が早くから主張していたことです。自民党の金権体質、利権誘導型政治をストップさせるには、野党は小異を捨てて大同につかねばなりません。それが真に国民のための政治を実現することにつながるからです。


次代を担う子供達のために

 私達の郷土岡山県は、瀬戸大橋や山陽自動車道開通、新岡山空港開港など、まさに新しい時代に入ろうとしています。21世紀という新しい時代には、それにふさわしい国民、市民が主役の新しい政治が実現されねばなりません。そうした政治を実現できるニューリーダー江田五月議員への期待は、各方面から高まっています。

1987年12月、21世紀クラブ10周年パーティーに顔を揃えた四党首脳。左より、江田社民連代表、永末民社党副委員長、矢野公明党委員長、土井社会党委員長。 江田五月議員への期待・評価がよく現れているものに、21世紀クラブ(代表世話人大内秀明東北大教授ら)が出した影の内閣(シャドーキャビネット)構想があります。影の内閣とは、イギリスの野党が、いつでも政権を引き継げるようにと組閣したもの。野党政権樹立を目指す学者、文化人の政策集団である二一世紀クラブが社会、公明、民社、社民連の野党をもとにした閣僚名簿を作成、話題になったものです。

 それによると、首相は土井たか子社会党委員長。そして江田五月議員は文相になっています。臨教審などの教育改革が議論を呼んでいる折、次代を背負う子供や文化・芸術を育てる役割を担うにふさわしい人物として、江田五月議員が上がったことは、大いに注目されます。

 なお、他の主な顔ぶれをみると、蔵相に矢野絢也(公)、外相・大久保直彦(公)、通産相・大内啓伍(民)、運輸相・塚本三郎(民)、自治相・田川誠一(進歩)、官房長官・山口鶴男(社)――などの各氏となっています。社、公、民、社民連の議席比を基準にしている点は、現実面に配慮しているようです。

公正で筋の通った社会のために

また、ある新聞紙が「おたかさんの初夢」と題して、正月紙面に掲載した夢の土井内閣では、江田五月議員は法相になりました。もちろん、江田五月議員がかつて裁判官だったことを考慮したものです。ちなみに、他の顔ぶれを見ると、文相・広中和歌子(公)、蔵相・矢野絢也(公)、通産相・塚本三郎(民)、厚相・田辺誠(社)――などの各氏です。

 いずれにしても、江田五月議員に対する評価は、非常に高いといえましょう。もちろん、こうした評価は、冒頭でもふれた通り、野党結集を主張した江田五月議員の先見性、そしてその主張の正当性にあることに間違いありません。

連合による新しい政治のために

 野党結集の気運は、昨年秋の「連合」発足を機に盛り上がってきましたが、果たして「影の内閣」が実現される連合政権樹立を目指す動きになるのかどうか、まだ、道程がはっきり見えているわけではありません。各党が「連合」の支持とりつけを競い合ったりすると、結集どころか逆に分裂してしまう恐れもあります。「連合」に対しては自民党でさえ「すりよるのではなく、堂々と抱擁してお付き合いを願いたい」(竹下首相)と、実際はすりよっています。

 一方、「連合」の側の動きですが、竪山会長は「自民党支持基盤の取り込みも積極的に進め、新しい政治勢力の結集に努力する」と特に既成の野党だけを頼りにしている訳ではありません。「連合」は野党にとっては存立基盤を失いかねない危険を抱えているといえます。野党が党利党略で動き、まとまりを欠いては自民党に先を越されかねません。

 野党連合政権が実現するかどうかは、選挙協力をはじめとする野党の協力体制がいかに強力に推進されるかどうか、にかかっています。江田五月議員は、父江田三郎の遺志を受け継いだ時から、野党結集を強く主張しています。確かに、社民連はミニ政党ですが、野党結集の要としての江田五月議員の存在・役割は、非常に大きいのです。

