2001/10/26 |
153 参院・外交防衛委員会
10時過ぎから60分間、福田官房長官と中谷防衛庁長官に一般質疑をしました。
まず福田官房長官に対し、UNHCRに対する寄付について質問。日本の寄付金税制は非常に窮屈です。一緒に知恵を絞ろうと提案しました。次いで、テロ対策について、集団安全保障措置としての位置づけを強調しました。今、歴史の岐路に立っています。しかしそれは、戦時に自衛隊を世界のどこへでも派遣するか、それとも一国平和主義を貫くかの岐路ではありません。積極的国際協調主義の中で、どこまでもアメリカについて行く集団的自衛権の道か、国連を中心とする集団安全保障の道かの岐路なのです。そこを明確にさせないから、国民に、なし崩しでどこへ行くか分からないという不安を与えるのです。
シビリアンコントロールについて。防衛白書を引きながら、主権者である国民が果たす役割が大きいこと、これを阻害してはならないことを質しました。
その後は防衛秘密に集中。中谷長官の一昨日の答弁間違いを指摘し、防衛秘密の垣根を低くすることの重要性を説きました。そして防衛秘密に関し、指定の方法、登録簿の秘密性、実質秘の司法審査、指定解除、標記と通知の関係を質しました。その後、秘密への接近につき、情報公開との関係、共謀の成立に事業者が不可欠であること、教唆でも正犯が想定されない場合は成立しないこと、事業者でない者は漏えい罪の正犯となる余地はないこと、教唆や扇動も具体的危険がなければ成立しないこと、報道の自由、国政調査権、国民の知る権利、シビリアンコントロールとの関係などを質しました。最後に、基本的人権を侵害してはならないことを強調して、終わりました。明確な答弁が得られて、歯止めの出来た部分も多かったと思います。詳細は会議録を見て下さい。
○江田五月君 おはようございます。
衆参にわたる質疑もいよいよ最終盤になってまいりましたが、ひとつ緊張して質問させていただきたいと思います。
まず冒頭、福田官房長官、質問というよりちょっと御相談なんですけれども、一週間ほど前に実は私のところにメールが届いて、経済界の方なんですけれども、こういうことを言われるんですね。企業が難民支援のために国連難民高等弁務官事務所、UNHCRに寄附をしようと、そういうとき、昨年末までは経団連に難民救済民間基金というものがあって非課税措置を受けられたが、これが昨年末店じまいしてしまって非課税の寄附ができなくなった。その人のメール、これ全部読んだら長くなりますが、企業の広報の方とよく話をするんですが、テロ事件、アフガン問題など話題に出るたびに、テロ対策法案よりこっちを先に政治解決してほしいという、それは前後はいいんですけれども、前後の話じゃなくて、国民がみんな今何かしたいと思っているんですよ。
これは、この大変な事件に対して、国ももちろんいろいろやる、しかし国民も何かしたいと。法案反対のために何かしたいとおっしゃる人もいます。しかしそうじゃなくて、難民救援とかそういうことのために何かしたい、できることはないだろうかと思っている人がいるんですよ、いっぱい。
私は、これはやっぱり何か考えなきゃならぬと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(福田康夫君) 御相談いただきましたけれども、大変ありがたい話でございます。
日本では特定公益増進法人と、こういうような制度があります。これは、この法人に認定されますと税制上の優遇措置が認められる、こんなふうなことでございまして、例えばユニセフ協会ですね、日本ユニセフ協会、これは財団法人。それから社団法人のユネスコ協会、日本ユネスコ協会連盟というんですけれども、そういうところが公益増進法人として認められている、こういうことでございます。
例えばUNHCR、これは国際機関なんですね。そして、この国際機関に直接行う寄附については、現行税制上は優遇措置が認められていない、もう御案内のとおりでございますけれども。なぜそういうことになるかといいますと、拠出されました寄附金が公益目的に使われるかどうかという、そこら辺の担保がとれないということ、それから執行上の確認の問題、そういうふうないろいろ問題がございまして公益法人に指定されないというようなことでございます。
ただ、アフガン難民の支援を含め海外の災害救援活動を行っている日本赤十字社、これは特定公益増進法人ということでございますので、ぜひ委員から、そのような申し出のある方々には、アフガン支援ということであればこちらを御紹介いただくと。日本赤十字社でございますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
○江田五月君 そこまでのお答えは、先ほど、財務省を通したらこういう答えになるよというのは聞いておるんですよ。だけれども、せっかく官房長官とこうして直接お話しできるから相談を申し上げたいと言ったわけで、やっぱりそれは国に税金を払います、国が皆から集めた税金で何かします、それもいいけれども、国民一人一人、さらにオンして自分は税金を払いたい、しかしその税金は国を通すんじゃなくて直接UNHCRに出したいという、そういう気持ちもあるんですね。
これは、だから、今すぐ返事をしろと言っても無理でしょうが、ひとつぜひ一緒に知恵を絞りたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(福田康夫君) 以前からそのような案というのはございまして、浮かんでは消え、浮かんでは消えと、こういうふうなことでございます。
こういう機会に、もう一度、今までの議論を踏まえて前向きの検討をすべきであろうと私も思っております。
○江田五月君 ぜひやりましょう。
