2000/04/26

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   犯罪被害者基本法案趣旨説明(原稿)

 ただいま議題となりました「犯罪被害者基本法案」につき、発議者を代表して、その趣旨と内容の概要を説明します。

 わが国では、長い間、犯罪被害者等は、二十年前に創設された「犯罪被害者給付金支給制度」以外には、法制度による保護がなく、精神的にも経済的にもいわれなき苦しみを味あわされてきました。最近、特にサリン事件以来、犯罪被害者の置かれている状況が広く世間に認識されるようになり、また、被害者を支援する自主的な組織が各地に設立されるなど、ようやく犯罪被害者の支援について国民的な取組が始まりました。そして、実情が明らかになればなるほど、被害者の悲惨な状況が浮き彫りになってきました。

 刑罰権の行使は、各国とも国家によって独占され、個人による復讐は禁止されています。わが国の刑事司法も、被疑者・被告人には人権を保障しながら、当事者主義の構造で事案の真相を解明し、犯罪者への適正な科刑を実施することになっています。これによって、法秩序の維持を図るという制度のあり方は、十分理由のあることです。しかしこの手続きの中で犯罪被害者等の保護や利益擁護を図ることは、もともと無理がありました。

 このことは国際社会でも問題とされ、一九八五年一一月には国連総会で「国連被害者人権宣言」が採択されました。わが国では、欧米諸国に比べ立ち後れが指摘されてきましたが、今回やっと、政府から「犯罪被害者保護関連二法案」が提出されました。これは確かに、わが国の犯罪被害者対策の第一歩となるものではありますが、やはり公判手続きの手直しに過ぎません。

 犯罪被害者の直面する困難は、精神的・経済的に多面にわたります。これに対応するには、今回の政府案を超えて、刑罰権行使手続きの中での配慮とは別個に、必要な施策を包括的に確立する新しい制度が必要です。その制度の下で、犯罪被害者対策を、国民も政府も一緒になり、また関係省庁の有機的連携の下に、総合的に推進していくことが求められています。そのためには、基本理念や、国や地方公共団体の責務等を明記した基本法を制定することが必要なのです。基本法の制定は、被害者団体、被害者支援団体、そしてこの問題に精通する学者、弁護士らの長年の悲願です。私たちは、犯罪被害者等が、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇が保障されるよう、犯罪被害者等支援対策を総合的に推進し、犯罪被害者等の福祉の増進に寄与するため、ここに「犯罪被害者基本法案」を提出いたしました。

 以下、本法律案の内容の概要につき、ご説明します。

 第一に、この法案は、国と地方公共団体に、「犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務がある」ことを明らかにし、犯罪被害者等の支援対策を総合的に推進し、もって犯罪被害者等の福祉の増進に寄与することを目的としております。

 第二に、基本理念として、「一、すべて犯罪被害者等は個人の尊厳が重んぜられ、犯罪被害の状況等に応じた適切な処遇を受ける権利を有する。二、何人も、犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならない。」との二点を掲げています。

 第三に、国は、総理府に設置される犯罪被害者等支援対策審議会の意見を聴いて、支援の基本計画を定めなければならない、としております。

 第四は、国と地方公共団体の基本的施策についてであります。国は、「相談・指導、給付金・損害賠償についての援助等」「安全及び生活の平穏の確保」「刑事手続に関する適切な取扱い」「関係者に対する訓練及び啓発」「国民に対する教育及び啓発」「調査研究の推進」「民間の団体に対する支援」および「施設等の整備」を行うものとし、地方公共団体は、国の施策に準じた施策およびそれぞれの地域の状況に応じた施策を実施するものとしています。

 さらに、その他所要の規定の整備を行うこととしています。

 以上が、この法律案を提案した趣旨と内容の概要です。何とぞご審議の上、速やかにご可決下さいますよう、お願いいたします。

参考 「犯罪被害者基本法案」を衆議院に提出(04/06)


2000/04/26

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