野党のまとめ役として

 「連合」がスタートしてから、共産党を除く社、公、民、社民連の野党四党は野党連合に向けて論議、具体的に動いています。これまでの、社会党−総評、民社党−同盟という支持関係は流動化しつつあり、それにつれて各党とも影響を受けるからです。

 野党連合が急がれることは、かねてから社民連が主張している通りです。しかし、社会党は「非武装中立という憲法の理念」「基本政策目標の堅持」を主張、民社党は「社会党との基本政策の相違」を理由に、基本政策を棚上げした野党連合には否定的です。公明党は「当面する重要課題で結束を」としています。

 もちろん、各党に政策や立場の相違があるのは当然。しかし、それを乗り越えない限り、野党連合への道筋は見えてきません。これから、江田五月議員にかかる「まとめ役」としての比重は大きくなりそうです。

21世紀には働きざかり

 21世紀には、江田五月議員は五十代の後半。政治家としては脂がのりきった時期です。野党のリーダーたちは、世代交代で大きく変わっており、野党連合が実現していれば、江田五月議員はまさにその中核にいるでしょう。

 マスコミでは、自民党のニューリーダーはよく話題になりますが、野党のニューリーダーはほとんど話題になりません。そんな中で、東の横路、西の江田と言われます。社会党出身の横路孝弘北海道知事と江田五月社民連代表が、いかに期待されているかを表しています。つまり、江田五月議員は現在も野党のリーダーであると同時に、今後は野党連合のニューリーダーさらに日本のニューリーダーとしての役割を果たしていくことに違いないでしょう。

 21世紀には、日本には現在よりもっと大きな国際化の波が押し寄せ、「世界の中での日本」という視点を抜きに政治や経済を語ることは出来ないでしょう。そうした時代にふさわしいリーダーとして、江田五月に期待したいものです。


 映画『遠い夜明け』を見た。アッテンボロー監督の作品で、南ア連邦の人種差別政策(アパルトヘイト)と闘う黒人指導者と白人ジャーナリストの友情がテーマだ。浩宮も大変興味を示した事がマスコミにも紹介された話題作だ。

 試写会の後のパーティーで黒人の外交使節の方と話し合ったが、「日本の皆さんには一つの物語だが、私達にはこれが事実なのです」と言われたのが印象的だった。

 今年から日本がその南ア連邦と世界一の貿易相手国になることは確実。年間四十億ドル。日本円に直すと、約五千億円。この取引ゆえに現地では日本人が「名誉白人」とされている。つまり、「あなたは白人ではないので本来『人間扱い』したくないが、商売上人並みに扱ってあげますよ」と言うことだ。これをもし「名誉」な事だと喜んでいるとしたら、とんだお人好しだ。

 東チモール問題を抱えるインドネシアでも、百人以上を国内治安法で拘束しているマレーシアでも、日本はそんなことにはおかまいなしに開発利権を漁っている。これが国際社会の中でのわが国の姿と指摘する声もある。

 先日私の友人(南ア生まれの白人だが、人種差別に反対して国を追い出されニュージーランドに住んでいる)と久し振りに会食をした。彼は「日本はひどい。権威主義的な態度や考え方を、外国にどんどん広めている。南アの差別政策にこぴを売って儲け、経済大国の力を途上国でひけらかしている」と、てきびしい。

 『遠い夜明け』を見た後だけに、胸にずしんと応えた。


政治も組合も連合の時代へ

座談会 政党のワクを乗り越えて

労働界と政界に大きな波紋を巻き起こしている「連合」。その竪山会長が、「総評−社会党、旧同盟−民社党といった従来の協力関係を飛び越えねばならない。政権交代のできる新しい政治勢力は野党四党の再編だけでは難しいだろう。むしろ『連合新党』の結成を進めるべきだ」といった発言(3月3日)をして注目を浴びています。

「連合」について、ここらで理解を深め、考えをまとめておこうといった意味で特集を組んでみました。座談会に出席して下さった方は、いずれも「連合」の中心人物か、研究者です。発言順に、県総評事務局長の渡辺義信さん。県同盟の川淵明さん。県全電通委員長の森本徹磨さん。岡山大学助教授の谷聖美さん。そして、司会は五月会の事務局長で岡山社民連書記長の大亀幸雄です。