次に、テロ対策特別措置法について、これも福田官房長官にお伺いをしますが、今回の法案は、私どもさらに修正案をこの参議院でも出したいと思っておりますが、それが入れられない場合には反対と。それは、シビリアンコントロールの大原則に基づいた国会の事前承認、これが得られなかったからということなんですが、しかし私なども、さきの党首会談の場でそういう原則事前承認という修正が実現できていれば、これは賛成しようと思っていたわけです。
いろんな意見がありますけれども、二十一世紀の最初の年に提出された今回の法案というのは、我が国の将来にとっても大きな分岐点となる法案だと。私は、ただ、分岐点というのは従来は、戦時に自衛隊を世界のどの地域へでも後方支援部隊として派遣するようにするのか、それとも九条のもとで一国平和主義を貫くのか、その分岐点だと言われているんですが、そうじゃないだろうと。そうじゃなくて、私たち民主党は、日本が安全保障の分野でも国際社会の共同行動に積極的に参加、協力していくこと、それ自体だめだと言っていないんですよ。安全保障の部分でも日本はいろんなことをやるべきだと、一国平和主義というようなことではなくてですね。ただそのときに、国際社会への共同行動に参加していく、それがアメリカの後方支援部隊としてどこまでもアメリカについていくといういわゆる集団的自衛権の道に行ってはいけないと、こう思っているわけで、国連中心の集団安全保障の道を歩むのか、それともそういう集団安全保障じゃない各国の主権がぶつかり合う道へ行くのか、その分岐点だと、そう思っているわけです。
今回は、福田官房長官、テロ対策法案の提出者として伺うんですが、この法案の位置づけなんですけれども、法的根拠ということで、どうもいまいち踏み込んだ議論になっていないんですが、小泉総理大臣も、この法案は個別的自衛権だ集団的自衛権だという問題じゃないんだと、武力行使をしない、戦闘行為に参加しない、だから国際協力なんだと、こういう言い方で、私もそこまではよろしいと。
ただ、単なる国際協力ではなくて、やっぱりこの法案の最初の題名にも国連憲章など長々とお書きになって、しかも、中にも国連決議もいっぱい書いて、そこまで気を使っていらっしゃるということは、これは提案者として、やっぱりこれは国連を中心とする集団安全保障への道に向けてのステップだと、少なくともその先には集団安全保障というものがあるんだと。そして、それを超えて、何か二十一世紀をテロの応酬の時代、二十一世紀を報復合戦の時代にするようなことは絶対避けなきゃいけないんだという思いがあると。
私は福田長官の心はそこにあると思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(福田康夫君) 今回の法案は、やはり日本国がなし得るものは何かということ、それはもちろん憲法の制約ということはあります、またほかの法令等々がございますでしょう。しかし、大きくはやはり憲法の枠の中というこの大原則があると思うんですね。そういう中でもってなし得ること、これは私は、今回のことは、もしこのテロが起こらなかったらこういうことはしなかっただろうと、こういう法案はできなかっただろうというように思います。要するに、このテロに対応する措置だと、こういうように考える。言ってみれば、憲法の枠の中でこの新しい事態に対応する新しい活動を自衛隊に付与する、こういう趣旨の法案ではないかというように思います。
憲法はいろいろな役割があるわけでありますけれども、これはその時々の情勢、必要度に応じて新しい任務というのは出てくる、そういう可能性は今後もあるんだろうと思います。また別の事件が起こって、そのために対応する、そういう法案をつくらなきゃいかぬということもあるかもしれぬ。しかし、それはあくまでも現行憲法が現行憲法である限りは、これはその枠の中でやらなければいけないというのはこれは当然のことでございますので、そういう前提条件の中において、我々がなし得る新しい任務を今回この法案でやらせていただく、こういう趣旨だと思います。
それは委員もおっしゃられるとおり、また小泉総理も繰り返して言っておりますけれども、これは憲法の枠の中で、ということは特に憲法九条というこの部分の問題に一番深く関係することでありますけれども、武力の行使ということを伴わない、これに一番注意して、今回の法案を作成する場合にも注意を払って考えてきた、そういうことでございます。
○江田五月君 国民の多くが、今回のテロに対して何か対応をする、それについて日本も参加をする、そのことに賛成の人もたくさんいます。しかし、賛成の人も、また同時に、だけれども何か不安だなという気持ちも持っている。
それは何が不安かというと、やっぱりなし崩しでどんどんどこまで行くんだろうかということについての不安なので、だから、そこはそうじゃないですよ、今回のテロへの対応だと。そのテロへの対応も報復じゃないんですよと。報復じゃないんですよというのは、きょう冒頭、総理の不規則発言への返答はこういう意味だといって、いろいろ気を使っていらっしゃる。不規則発言があったから、それでついついかっとしてと言うといけないかな、いや報復戦争なんてだれもやりたくないとかいうような発言が出てくるんじゃなくて、そこはやっぱりもう頭の中にがっちりとたたき込んでおかなきゃいかぬことだと思っていますが、それはいいですね、そこは。
○国務大臣(福田康夫君) この法案をごらんいただければよく御理解いただけるんだろうというふうに思っておって、そういうつもりで提出をさせていただいたということではあるんでありますけれども、まさに委員のおっしゃるとおり、そういうおっしゃる考え方というのは、もうしっかりと頭にたたき込んでおるということだけははっきり申し上げます。
○江田五月君 シビリアンコントロールについて伺います。
