1982年3月 

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全国選挙対策委員長会議(1982/03/11〜12)

 挙党体制の確立へ


 明年のいわゆる八三年政治決戦は、逆流に戻された日本の政治を大きく転換させる絶好のチャンスだ。社民連もこれに向けて、全党的に各地で候補者の人選、選挙準備に動きはじめている。

 三月十一、十二の両日、全国の各都道府県社民連の選対委員長(担当者)を集め、熱海市・暖海荘で全国選対委員長会議を開催、選挙対策について協議した。とくに統一地方選挙は、社民連の将来を決定する最重要課題だけに、活発な論議、建設的な意見、実際的な提案が行われ、党をあげて政治決戦に勝利する体制づくりを大きく前進させた。


 会議は午後一時半、全国から約三十名が参加して、栗原一郎総務局長司会のもとに開会。まず議事日程が示され、最初に楢崎弥之助書記長が当面の「政治情勢報告」を、続いて阿部昭吾選対委員長(兼組織委員長)が「八三年政治決戦に対する選挙・方針」を提案した。

 また、菅直人副代表から「統一地方選挙に向けて――市民選挙のノウ・ハウ集」の説明が行われた。

 このあと、会議に参加した各都道府県社民連選対委員長(担当者)から、それぞれの選挙準備の実情、候補者の選考状況、地方の政治情勢などについての報告があった。

 報告された都道府県は北海道、岩手、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、新潟、愛知、岐阜、福井、京都、大阪、兵庫、広島、福岡。

 なお岡山社民連よりとくに発言があり、「次の衆院選挙で江田五月副代表が岡山一区から立候補することを決意し、すでに住居も岡山市内に移転、準備をすすめている。全国の皆さんにあらためて報告し、今後の支援と協力をお願いしたい」と要請、その経過を了承した。ただ、この問題の正式な決定は、運営委員会において承認された後であると、楢崎書記長が補足。

 休憩後、書記長報告、選対委員長提案に対し次のような質問や意見が出され、活発な論議が夕刻まで展開された。

 第二日は田英夫代表も出席、論議を最後まで熱心に聞いた。また二月二十八日投票の町田市議選で六千四百四十八票のダントツ新記録トップ当選を果たした古宮とし男氏も会場にかけつけ、全国の仲間を前に、古宮方式市民選挙のノウ・ハウを披露、一同に深い感銘を与えた。

 第一日、第二日を通じての質問、意見、提案などの要旨は次の通り。


一兆円減税要求
―― 一兆円減税闘争の展望について。

楢崎 今回の議長確認の形で決着した与野党合意は、表面の文章を見る限り「玉虫色の収拾」と見られるが、中身は五十七年度で一部、五十九年度で制度改正を行い、課税最低限の引き上げが実現出来るものと確信している。

 しからばその保証はといえば、形の上では衆院大蔵委に小委員会をつくって、そこで検討するということだけが外に出ている。しかし裏面には与野党の口頭了解がある。もし、そういうことは知らないというようなことになれば、今は秘密にしているが、口頭了解の内容を天下に公表する決意だ。

四党関係の修復
―― F4ファントム機問題をめぐって、五十六年度補正予算審議に際し、四党のうち公明党が別行動をとった。四党関係の修復は可能か。

楢埼 残念な事態であったが、感情に走らず結束を固めていきたいと思っている。あのあと、合同国対は修復したので、既定方針通り合同政審会議、合同選対会議が実現するよう、社民連としては四党の結束を強化する方向で、今後もその仲介役をやっていきたい。

衆院解散・総選挙
―― 衆院解散・総選挙の見通しは……。

楢崎 二つの見方がある。一つは六、七月ころに明らかになる五十六年度の歳入欠陥。そうなれば当然五十七年度予算の手直しが必要で、これが一段と厳しくなる景気の動向と共に、重大な政治問題に発展する可能性をもっている。さらに田中元首相の検事論告求刑が六、七月。併せて臨調第二答申がそのころ出てくる。

 従って九月末から十月に予想される臨時国会は、まさに転換の兆しをはらんだ重要なフシ目になる。この臨時国会の前後に、鈴木首相は解散をするのではないかという予測が一部にある。