対立から統一への潮流

大亀 今日は「連合」について自由に語ってもらいたい。この座談会によって、「連合」に村する深い理解が生まれれば、目的の大部分は達成すると思います。「全日本民間労働組合連合合」(略称「連合」)は昨年十一月に結成されましたが、その経過や意義について、まず渡辺さんから。

渡辺 1967年の「宝樹論文」が契機になりまして、労働戦線の統一ということが議論されるようになった訳ですが、それからというものは、現れては消え消えては現れるで大変でした。それが実を結ぱなかったのは「政党支持」の問題が原因でした。そのネックをのりこえる意味で、「連合」は特定政党との支持、協力関係を結ばない、ということになっています。支持政党は各組合の自主性に任せることになっています。

政治ストに村する総評と同盟さんとの意見の食い違いなどもあったけれど、七〇年代には政策推進労組会議、賃金闘争連結会議などの個別の共闘が進み、それが八〇年代に入って、着実に歩みを進めたと言うのが一応の緯過です。

大亀 川渕さん。約四十年間、対立と抗争を続けてきた労組が、よくもここまで漕ぎつけたと思うのですが。

川渕 結局はネ、日本の政治や経済の仕組みが行き詰まったからだと思います。労働者の要求にしても、一企業内だけでは解決がつかなくなっている。これをなんとかするには、組合もバラバラであっては駄目だ、という自覚ができたことが大きいと思いますよ。

大亀 森本さん。いろいろご苦労なさったと思いますが、どうですか。

森本 ズバリ言えば、経済の低成長下においては、賃金闘争だけでは問題の根本的解決が図れない。労働者の制度的要求を実現させるためにも、一つにまとまって、社会的発言力、存在価値を高めていく他ない。

大亀 総評路線とか同盟路線とか言っていては亀裂を深めることにしかならないので、 「連合」の旗の下に、新しい質の、新しい活動スタイルの労働運動が生まれなければならないという気がしますネ。谷先生いかがですか。

 私の専門とは少し外れるのでポイントを押さえているかどうか分かりませんが、結束の魅力と言いますか、必要性といいますか、そのあたりが未だ一般の組合員によく認識されていないのではないか。組織率の低下も、組合に力があるということになれば、もっと改善されるのではないか。では、その魅力とは何か「組合員のためなら、国民のためなら団結して闘う」ということを、実践で示すことではないかと思いますね。

大亀 谷先生の指摘について、森本さん何かご意見は。

森本 正直言って、今、谷先生がおっしゃったように連合の魅力は何か、という点については、まだ幹部問の意識どまりかもしれない。しかし、「連合」の社会的存在価値は自然に高まっていくと思います。今までは、労働団体はバラバラ、要求もバラバラ、運動もバラバラ。これではどんな要求も通りっこない。これは一般組合員の常識です。政治の次元でも同じでしょうが、バラバラでは迫力がありません。総評型の労働運動の継承でも、同盟路線の継承でもない新しい連合路線が必要なのですネ。そのためには、まず頼りになる組合を結集すること。そのためにも、イデオロギーをひとまずよそに置くこと。そして企業から独立した組合員のための労組という立場を堅持すること。

大亀 渡辺さん、川淵さん、それぞれのお立場からどうぞ

渡辺 やっぱり。産業別に同じような影響を受けるという経済構造ですネ。つまり、所属団体が総評であろうが同盟であろうが、構造的不況になると、企業や組合とは関係なく影響を受ける。賃上げも難しくなる。造船などがいい例です。労働者の要求は支持政党と関係なく日々発生し、組合はこれに対応しなければならない。これに気付いたということじゃないかな。

川渕 日本の労働運動が行き詰まっている大きな原因は、企業内組合ということです。産業別と言っても、非常に企業内に近いのが実態ですから、「連合」が産業別組織に再編されていくと、未組織労働者の組織化も急速に進むと思うネ。