私たちは、国会の原則事前承認がシビリアンコントロールに基づく最も重要なポイントだと考えたわけですが、それはおいて、シビリアンコントロールというのは一体何かということ、これを確認しておきたいと思いますが、平成十三年版のいわゆる防衛白書の記載、読んでいただくと長くなるので、こちらで読みます。
「文民統制は、シビリアン・コントロールともいい、民主主義国家における軍事に対する政治優先又は軍事力に対する民主主義的な政治統制を指す。 わが国の場合、終戦までの経緯に対する反省もあり、自衛隊が国民の意思によって整備・運用されることを確保するため、旧憲法下の体制とは全く異なり、以下のような厳格なシビリアン・コントロールの諸制度を採用している。」と、こう言って、国会のこと、内閣のこと、防衛庁のこと、三つの制度をお書きになって、さらに最後のところに、「以上のように、シビリアン・コントロールの制度は整備されているが、それが実を挙げるためには、国民が防衛に対する深い関心をもつとともに、」云々と、こういうことが必要だと、こう書いてあるわけです。
これは中谷長官、これでよろしいですね、防衛白書ですからいいでしょうね。
○国務大臣(中谷元君) 平成十三年度版の防衛白書に書かれておりまして、そのとおりでございます。
○江田五月君 福田官房長官もよろしいですね。
○国務大臣(福田康夫君) 慌てて見ていますけれども、よろしいと思います。
○江田五月君 別にひっかけも何もありませんから。
シビリアンコントロールというのは、国会と内閣と防衛庁とで制度が整備されているが、その根本には「自衛隊が国民の意思によって整備・運用されることを確保する」、国民の意思、シビリアンコントロールが実を上げるためには国民が防衛に関する深い関心を持つことが必要だと。つまり、国民主権だと、国民なんだと。最終的には国民、一人一人の国民がシビリアンコントロールの主体なんだと、こういうことだと思うんですが、そこの核心、これは官房長官も防衛庁長官も揺るぎはないでしょうね。
○国務大臣(中谷元君) シビリアンコントロールというのは文民統制ということで、防衛庁長官とか、最高指揮官は総理大臣でありますけれども、これは文民でなければならないと。
この文民というのは、正当に選挙で選ばれた国会議員でありますけれども、これは民主的な手続で選ばれた国民を代表する国会議員でございますので、そういう意味では国民の代表者がコントロールをしているというふうに私は思っております。
○江田五月君 ちょっと違うんで、国民の代表者と制度上なっている国会とか内閣とかが、あるいはそういうものに根拠を有する防衛庁のシステムが、指揮監督というか監督をしておるというそういう制度上の仕組みの根本に、国民というのがやっぱりシビリアンコントロールの主体なんだと、その意識、その信念、その認識、そこはいいんでしょうねということを言っているんです。
○国務大臣(中谷元君) 委員のおっしゃるとおり、国民の意識に基づくものだというふうに思っております。
○江田五月君 官房長官も同じですよね。
○国務大臣(福田康夫君) はい、同じでございます。
○江田五月君 そこで、きょうは私は自衛隊法改正案、特にその中の防衛秘密に限って質問をいたします。
この自衛隊法改正案については、我が会派は賛成でございます。しかし、いろいろな心配があります。そこで伺うんですが、まず、先ほどもちょっと話に出ていました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、いわゆるミューチュアル・ディフェンス・アグリーメントですか、MDA秘密保護法、この七条には「この法律の適用にあたつては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあつてはならない。」という条文が入っている。これは何か修正によって入ったとかいう話なんですが、今回のこの自衛隊法改正では、なぜこの七条のような規定がないんですか。防衛庁長官。
○政府参考人(首藤新悟君) 今の自衛隊法にも守秘義務を定めた条項があるわけでございますが、それに対しての適用、拡張解釈云々のことは、あるいは国民の基本的人権不当侵害というのは書いてございません。が、いずれにしろ、書かなくても、自衛隊法とかそういった場合に、言ってみれば常識的なことということで書いてないからといって、こういったことが何というか関係ないということは全くないわけでございます。
○江田五月君 書いてないからといって、常識的なことだと言うんだけれども、その常識的なことがちょいちょい怪しくなるから書いてあるんですよね。
防衛庁長官、今回修正しろとまでは言いませんけれども、こういう国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない、これは当たり前のことで、その点は重々注意をされるんでしょうね。
○国務大臣(中谷元君) そのことは日本国憲法にも書かれておりまして、それを遵守するというのは当然のことでございますので、十分注意を払いながら運用してまいりたいというふうに思います。
○江田五月君 これはやっぱりせめて附帯決議ぐらいは、そういうのは入れておいた方がいいと私は思います。
そこで、中谷長官、ちょっと細かなことで恐縮なんですけれども、やっぱり重要なことなので、ぜひこれまでの答弁の訂正をひとつお願いをしておかなきゃならぬと思います。ちょっと、まず何を訂正するかを聞かなきゃ。
一昨日の我が党の榛葉委員の質問に対して中谷長官は、これはまだ未定稿の段階なんですけれども、かぎ括弧で、「さらに報道関係とか国会議員等につきましては、現在においても教唆とかいうことで刑法上の罰則がかかっております。この教唆というのは贈賄とか脅迫といった不法な手段で秘密を知る行為でありまして、これは現在においても刑法で罰せられますけれども、今回は現在行っているもの以上に罰則を規定をするということは盛り込んでおりませんので、現状のままの状態でございます。」と、こうおっしゃって、刑法で正犯に対して従犯がつけ加わっている、それで今回のこの自衛隊法の教唆などは罰せられる、したがって変わっていないんだという、そういう趣旨のように読める答弁をされているんですが、これは間違いですよね。