 もう一つの見方は、七月ごろの全日空ルートの橋本、佐藤両被告に対する判決。クロであれば、佐藤の議員辞職を求める動きが出るし、灰色高官四名の氏名がはっきり出る。そうなれば当然、国会で証人喚問が行われる。さらに田中判決は、いくら引き延しても明年の参院選挙前には出る。

 そうなると参院選挙自体、自民党は不利だから、とても衆参ダブルはやれない。参院選の結果を見た上で、来年の暮か、あるいは任期満了という可能性もある。

 いずれにせよ、本年の九月以降は、いつ解散されてもおかしくないという状況になることを含んで、いざというときに即応出来るだけの準備をすすめてほしい。

参院全国区改正問題
―― 参院全国区制度改正はどうなるか。

阿部 全国区制度改変は、まだ予断を許さない。社会党は当初、自民党案に同調する態度であったが、大会でクレームがついて、独自案を作成し、四月の中央委員会で最終的に決定の段取り。

 社会党案は、修正サン・ラグ方式といって、自民党のドント式より幾分は小会派に有利な方式だが、拘束名簿比例代表制には変わりない。

 われわれはもちろん、両案共反対。公明、民社も絶対反対。新自クは、金のかからない選挙を目指しているということは評価出来るとしているので、しばらく時間をかけて議論したいと言っている。四党選挙協力の問題もあり、新自クとしての配慮はあるものと予測しており、最終的には四党とも、現在の自民党案に反対ということで足並みが揃うと思う。

 しかし、どうしても自社なれ合いで全国区制度改正が通るという事態になった場合は、重大な決断をしなければならない。われわれの選挙のやり方は根本から変えざるを得ず、直ちに全国選対会議を開いて、根本的な選挙方針の立て直しをはかる考えだ。

―― それでは明年改選される田英夫代表の選挙体制をどう進めるのか。

楢崎 それは、この国会で参院全国区制がはっきりしないと方針が立たない。その段階で田選対については相談をしたい。

阿部 当面の段階は、社民連独自の反核・軍縮運動の展開と統一地方選立候補予定者の行動を合わせて、田代表のスケジュールを決めていく。一応、今まで通りの選挙をやる構えで、準備行動をとっていきたい。

四党選挙協力
―― 四党間の選挙協力はどの程度話し合いが進んでいるか。
―― 愛知県の場合、県会は三十一選挙区が一名区。無投票区が十カ所くらいある。一名区は、中央で四党間の話し合いにより統一候補を立てられないか。

楢埼 四党の書記長・幹事長会談を何回か積み重ねてきているが、まず衆院選挙で協力が出来れば、次に参院選挙、さらに地方選挙へと波及する。

 いままでの話としては、(1)ギブ・アンド・テーク、(2)選挙協力の対象は当選可能な候補者、(3)ギブ・アンド・テークが不可能なら、幹部級の応援を約束――これが原則で、まず衆院の空白区三十九選挙区をどうするか、ここから協議に入っていくことになっている。

全国遊説計画
―― 前回の秦選挙のとき遊説キャラバンが大変効果があった。地方選候補者のためにも早急実施をのぞむ。
―― 反核・軍縮キャンペーンの全国行動を早くおろしてもらいたい。

阿部 大まかなスケジュールを至急決めたい。今後、中央、地方でどのように具体的行動を起こすかは、今回の論議を踏まえて計画を立てる。現場からどしどし要求を出してもらいたい。

選挙資金援助
―― 統一地方選に際し、本部の資金援助は可能か。

阿部 本部の財政状態では難しい。そのかわり、各地方組織が自立して資金対策を行う際や、カンパ活動などに、どしどし国会議員を利用してほしい。資金づくりの方法について経験や仕掛けを交流する必要がある。本部としては、どういうやり方、どんな支援、協力が可能か、さらに研究をしていきたい。