政策提言できる組織に

大亀 「連合」の魅力というか、役割といったものについて川淵さんから。

川渕 連合は一つのシンクタンクの役目をはたさなければならない。政策立案能力を大きくして、国民の期待に応えなければならんわけです。広範な国民の要求を統一した政策提言に、盛り上げて行く。そして、特定政党を動かすなり、行政を動かすなりして、制度改革をかちとる。そこに、国民の期待があるわけだし、労働者の信頼も生まれる。

大亀 だから「連合」が、国民の願望を代表すればするほど、運動も広がりを持って来ると言うわけですネ。渡辺さん、「連合」はどんな問題に力を入れるべきか。どんな将来を展望するのか、お聞きしたいのですが。

渡辺 昨年の経験で言うとネ。売上税廃止・マル優廃止反対運動が大きな成果を上げたのは、労働四団体と全民協の共闘が成立し、それが野党四党と密接な関係をつくり、大いに活動の揚を広げたからです。自民党支持グループの一つであった流通業界とも共闘できたからです。

男女雇用機会均等法にしても、労働時間短縮の問題にしても、これからは統一政策・統一要求にすることが大切です。また、「自然環境を守ろう」といった市民運動と連動することも必要ですネ。

大亀 なる程ネ。さて、森本さん。労働運動は、労働者の要求を真面目に取り上げて運動すれば、必然的に政治に参加してゆかざるを得ない、という面があると思うんですが、どうでしょう。

「連合」の方針によると「政権を担える新しい政治勢力の形成に協力し、政権交代を可能にする健全な譲合制民主主義の実現をめざす」と書かれています。この点についてどのように考えられますか。

森本 私は、ちょっと逆の発想からアプローチしてみたいんですが。連合にシンクタンクを置くことが方針としてあります。これは何故なのかというと、政治の貧弱さというか、だらしなさに繋がっていると思うわけです。本来ならば、政党がしっかりした政策を打ち出して、それに労組が協力をするというのが順序でしょう。ところが政党が、特に野党がガタガタですから、「連合」としても、自ら政策立案に乗り出さぎるをえない。政策を立案・提議することによって支持層を広げる。政治的なインパクトを持つ。そうなれば、極端な言い方かも知れませんが、「連合」がイニシアチブをとって野党の連合再編にも影響力を与えていく事になる。

大亀 「連合」が新しい政治のスタイルをつくる、そういう性格も持っていると理解すれば良いのでしょうか。谷先生、労働組合の統一が先か、政党の再編が先かという議論があるのですが、どうも歴史は労働組合の連合が先というこ
とで進みそうですね。

 そこは余りこだわらないで、どちらでも良いととらえておけばいいのではないですか。うまく行きさえすればいいんですから。ただ、労働組合というのは、本来政治組織ではないということは一応、押さえて置くべきでしょう。組合がその機能を果たしているかどうかが問題とされる場合もありますよ。例えば、雇用の問題です。この前の造船不況の時などは組合が非力だという印象を与えてしまいました。こうした足下の部分をきちっとしておかないと、まさに、足下をすくわれます。

自民党は、シンクタンクみたいなものを持たなくても、官僚組織を抑えているわけだし、これに対抗するには相当な力の蓄積が必要です。先の間接税の動きにしても、共闘の成果は評価しないわけでは無いんですが、国民として、もっと良い代替案がでなかったものかと思うんです。

政策制度要求といっても、自民党の政策審議会に持ち込んで直接取引で済ましてしまうということになりはしないか。そこらあたりは、充分心して掛からないといけない気がしますね。

大亀 シンクタンクということが何度かでていますが、これについてどうですか。

川渕 シンクタンクを持つことの意味はかなり大きい気がします。労働組合自体の政策提言をしていくということが出来ないと、かつての造船不況の時のように組合員をまもりきれなかった轍をまた踏むのではないか。企業には企業の戦略がありますから、それに備えた手を打っていく。われわれもそれに対抗できるだけの提言をしていかないと駄目です。先の見通しが無ければ行くところまで行ってしまいますよ。でも、なんらかの道を開こうというのなら、もっと以前に企業別組合の弱さを克服し、労働運動自体が強い体質と政策提言能力を持っていなくてはと思うんですよ。