○国務大臣(中谷元君) もう一度発言をいたしますが、今回の自衛隊法改正案に定める教唆は独立教唆罪として規定しておりまして、正犯者の実行行為の有無、正犯の成否とは無関係にそれ自体が加罰的なものとして規定されております。この規定は、現行の自衛隊法の守秘義務規定に係る教唆、国家公務員法、外務公務員法及び地方公務員法の守秘義務規定に係る教唆、さらにはMDA法、秘密保護法ですね、に規定する教唆と同じ規定でございます。
一方、刑法の総則に定める教唆については、人に犯意を生ぜしめて犯罪を実行させることを言い、正犯に犯罪の実行に着手させなければ処罰されることはないと解するのが通例、通説の立場であります。これは独立罪として規定されていないことから、今般の自衛隊法改正とは異なる犯罪類型となっております。
したがいまして、今般の自衛隊法改正に定める教唆については、現行の自衛隊法等に定める教唆と同様の規定になっているとともに、刑法総則に定める教唆の適用は排除されないことを申し上げた次第でございます。
○江田五月君 まあ余り詰めてもしようがないんですが、このおとといの答弁は、この教唆というのは「現在においても刑法で罰せられますけれども、今回は現在行っているもの以上に罰則を規定をするということは盛り込んでおりませんので、」と書いてあるので、やはりそのときに勘違いをされたのか、あるいはまだ十分知識がなかったのか。間違ったんだと思いますよ、じゃありませんか。
○国務大臣(中谷元君) 発言をしたかった内容は、現在のマスコミ等の活動と今後の活動は全く同じ意味でありまして、現在考えられておる教唆の規定と今後のこの法律ができたに伴う教唆の取り扱いについては同じものであるということを申し述べたかったわけでございます。
○江田五月君 刑法総則の教唆ではなくて、もちろんそれは排除はされませんよ、排除されませんけれども、独立に教唆犯というものを、教唆罪というのをつくっておる。それは自衛隊法、現行の自衛隊法でもあるので、その点では変わっていないと。しかし、罰則は五年にふえていますし、それから業者がありますよね、契約業者。このものに対して教唆をする場合というのは現行の自衛隊法にはありませんから、その部分は広がっていますよね。
変わっていない、変わっていないと一生懸命おっしゃると逆にかえっておかしくなるので、そこはやっぱりちゃんと今回の法律の考え方というものをしっかり認識してお話しになった方がいいと思いますよ。よろしいですね。
○国務大臣(中谷元君) 委員のおっしゃるとおりでございます。
○江田五月君 このおとといの発言の部分は、やっぱりちょっと間違いだと思うので、これは議事録の処置を後ほど理事会においてちゃんとしていただきたい。
○委員長(武見敬三君) 後ほど理事会で精査をさせていただきます。
○江田五月君 さて、本論ですが、中谷長官、今なぜ防衛秘密を指定して秘密保護のための罰則強化が必要なんでしょうか。
○国務大臣(中谷元君) 我々は、以前から国家の安全保障に関しては他に漏らしてはならない秘密があって、それが漏えいすることによって国民生活を不安に陥れるようなことはないようにというふうに考えておりました。そこで、昨年の九月に幹部自衛官による秘密漏えい事件が起こりまして、その反省、教訓を考えますと、やはり国の安全を害しかねないような秘密について罰則を強化することにより秘密の漏えいを未然に防ぐことが大切だと。また、駐在武官との接触の機会もふえるし、また冷戦が終わったということで各国との交流、おつき合いもふえておりまして、この秘密を取り巻く環境も変化をしてきた。また、米国等と各国との情報共有を推進する上でも秘密の保護に万全を期しておくことが必要であるというふうにかんがみまして、慎重に検討をしてまいりまして、今回の国会におきましてこの法律の改正をお願いしている次第でございます。
○江田五月君 私どもの内部でこの法案について検討していたときに、防衛庁の方に来ていただいて説明も聞いたんですが、お隣の佐藤議員が質問されて、立法事実が要るよと、自衛隊員が今綱紀紊乱、もうむちゃくちゃで、こんな自衛隊員はとても幹部では統制できないので国会に頼んでこういう重罰をする必要があると、そうならそうではっきり言いなさいと言ったら、そうは言わなかったんですが、そうじゃないんですか。
○国務大臣(中谷元君) それ以上に、やはりこの防衛庁を預かる責任者といたしまして、そういう機密が外部に漏れるということについては非常に心配に思っております。それに加えまして、過去におきましても三度ほど防衛庁の機密が漏れるという事案がございまして、かねがねこの秘密の保全等についてはしかるべき法の制定、改正が必要であるというふうに思っておりまして、そういう観点で今回お願いしたわけでございます。
○江田五月君 佐藤さんが、中谷さんは部下を信用できないと言っているなと、こう言われていますけれども、どんどん次へ行かなきゃいけないので次へ移ります。
冷戦が終わった、これは天変地異でも何でもないんで、国際社会のいわば人類が一生懸命意欲を持ち、意図して緊張緩和させていこうとして、そして冷戦という恐怖の均衡によるガラス細工の平和を終わりにして本当の平和をつくろうといって冷戦を終わらせたわけです。それは何が一番大きかったかというと、いろいろあると思いますけれども、やっぱりそれぞれの人の努力の中には信頼関係醸成措置というのがあったわけですよね。