自治体政策
―― 統一地方選向けの自治体政策を早く用意してほしい。

阿部 これは政策委員会の問題なので、早急に着手するよう要請する。

候補者研修会
―― 地方選挙立候補予定者の研修会を開催してほしい。主要テーマは、選挙政策、選挙のやり方、資金対策、候補者の心構えなど。そして経験交流も。

阿部 立候補予定者を、なるべく早い機会に一堂に集め、主要テーマについて研修会を開催する。

組織問題
―― 現在の社民連組織は、分権・自治が悪い方に出ている。最低限の組織原則を守る必要がある。組織、運動、機関紙の面でも指導性の発揮がのぞまれる。

阿部 現在、第二委員会で組織、選挙、機関紙、財政、運動の各部門について論議を進め、組織づくりの基本、組織運営の問題点、本部機能などを総点検し、再検討を行っている。社民連の組織原則に立った分権・自治の連合の在り方を確立していきたい。地方社民連からも問題を提起してほしい。お互いにホンネを言って問題解決に当たろう。

政策集・入会申込書
―― 社民連の政策としてまとまった政策集がない。有料でいいから作成すべきだ。
―― “入会のしおり”をつくってもらいたい。「われわれのめざすもの」と若干の基本政策、会員の権利、義務などが明記され、入会勧誘に役立つもの。
―― 入会申込書は、以前に社民連で使ったアンケー卜式のものがよいと思う。

阿部 第二委員会で検討する。ただ、これをつくるとき、本部関係者だけではなく、若い人たちも参加して、新しい感覚をいれたものを作製したい。

機関誌問題
矢野機関紙局長 機関紙の現状を報告する。
(1) 有料部数は、社民連の現有勢力からいえば不十分。全会員必読を進めれば、まだまだ部数は増加する。

(2) 財政的には、個人購読者の増大が最も有効であり、独立採算制実現のためにはこれを伸ばす方向でいく。

(3) 個人購読者を拡大する方法として、本部、県連の役員、地方議員に紹介者カードをあげてもらい、見本紙と講読依頼を送って、読者拡大をはかる。

(4) 組織扱い分の紙代納入が遅れがち。これの改善に取り組むことが緊急の課題だ。

(5) 機関紙の拡大と社民連の全国的運動の広がりを連繋させる。そのため、当分の間紙面で反核・軍縮キャンペーンを続ける。

―― 各地方組織に機関紙の全会員必読体制を実施させるべきだ。また組織扱い分の配布については組織に任せた方がよい。
―― 機関紙拡大について地方組織に対し割り当て方式をとれ。現在、見本紙として配布している無料紙の有料化をはかるべきだ。
―― 労働運動、労働組合関係の記事が少ない。
―― 演説の材料に使えるような、わかりやすい内容の記事を。

矢野 組織扱い分の配布については、各組織の希望に応じている。ここでいう個人購読者とは社民連組織以外の読者のこと。
 部数拡大について、組織割当方式の提案があったが、これをうけ、至急検討して実施していきたい。
 また無料紙を有料化することは是非進めてほしい。その措置をとっていく。
 紙面については、ご意見を尊重して改善につとめたい。

その他
―― 地方議員の研修が不十分。もっと突っ込んだ、具体的内容のある研修会を開いてほしい。
―― セレモニー的な集会だけでなく、社民連組織の実務者会議を頻繁に開き、交流をはかることが必要だ。
―― 社民連の意志決定に、地方組織の声が反映するような方法を。

阿部 この問題は第二委員会で十分検討して、本部と地方組織の連繋を密にしていきたい。社民連の現状から、全部は無理としても、各ブロック集会などを頻繁に開くことにより、それらのことを機能させていきたい。


 二日間にわたって熱心な論議が行われ、最後に田代表が立ち、次のようにあいさつしてしめくくった。

 「建設的な意見が数多く出されて、たいへんうれしい。“軍縮と生活者の党”という社民連のイメージは非常に明確だ。新しい社会を創造する社民連には、うってつけの表現だと思う。

 私は明年の政治決戦のテーマとして、平和度、市民度、環境度、人権度といった人間の尊厳にとって最も重要な度合いがどれだけ満たされているか、しかもそれに誰が、一番真剣に取り組んでいるか、を訴えていこうと考えている。わが社民連こそが、それにふさわしい存在であり、そのことにかけていることを明らかにしていきたい。

 来年の全国区選挙では皆さんにたいへんご迷惑をかけることになる。これからの政治情勢は、どんなことが起こっても不思議がないという、激動の時代だ。そういうなかで、皆さんと共に来年の選挙をたたかっていく。社民連が生き抜いていくための重大な関頭なのだ。

 日本の政治を変えるため、力を合わせてがんばろうではないか」


1983年

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