県内に十万強の地方連合

大亀 「連合」に対する批判にも少し触れてみたいと思いますが、どうですか。統一労組懇から、やがて自民党と手をむすぶ右翼再編だ、財界べったりだ、との批判がありますが。

渡辺 もう一つ言えば、総評の同盟への屈伏だ、とのPRがあるネ。そういう情緒的ないいかたをして自分たちの同調者を増やそうとしているんですネ。しかし、彼らが主張しているのは次の三つです。(1)財界からの独立(2)企業からの独立(3)政党からの独立。(1)(2)は当たり前のことですが、(3)の政党からの独立については、共産党から独立していないのは自分達だと言うことを自覚して欲しいですネ。(笑い)
 ただ、初めから「連合」を敵視している人が入ってこないからといって、いつまでもそれを待つというわけにはいかないネ。

川渕 統一労組懇に対する見解はまったく同じです。これは少し大胆な見通しかも知れないけれど、自民党対全野党という図式は将来は変化する時期が来ると思うが。

大亀 「連合」に支えられた、幅広い包容力を持った、政治勢力対自民党といった意味でしょうか。

川渕 そうです。野党の単なる算術的合併だけでは、魅力は生まれません。何となく集まるという野党再編では、日本が良くなるわけがない。

大亀 さて、もう一歩進めて。二年後には一千万人を越える大連合が実現するとなると、岡山ではどういう形で発展していくのか。その辺のところを。

森本 中央で「連合」の組織が発足しても今は手足が無いわけです。これがないと地域に根ざした活動が出来ないから、当面は準備会(二月二十七日に結成)をつくろうと云うことになっています。これに県内の組合を広く結集し、来年には十万人強の「地方連合」が出来て行くはずです。

大亀 そうすると、岡山県の政治にあたえる影響も大きくなりますが、政党との関係はどうなるのでしょう。

森本 県内でと言われると言いにくい面もありますが、今までは総評は社会党と、同盟は民社党という枠組みでやってきたのですが、「連合」というのはもっと幅広い支持母体を持つものだから、政党との関係においても、その枠組みを越えるようになるのが自然の成り行きではないか。

「連合」の持つ進路・役割りなり、政策・要求なりと一致する政党であれば手を結ぶ方向に進むのが自然だと思います。

渡辺 これまで、労働戦線の統一がなるべくしてならなかった背景に政党支持の問題があったわけですが、とりわけ地方では、それぞれの組合が身近な議員と関係を深く持っていますから、単純には割り切れないでしょう。しかし、いま問題になっている参議院の定数一人区の協力問題、つまり社会・民社・公明・社民連で連合統一候補を作り、自民党の独占を打ち破ろうという試みについては、ぜひ成功してもらいたい。将来の政党再編に夢が託せるし、何よりも国民の「声」が生かせる。

森本 渡辺さんと意見が違うわけではないんですが、「連合」と政党支持の関係については、発足当初だから、各組合の自主性に任せておくことはやむを得ないが、連合体になった以上は、何時までもバラバラではしょうがないと思うんです。政策的な違いをすり合わせ、路線にしても一定の方向を見出して、どういう政党と、どのような議員と支持協力関係を結んでいくか、煮詰めていくことは必要だと思っています。

参院選も野党の結集で

大亀 谷先生、何か一言。

 地域レベルで言いますと首長選挙と議員選挙では少し違うのですが、先程、川渕さんが言われたように政治構造が変化をすると言うのは面白いと思うんです。全部保守ではどうにもならないし、勿論その逆でも……。国政選挙では革新・中道でも、市町村議員選挙は保守というのが現実ですからネ。労組の役員でもそうですよ。地域の中に生きるということはそうした面もあるということですよ。せっかく、十万人の組織が出来るんですから、資金も豊富でしょうし、その一部でいいから地域の活動家、地方の政治家を育てるのに使って欲しいですネ。長期の保守政権と言うのは「唯我独尊」で国民のためになりませんからねネ。