例えば、演習だってお互いに見せ合おう。どんな演習しているかについて、演習でも何かあればすぐもう疑心暗鬼になるんじゃなくてというような相互の信頼関係の醸成の努力があって、つまり防衛秘密の垣根はやっぱり低くしていこうというのが世界の平和をつくっていく大きな道筋だった、流れだったと思うんですよね。
ですから、今こういう秘密保護の、これまでは服務規律についての規定はあったけれども、秘密保護罪という規定はなかったわけですよ。それを新たにつくるというわけですからかなり大きな変更ですが、これを我々は賛成はしますが、しかし一方で防衛秘密の垣根は低くしていくことも大切なんだということ、それを中谷長官、わかっていただけますか。
○国務大臣(中谷元君) 軍事面、防衛面での情報公開というのは、おっしゃるとおり平和であることの一つのバロメーターであるというふうには思っておりますが、我が国もこういった情報の公開につきましては努力をいたしております。
ただ、周辺国を眺めてまいりますと、ミリタリー・バランスという英国を中心とした世界各国の軍事情報を集約するところがございますが、中国や北朝鮮に関する軍事情報等はほとんど公開されていないような部分が多くて、世界各国に見ましても、我が国の情報公開というのは群を抜いて公開しているというふうに思っておりまして、こういった各国の情勢等、また軍事情勢等も勘案しながら推進をしていきたいというふうに思っておりますが、基本的にはそういった情報公開という観点で国民の信頼を得ながら、理解を得ながらやっていくということは大切だというふうに思っております。
○江田五月君 そこで、自衛隊法改正案の九十六条関係、防衛秘密の指定について伺います。
先ほどちょっと話がありましたが、現在の防衛庁にある庁秘、秘、極秘、機密、これは定義はあるんですね、防衛局長ですかね、それと数。
○政府参考人(首藤新悟君) 秘密保全に関する訓令に基づきまして指定された秘密いわゆる庁秘におきましては、「「機密」とは、秘密の保全が最高度に必要であつて、その漏えいが国の安全又は利益に重大な損害を与えるおそれのあるもの」、「「極秘」とは、機密につぐ程度の秘密の保全が必要であつて、その漏えいが国の安全又は利益に損害を与えるおそれのあるもの」、「「秘」とは、極秘につぐ程度の秘密の保全が必要であつて、関係職員以外の者に知らせてはならないもの」ということでございまして、それぞれの件数でございますが、機密が約二千二百七十件、極秘、約一万一千三百五十件、秘、約十二万一千四百二十件でございます。
○江田五月君 最高度に秘密で国の安全や利益に重大な損害を与えると。具体的に何かというのはもうちょっと本当は突っ込んでいきたいところですが、時間ありません。
もう一つ、MDA秘密保護法における秘、極秘、機密、この定義、それと数、これはどうですか。
○政府参考人(首藤新悟君) MDA秘密保護法における機密、極秘、秘の定義も基本的にはほぼ同じでございますが、「「機密」とは、秘密の保護が最高度に必要であつて、その漏えいがわが国の安全に対し、特に重大な損害を与えるおそれのあるもの」、「「極秘」とは、秘密の保護が高度に必要であつて、その漏えいがわが国の安全に対し、重大な損害を与えるおそれのあるもの」、「「秘」とは、秘密の保護が必要であつて、機密及び極秘に該当しないもの」という定義になっております。
○江田五月君 数。
○政府参考人(首藤新悟君) 数でございますが、機密はございません。極秘が約六百九十件、秘が八千百七十件、合計で約八千八百六十件でございます。
○江田五月君 情報公開法に言うところの存在秘、あるかないかも秘密というものがありますが、それは今の数の中にあるんですか、ないんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) 一般論といたしまして、これらの秘密文書にかかわります情報公開法に基づく開示請求に対しまして、同法すなわち情報公開法第八条に規定いたします存否応答拒否を行う場合はあり得るところでございますが、ある行政文書につきまして存否応答拒否を行うかどうかの判断はそもそも開示請求の具体的内容によって異なる場合がございますために、存否応答拒否の対象となる秘密文書の件数を一概に申し上げることはできないということになるわけでございます。
○江田五月君 だから、存否応答拒否は情報公開の請求があってそのときに判断するので、今、存否応答拒否情報ですよといってくくって数にしてまとめてあるということはないということですよね。
○政府参考人(首藤新悟君) はい、そういう趣旨でございます。
○江田五月君 そこで、この法案、今回の改正案、これの防衛秘密というのは、現在の極秘と機密、趣旨が違うからもう一遍新たな角度から見直すのでしょうが、おおむね現在の極秘と機密合わせたものぐらいになるというように考えていいんですか。
○国務大臣(中谷元君) 今回の改正の防衛秘密につきましては、現行の守秘義務にかかわる秘密、とりわけ秘密保全に関する訓令に定める秘密、庁秘の中から拾い出すことになりますが、こうした実際の選別作業はこの法案の成立の後になるわけでありますけれども、現行の庁秘のうち、この法律の別表に掲げる項目で我が国の防衛に関するものであれば、おおむね機密、極秘及び秘の中で秘匿度の高いものが防衛秘密に該当するというふうに考えております。
○江田五月君 秘の中にもあるだろうけれども、おおむね機密と極秘のところに結果的になるのではないかというふうに聞きましたが、そんなことでいいですか。
○国務大臣(中谷元君) 現在、そのように考えております。
○江田五月君 標記のつけ方ですが、これは何かもう一件書類といいますか、類別をしてどんと一発、防衛秘密とかでなくて個別の情報ごとに標記をきっちりと仕分けをしながら付していくということでしょうね、確認ですが。