「連合」が果たすべき役割はその辺りにもあるような気がします。

大亀 「連合」の動向が地方政治に及ぽす影響という観点から、来年の参議院岡山選挙区は重要な意味を持ってくるのではないかと思うんですが。

川渕 はっきり申し上げて、私は二重人格じゃないんで、こちらでケンカしてあちらで仲よくするといったことはできません。選挙と言うものは私も長くやってきましたけれど、どうしても人と人の憎しみを駆り立てるようなことになりがちで、前回のようなことにはしたくない。革新・中道として候補を一本化する、その役割を「連合」が果たす、こうなってほしいですな。こういう時代だからせめて参議院選挙ぐらいは一緒にやりたい。これが率直な気持ちですね。これが土台となって、ここの市会議員はどうしょうとか、あそこの県会議員は一緒にやろうか、そうした動きになっていくよう望みます。

渡辺 少なくとも、自民党二議席独占といった事にだけはならないようにしないと。そのために「連合」がなんらかの役割を果たすことは期待してもらっていいんじゃないかと……。

森本 川渕さんがもう言われたので、結論はそれで良いと思う。岡山が新しい試みを一つやってみる。既成の政党のどこかを「連合」が推薦するといった今までのパターンではなくて、接着剤の役割を果たすような候補を立てること。そして、その議員はどこの政党にも所属しないで、対等な関係をもつ。この動きが全国に連動し、新しい政治の潮流をつくっていく。それをぜひやりたいですネ。明治維新は長州から、政治の革新は岡山から。ですよ。(全員笑い)

 ヨーロッパの例で見ても、政治の世界では連合ということが、国民の意識をよく反映するということがあり得るわけです。岡山県に関して言えば、一年や二年で今までの怨念が簡単に氷解するとも思えませんが、来年の参議院選挙はそうしたものを乗り越える一里塚みたいなものになるだろうし、また、しなくては政治の光明はありません。皆さんのこれからの動きに掛かっているわけですから、私も研究者の目でそれを見つめていたいと思います。

大亀 連合時代の政治とは、それぞれの野党がその特色を生かしながら協力しあい、手をにぎりあうことがその大原則。参議院選挙もその延長線で考えるということでしょうか。今日はどうもありがとうございました。

連 合 Q & A

間〉全日本民間労働組合連合会(略称「連合」)とはどんな団体ですか…。

答・日本の労働運動には、大別して(1)総評(2)同盟(3)中立(4)統一労組懇(共系)の4つの流れがありました。それが従来の対立・抗争を乗り越えて(1)(2)(3)の民間労組が統一されたのが「連合」です。その数は555万人。中心的スローガンは「欧米並の賃金から欧米並の生活へ」です。

問〉民間労組だけでなく、官・民を含むすべての労働者が一緒になったはうが良いと思いますが…。

答・その通りです。いろいろな事情で遅れる組合もありますが、全体の統一は1990年となっています。しかし、総評が一年繰り上げ方針を決定したので、1989年は全的統一が実現し、その数は実に1000万人を越えます。まさに有史以来です。

間〉日本の就労者人口は約5000万人と云われます。まだまだ未組織労働者のはうが圧倒的に多いと思いますが…。

答・その通りです。たしかに組織率はまだ28%弱です。一刻も早く未組織労働者を組織して、働く人々の政治的発言力を強めなければなりません。また全ての労働者が労働三法の保護が受けられるようにしなければなりません。

間〉この世の中には政治的にしか解決できないことがたくさんありますが、「連合」と政治の関係はどうなるのですか…。

答・政治的に解決しなければいけない課題は平和・福祉・環境保護・教育・税金・物価などたくさんあります。たしかに賃金・労働条件の改善は第一義的課題ですが、それだけでは幸せな生活はできません。ですから連合は制度改革には力を入れています。議会制民主主義の発展のためにも、政治の活性化のためにも、社会・公明・民社・社民連の四党が仲良くなることを望んでいるのです。できれば四党はその枠を乗り越えて、新しい政治勢力として発展することを期待しているのです。