○国務大臣(中谷元君) 現在、行っている庁秘とかMDAに定める秘密と同様にその取り扱いの合理性とか効率性を考えまして、文書ごと、また物件ごとといった一定の単位ごとに行うことを考えております。
○江田五月君 そして、標記を付したら、付したものはやっぱりそれは、こういうものに標記を付しましたというリストぐらいはつくられるんでしょうね。
○国務大臣(中谷元君) 速やかに指定が行われましたら登録簿に登録することといたしております。現行と同じような登録制度を設けることを検討しております。
○江田五月君 その登録簿は防衛秘密ですか。
○国務大臣(中谷元君) これにつきましてその後の取り扱いに関していいますと、情報公開法による開示請求が行われた場合には、不開示情報が記録されているもの、またそのようなものを除き件名は明らかにいたしたいというふうに思っておりまして、この登録簿を防衛秘密にするかどうかについては現在検討中であります。
○江田五月君 登録簿が防衛秘密になるということはないと思いますよね。その秘密の文書のタイトル、そのタイトルの中にちょっと防衛秘密がある場合にはそれはそこをちょっと消せばいいので、登録簿ぐらいのことは明らかにならないと。だって、そこへ行ったら、共謀、教唆、扇動などといって犯罪になるというわけですから、言ってみれば危ないところですから、ここは来ちゃいけないよとかいうのは明らかにしておいてもらわないと、人が歩くのに大変不便でしようがないんで、それくらいの登録簿、これは明らかにするようにやっていただきたい。
それから、通知ですが、これは標記を付す、いずれ防衛秘密になる、しかし事の性質上そこまでまだ手続がとれない場合に通知をすると。どんな方法で通知をするんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) この通知により指定がなされる場合としましては、例えばの例でございますが、自衛隊の作戦行動時などの緊急の場合で文書を作成するいとまがないような場合が挙げられるわけでございまして、この場合、防衛秘密に該当する事項である旨を相手に通知した上で防衛秘密にかかわる事項の命令や伝達を行うことを想定しているわけでございます。
○江田五月君 勘ぐればこんな悪用ができるかなと。漏れちゃったと、これは困った、防衛秘密に指定していなかったんだけれども後から指定したことにしようというので、いや、それは漏れる前に通知をしていたんだよというふうにでっち上げるというようなことがありはせぬかなと心配するんだが、そんなことは断じてないでしょうね。
○国務大臣(中谷元君) そういうことは断じて行いません。
○江田五月君 これ、もしそういうことが起きたら責任問題になりますよ。
○国務大臣(中谷元君) はい。
○江田五月君 防衛局長、朝日新聞のインタビューで、防衛秘密の実質秘性は最終的に司法審査に服すると言われておりますね。で、秘密漏えいの裁判や、あるいは情報公開法の不開示決定に対する不服取り消し訴訟で実質秘性が判断されると、そこで。で、それに服すると、こういう趣旨ですよね。
○政府参考人(首藤新悟君) はい。最終的には司法判断で実質秘が決まるという趣旨でございます。
○江田五月君 司法判断で、これは実質秘ないよと言われたら防衛秘密じゃなくなるんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) その具体的な事態にもよりますが、例えば防衛秘密ではない、ただ普通のいわゆる庁秘にはなるとか、いろんなことがあり得るかと思いますが、少なくとも裁判によって防衛秘でないと判断されれば防衛秘ではなくなるということでございます。
○江田五月君 そうですね。そこは間違ってもらっちゃ困ります。
それで、新聞の記事ですと、防衛局長は、秘密は裁判で公開されるのかという質問に対して、裁判官には見せるけれども、実際には公開しないと思うと、こう答えているように書いてありますが、これはこうお答えになったんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) この部分いろいろな、記事に出ている部分以外もいろいろ申したと記憶しておりますが、その全体の中の一部としてそういう趣旨の発言をしたような気がいたします。
○江田五月君 裁判官に見せる方法がありますか。
○政府参考人(首藤新悟君) この点につきましては、御指摘のとおり、現在の司法制度におきましては、いわゆるインカメラの制度は採用されておらずに、裁判官だけに見せるというような制度はないと承知いたしております。
他方、訴訟における秘密性の立証方法につきましては、昭和四十四年三月十八日の東京高等裁判所の判決では、訴訟法上、秘密扱いの指定、表示のあったことについての立証は容易であっても、それが刑罰による保護に値する実態を備えているものであるかどうかについてはしかく容易ではないと。何となれば、秘密扱いとされたものが公開の法廷に顕出されることによりそれが公表され、一般人に了知されることによって秘密性を失うことになりかねないからである。かかる場合には、それが秘密扱いに指定、表示された必要性、相当性及び秘密扱いの実用などを調査検討して、なおそれが実体的真実発見の場である公判廷に顕出できない相当の理由があると認められるときは、原判示のような方法により、それが刑罰による保護に値する実態を備えるものと認定することも許されると言うべきであるとしておりまして、秘密そのものを公開の法廷に提出しなくてもその秘密性を立証することは可能であるということを示しております。
○江田五月君 長々と答弁いただいてありがたいんですけれども、聞いているのは、この新聞の記事に、裁判官には見せるけれども、とあるけれども、そんな方法はないんですよ。特別にインカメラの手続などがあれば別ですけれども、それでなければ、裁判官は証拠調べ、自分だけ見て当事者に見せずに証拠調べなんてことはできないんですよ。