新しい労働運動と 『連合新党』

長い分裂に終止符

 わが国の労働運動は、ずい分長い間分裂を繰返してきました。それは、一つには政党の争いが労働運動に持ち込まれたからですが、逆に労働運動の分裂が政党を無意味な抗争に走らせてもいたのです。

 しかしついに昨年十一月二十日、「連合」が結成されてこの不毛な抗争に終止符を打つことになりました。

 長い抗争の歴史を考えれば幹部の決断は大英断ですが、一般の勤労者から見れば、皆立場は同じであって、上の方の分裂がおかしいのです。

社会のあり方の転換

 今、日本の経済のあり方が世界中でやり玉に上っています。外国を向こうに廻して、追いつき追い越せと、打って一丸となって頑張る日本のやり方は、外国から見るのと「敵対的」だとうつるのです。

 連合が、勤労者を犠牲にするこのやり方を拒否して、「欧米なみの生活」と「家庭のしあわせ」を追求することにしたのは、国際的にも正しい選択なのです。今年の春季賃金闘争は、わが国の経済や社会のあり方の基本を変えるためにも、極めて大切です。

 「右翼再編」との批判は、大同団結のため自分たちの党派的主張が弱まるからというもので、いただけませんね。

「連合新党」面目一新

 私は結成大会で、社民連代表として祝辞を述べました。

 「連合がこれから、三つのメッセージを送り続けることを期待します。一つは未来に対するメッセージ。いつまでも過去を引きずってはいけません。二つは国民に対するメッセージ。連合傘下の組合員は国民のごく一部なのです。三つは人間に村するメッセージ。世界には人間扱いされない人たちが大勢いるのです」

 「政党は責任重大。みなさんの決断に応えて、『連合新党』ぐらいの面目一新を果さなければなりません。連合結成は、官民統一まで進む大結集の始まりです。野党も再編成と結集の歩みを速めなければなりません」

 機は熟し、私の責任はますます重大だと思っています。


パーティーにも五月色 新年会から盛りあがる

 正月四日仕事はじめの日の午後、江田五月会・岡山社民連主催の新年パーティーが開かれました。朝からの冷たい雨にもかかわらず、予定を上回る約七百名が参加、新しい年の到来を一緒に喜びました。
 来賓には長野知事、松本市長、秋山長造県社会党委員長、舛田貞三県民社党書記長、貝沼次郎公明党県委員長、県総評の松本議長、県同盟の川淵書記長などの顔触れで、連合時代の幕明けに相応しい挨拶が続きました。一般の参加者が多く、市民に支えられた社民連・五月会らしさが目につく、とは会場の声。
 二部に移ってからは、太鼓、コーラス、カラオケ、ゲームとロイヤルホテルの広いフロアは沸き返り、熱気につつまれました。

新しい政治は 新しい車で

 社民連の宣伝カーが新しくなりました。「めざそう『新党・連合政権』」「生活者の声を政治に」この二つのスローガンが掲げられました。色も鮮やかなグリーン。自然を大切にし、人の心を和ませることが政治の基本だという江田五月の信条をこの色に託しています。

津山で初泳ぎ 神伝流の江田教士

 恒例の神伝流津山游泳会泳ぎ初めが、今年も一月一日神伝流プールで開かれました。
 江田さんは昨年に引き続き今年も参加。大勢の観客が見守る中、中・高生にまじって諸手抜き、片手抜き等を見事に披露。泳ぐ前は「忙しくてしばらく泳いでないからなあ」と言いわけを用意していた江田さんですが、泳ぎ終わってみると、大きな拍手。神伝流八段・教士江田さんもご満悦。「今年も一年この元気でがんばってほしいですねえ」とは見物人の声。(津山発)