間違いですね。少なくともあなたがこうおっしゃったかどうかは別として、この記事のこの部分は間違いですね。
○政府参考人(首藤新悟君) 今、御答弁申しましたように、現在の司法制度においてはいわゆるインカメラの制度は採用されていないというようなことからして、あの部分は正確ではないと思います。
○江田五月君 正確ではない。はい、いいです。
ちょっと違うことですが、これは中谷長官、アメリカなんかのように、ある一定年限たったら秘密を解除して、そしてみんなに公開すると。あれはなかなかいいと思うんですが、日本でも考えるべきじゃないでしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(中谷元君) 米国も機密等は取り扱いながら、政府、政府というか国全体としてそのようなルールを設けて運用している面はあるというふうに思っておりますけれども、いわゆる指定を解除すべき年限を一律に定めるということは、現実的に考えてみますと、全部統一するということは困難な面もあるのではないかというふうに思っております。
しかし、御指摘のように、漫然と指定をずっと放置していくということが適当かどうかと言われると、広く国民にそういった情報を提供して理解と協力を得る点も重要であるというふうに思っておりますので、今後検討はしてまいりたいというふうに思っております。
○江田五月君 福田官房長官どうですか。一定年限たったらオープンにするというのは結構いいと思うんですがね。
○国務大臣(福田康夫君) 今までの御議論を伺っておりまして、民主政治をより熟成させるためにも、国民に情報を十分開示するという努力を政府は不断に行っていかなければいけないと思います。政府が漫然と、今、防衛庁長官からも答弁がございましたけれども、漫然と際限なく秘密を持っていていいかどうかということは、これは極めて問題大きいだろうと思います。
しかしながら、そのことを明らかにするということによって、特に防衛庁とかそれから外務省におきましては安全保障という問題がございますので、国家国民の安全を損なうおそれのあるような情報を、それを開示しないといったって、それは公益を損なうことにはならぬだろうというふうに思います。
ですから、それはそういうことを考えながらも、なお、先ほど申しましたように、漫然といつまでもということは、これは必要ないかもしれません。ただ、相手のある、例えば外交上の相手のある場合には、その相手との関係も考慮しなければいけないということもございますので、これはケース・バイ・ケースということも十分あろうかと思っております。
○江田五月君 そのほか、この秘密、防衛秘密の関係についてまだまだ聞きたいことたくさんあるんですが、時間の方がどんどん過ぎていますので、次へ移ります。
次、今度は漏えいの関係、秘密に対するアクセスの関係ですが、この漏えいをしてはならない人というのは法定されていて、それ以外の人が何らかの事由で標記を付された防衛秘密を取得をしたからといって、取得したことが犯罪になったり、その取得した防衛秘密を公にすることが犯罪になったり、それはありませんよね。
○国務大臣(中谷元君) 問題にならないと思います。漏えい罪に問われることはないというふうに思います。
○江田五月君 MDA秘密保護法の方は規定がかなりいろんな規定がありますけれども、こっちの自衛隊法改正案の方は、そこは漏えい罪の主体というのははっきりしていますと。それはもう今のお答えで十分だろうと思います。
次に、共謀とか教唆とか扇動とかということについて伺いますが、正犯とは別に従犯の方を独立して罰する形にしていると、いわゆる独立教唆罪。しかし、共謀はどうですか。共謀は、何か正犯がどこにもないのに身分のない者だけが集まって何か共謀したら、それは共謀になりますか。
○国務大臣(中谷元君) 共謀につきましては、共同謀議関与者の中に謀議の対象とされる違法行為を遂行し得る立場にある者、すなわち防衛秘密を取り扱うことを業務とする者が含まれることを要するか否かによってでありますが、通常はこれを要するというふうに解されます。
○江田五月君 それは、通常と言われますけれども、限定なしで共謀の場合は、その中に正犯たり得る者が入っていなきゃならぬというのは当然だろうと思いますね。
次に、独立ということなんですけれども、それでも正犯がまるで考えられないような教唆というのがあるのか、そう聞かれたらどう答えますか。
○国務大臣(中谷元君) 全く関係ないというケースはどうかということでありますが、教唆及び扇動は正犯たり得るものに対する行為であることから、正犯たり得るものの存在なくして成立するのは想定しがたいというふうに思っておりまして、ちょっと聞いたぐらいで教唆、扇動の罪に問われることにつきましては、そういうことはないというふうに思っております。
○江田五月君 それから、やはり国民の知る権利といいますかシビリアンコントロールといいますか、私が冒頭シビリアンコントロールの重要性を特に強調したのは意味があるわけでして、共謀にしても教唆にしても扇動にしても、正犯となり得るものが想定されていなきゃいけないだけでなくて、その行為自体が、ちょっと教えてよとかいうのじゃやっぱりだめで、その秘密漏えいに至る具体的危険性があるような行為でなければそもそも教唆だとか扇動とかには当たらないんだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(中谷元君) おっしゃるとおり、実質が単なる規律違反としての評価を受けるにすぎないものについては、その行為が、国家公務員法の百十条、これは周りでデモとかを行っている場合、シュプレヒコールで上げて扇動されるようなときに扇動罪に当たるかというケースなんですけれども、国家公務員法の百十条一項十七号の罰則の構成要件に該当しないということはもちろんでありますし、また、この罰則の構成要件に該当する行為であっても具体的事情のいかんによっては法秩序全体の精神に照らして許容されるものと認められるときは刑法上の違法性が阻却されることもあり得るということは言うまでもないとしておりまして、最終的には司法機関の判断によってなされることでありますけれども、おっしゃるような内容は想定はいたしておりません。入るとは想定いたしておりません。
○江田五月君 業者、業務者でない者が防衛秘密にアクセスする。それは、業務者との従犯関係になる場合と、それから今の独立して罰せられる場合とですから、そうすると業務者でない者が防衛秘密を例えば写真撮影する、あるいはビデオで撮る、これを公表すると。これは罪になりますか。なりませんね。
○政府参考人(首藤新悟君) 今おっしゃられました想定がちょっと具体的にわからないわけでございますが、業務者でない者は基本的にその写真撮影とか物を見るとかというような立場には置かれることはないと考えているわけでございます。
○江田五月君 だって、それはわからないですよ。写真撮影の、フリーのカメラマンがいろんなことをやってそれが例えば住居侵入になるとか、それは別ですよ。だけれども、そういうものが一切なくて、化体した物件というものがあるんでしょう、防衛秘密を化体した物件、例えばミサイル。これを写真でどこかで撮ったと。それが秘密漏えいに当たるとかいうことはないですねということです。
○国務大臣(中谷元君) それは、正犯でもありませんし、そういう教唆行為でもなかったら、そういうのはないというふうに思います。
○江田五月君 次に、保護法益の衝突の関係で今の教唆とかそういうものが限定されてくるという場合があるだろうと思うんですが、報道の自由との関係、これはもう今まで議論に出ていますし、それから国政調査権の関係、これも議論に出ていますが、一般の市民の場合、例えば情報公開法による開示請求、これはどう見たって教唆には当たらないと考えていいですか。
○国務大臣(中谷元君) 情報公開法に基づいて防衛秘密について開示請求をすることについては、何ら違法性はないというふうに思います。
○江田五月君 あとは皆さんの方がこれは秘密だから出せないと言えばいいんで、情報公開法でどんどん迫っていくということ、これは市民のシビリアンコントロールであり、知る権利であり、そういうものが制約されるということは絶対あってはいけないと。今、明確にお答えになりましたから、それでいいと思いますが。
次に、自衛隊法改正案の防衛秘密に関する部分は公布後一年を超えない範囲で施行と書いてありますが、これは文字どおりおおむね一年半、一年後に施行ということになるんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) こう書きました理由でございますが、一つには、刑罰法規でございますので周知徹底期間が必要であると。それからもう一つは、防衛秘密の保全に万全を期すとともに、適切な運用を図るため内部的な作業が必要であるということからいたしまして一年を超えない範囲ということにしたわけでございますが、防衛庁としましては、防衛秘密の保全が我が国の防衛上必要であることから、周知徹底期間を十分考慮の上、でき得る限り早期に施行できるように努めてまいりたいと考えているわけでございます。
○江田五月君 ちょっと前に戻って、MDAの秘密保護法では、二条で、「行政機関の長は、」「防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置を講ずる」と。標記を付す、関係者に通知をするというのは必要な措置の一例として挙げているという形になっています。しかし、自衛隊法の改正案では、標記を付すこと、これはもう絶対必要な要件、それにかわるものとしては、性質上それが困難なときに通知をするということで、さらに、九十六条の二の四項で、一項、二項に定めるもののほか、第一項に規定する事項の保護上必要な措置を講ずると、こうなっているんですが、このMDA秘密保護法の規定の仕方と今回の規定の仕方の違いというのはなぜ起きたんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) MDA秘密保護法は、申すまでもなく、アメリカから供与された技術に関する装備品に関する秘密保護でございまして、すべてが防衛庁所管部分とは限らない、防衛庁以外の役所も関係するようなことがあるというようなことがございまして通知とかいったことが書いてございます。
また、今回の改正案は、はっきりと防衛庁長官が指定するということで、実質のみならず形式的にも秘を指定するということでございますが、MDA法では基本的に実質秘主義をとっているというような違いからこのような法律及び今回の改正案における差が出ているわけでございます。
○江田五月君 自衛隊法による場合には形式的にもこの手続が必要、そして同時に実質秘でなきゃいけないと。MDA秘密保護法の方は、実質秘であったら、必要な措置はとるんですが、それでよろしいと、標記が付されなくてもいいと。現実には標記が付されない、MDA秘密保護法に言うところの、改正後ですと特別防衛秘密になりますか、という標記が付されない特別防衛秘密というのはあるんですか。
○政府参考人(首藤新悟君) 現実には、このMDA法自身にも標記を付すというようなことが書いてありますとおり、そういうことはないと存じます。
○江田五月君 時間になりましたが、最後に、くれぐれも冒頭申し上げましたような基本的人権の侵害に当たるようなことのないように、これはもう強くお願いをして、私の質問を終わります。
2001/10/26 |