大晦日に募金活動 ユニセフに協力して

 「ハンド・イン・ハンド(手と手をつなごう)」ユニセフ(国連児童基金)の呼び掛けに応えたこの訴えは、師走の岡山の街にひぴきわたりました。大晦日の正午から一時までの一時間、天満屋のサテライトスタジオ前で江田五月を中心に募金活動。ボランティアの女子大生や女性、寺田明生市議、橘民義県議も協力。医療の立ち遅れで命を落としている開発途上国の子供たちのために「四五、八七〇」円のお金が集まりました。

かつや会も力強く活動開始

 ベテラン議員の引退表明という、波乱ぶくみの時期参議院選挙ですが、その台風の目といわれている「高原勝哉」の新春パーティが1月10日にひらかれました。参加者およそ800人。勇壮な太鼓あり、くろうとはだしのカラオケありで会場の玉姫殿は盛り上がりました。


新党構想に期待する ― 無党派層を味方に ―

 五月会だより十一月号を有り難く受け取りました。社会・民社・社民連の再統一による新党の実現への江田五月さんの主張と行動に全面的に賛成します。なにとぞ、御奮闘のうえ、新党を実現されますよう心から祈っております。

 今の政治の状況を見ると、有権者の三割から四割が無党派である事実は重要です。これらの人のハートを掴むことができれば、国民の支持を得るに等しい結果となるからです。社会・民社・社民連が再統一して新党を作り、これに公明党との連合が組まれれば、政権奪取の可能性が現実化する。そうなればそこに無党派の国民も雪崩をうって支持をよせるでしょう。江田五月の歩いている道は、国民待望の希望への道といえると思います。今年も期待しています。

牧師・長谷川保(元代議士)


景観としての児島湖と合成洗剤 ― 水の危機を考える ―

 先日、熱気球に乗った。児島湖浄化の運動を進めている仲間と上げたものだったが、早朝の少し霞んだ児島湖を見下ろしていろいろな思い出が胸を過ぎった。

 これだけの淡水湖は日本でも珍しい。しかし、ここに生活排水が流れ込んで、全国でも注目をされる汚れた湖になってしまっている。今、淡水化が取り沙汰されている島根県には「宍道湖をみんなの力で児島湖の二の舞にするな」という看板が立っている。岡山が誇るべき自然が、逆に恥になっている。その最も大きな原因は、水に対する無関心と言うことだろう。

 私は、周りのコンクリートを取り払い児島湖を景観として見直そう、という提案をしている。湖への関心が高まれば、どうしたらそこを汚さないで住むかという思案が働くはずだ。水を汚さず自然の生態系を守るためには合成洗剤を使わないで、石鹸を使った方がよい。これが分かっていて実践できない人でも、自分が使った排水がどこに行くかについてまで関心を持てば、違って来ると思う。

 水に心を向けること、これが「水」の危機を救う第一歩である。

岡山市・太田恵介


火事見舞い御礼

 1月22日の火災に際しては、大変ご心配をお掛けし、また過分なお見舞いまで頂き、本当に有難うございました。紙面を借りてお詫びと御礼申し上げます。

  五月会事務局長 大亀幸雄


編集後記

◎西信男名編集長が東京に長期出張となり、ピンチヒッターに立ちました。何といっても初めてのこと、アラが目だったらごめんなさい。(は)

◎元社会党代議士で、全国に先駆けて「ホスピス」を作った長谷川保氏から原稿が届きました。かつて氏の「夜も昼のように輝く」という著書を読んで感激していた私は、格別の感慨がありました (Y)

◎県内の労働界のVIPを集めての連合座談会。日程の調整には大変苦労しました。しかし、読み応えのある記事になったのではないかと自負しています。(よ) 

◎皆さんに呼び掛けた五月会だよりのご購読。さっそく申し込んで下さった方が多いのには事務局一同感謝とともにびっくりしています。 (H)


1988/03 五月会だより No.39 ホーム主張目次たより目次前へ次へ