1993/10/22-    

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衆院・科学技術委員会 3

○臼井委員長 宮路和明君。

○宮路委員 私は、今回のソ連の核廃棄物の海上投棄の問題に関連して若干の質疑をいたしたいと思いますが、最初に、まず事実関係からお尋ねしたいと思うのですが、今回のロシアによる海洋投棄はいつ行われ、そして日本、外務省といいますか、外務省がそれを知ったのはいつ、いかなる方法でこれを承知したか、これは正確なところをまず教えていただきたい。

○林説明員 お答え申し上げます。
 投棄の事実について公式に、正式に我々が承知いたしましたのは、十月十八日、ロシア外務省より在モスクワの日本大使館を通じて、その投棄の事実の確認をする連絡があった際でございます。投棄の内容、投棄の日時につきましては、十月十六日、日本海において九百立米の液体廃棄物を投棄したということでございます。

○宮路委員 十八日の何時ですか。

○林説明員 我々が受けておりますのは、十二時であったと承知しています。

○宮路委員 先ほど、ロシアからIAEAには既に十月五日にファクスで通報がなされておる、そういう長官のお話もございましたですね。そのIAEAから日本へは全く連絡はなかったのでしょうか。

○江田国務大臣 ありませんでした。

○宮路委員 我が国とIAEAとの関係はどういうふうになっておりますか。

○林説明員 我が国はIAEAの締約国でございます。

○宮路委員 調べたところによると、IAEAと我が国は大変密接な、締約国というそんな単純なことじゃなくて、日本は三十億円も年間IAEAに拠出をしている。世界第二位の、アメリカに次いで第二位の拠出国であって、圧倒的なウエートを持って重要なそういうポジションにあるわけですね。そのIAEAから、IAEAは事前に了知しておきながら、何ら日本に対して、こういう非常に致命的な重要性を持ったマターについての連絡もさっぱりと来ない。

 外務省は、IAEAとの接触を保つためウィーンに代表部を設置しておる、そして絶えずIAEAとのコンタクトについては緊密な関係を持っておる、こういうぐあいに聞いておるのですが、その点どうですか。

○林説明員 御指摘のとおり、我が国はウィーンにあります国際機関に対する代表部を持っておりまして、その代表部がIAEAと日常の接触その他をしていることは事実でございます。

 今の御指摘の、IAEAに通告があったのになぜ日本がその通告を受け取らなかったかということでございますが、我々事後的に、ロシア外務省が十月五日付でIAEAに事前通告を行ったという発表がございましたものですから、IAEAの方には照会をいたしました。その結果、御指摘のとおり、十月五日付で通報はIAEAに来ておりました。

 IAEAがどうして日本を含む関係の国にその通報を流さなかったのかということについても、IAEAに照会をいたしました。IAEAの言いぶりは、海洋投棄の関係国への通報については、ロンドン条約上、IMO、これは国際海事機関でございますけれども、国際海事機関が行うべきことになっておって、IAEAは通報の義務を負っていないということが第一でございます。第二は、そういうことがございましたので、ロシアからの通報内容についてIAEAとして技術的見地からの検証を行っていたというのが実情だそうでございまして、そういうことで我が方に対する通報がなかったということでございます。

 これに対しては、我が方からIAEAに対して、そういう事情はあるにしても、これは極めて重要な情報であるということは当然わかるはずなので、こういうことが今後ないように、すなわち、こういう事前通告があった場合には早急に関係国に通報するようにということを申し入れでございます。

○江田国務大臣 もう少しつけ加えて、私の方から。
 なお、今委員御指摘の財政的な関係についても、御指摘のように日本は重要な関係を持っておるということでございまして、IAEAのブリックス事務局長が先日来られましたので、もし必要ならその点つけ加えて御説明申し上げます。

○宮路委員 ちょっと外務省にお聞きしたいものですから。科学技術庁にはまた後ほどお聞きします、持ち時間がなくなってしまいますので。

 今、そういうIAEAのまことに事務的な、機械的な回答を外務省の方からお聞きしたわけでありますけれども、まことにもってはかにされている。もう日本の社会だったら、我々の常識からいうと、そういうことは許されないことだと思うのですね。これほどこの海洋投棄の問題は、ことしの四月の白書の発表以来、国際的にも大変な問題になっている。そういう状況の中で、IAEAはとっくにわかっている、また、IAEAには日本から職員も派遣しておる。金だけじゃないですね、人も派遣してやっておる。そういうようなところから全くこういう情報が入ってこない。日本はIAEAからも、ロシアとの関係はまた後ほど申し上げたいと思うのですが、無視されている存在だ、こう言って私は過言ではないと思うのですが、どうですか。

○林説明員 先ほども申し上げましたとおり、IAEAというのはロンドン条約上のこういう関係での地位を与えられていない機関でございまして、IMOが関係国に対する通報を行うということに条約上なっております。

 それと、IAEAに対する通告の中に、先ほど江田長官からも御指摘がありましたように、IMOに対してもう通告をしているということが入っておりましたので、IAEAとしてはそれを前提に考えたのではないかというふうに我々は考えております。

 そういう意味で、本件についてロシアの事前通告が日本に対してIAEAを通じて行われなかったということが、IAEAが日本を無視しているということでは必ずしもないというふうに我々は考えております。

○宮路委員 外務省は、いろいろと最近の外交情勢が多事多難をきわめているというようなことで、組織の改正、定員の増、いろいろやってきておりますね。局も情報局というのを新しくつくった、総合外交政策局みたいなものもつくった。いろいろと局もつくり、厳しい今日の行政改革の中で定員増は図るわ、組織は拡充するわ、いろいろやっているわけですけれども、さっぱりと、そうした対応というものは十年一日のごとくして全然進歩がない、向上がない、そういうようなのが私どもの率直な気持ちなんですね。先ほどから、グリーンピースとの比較において外務省の情報収集能力はまことにずさんそのものであるというような、そういう御指摘も各委員の先生方からあったわけでありますが、国際機関との関係においても、私は、まさに今回のこの事件によってその辺の能力が問われていると思う。

 そして、先ほど何かIAEAに申し入れをしたというお話がありましたけれども、そんなことでは済まないと思うのですよ。もうちょっとからっとした対応をして、IAEAにこの問題について早急に会議を開かせるとか、そういったことはどうするのでしょうか。

○林説明員 先ほども申し上げましたように、ロンドン条約に基づきまして、低レベルの放射性廃棄物を海洋投棄する場合にはロンドン条約の事務局であるIMOに通告をすることになっておりまして、IMOが関係各国にそれの通告を流すというシステムになっております。

 したがいまして、IAEAが情報を受け取りましたのは、ある意味では原子力関係をやっておる機関としてロシアがIAEAに通報したのだろうと思いますけれども、そういう関係で受けておりますので、我々としては、先ほど申し上げましたように、IAEAがそういうことであっても日本にその通告を流さなかったということについては非常に遺憾に思っておりますけれども、この件についてそういう形で、今先生御指摘のように会議を開くというようなことはいかがかというふうに我々は考えております。

 他方、IMOの方についても、IMOは現在までのところロシアから通告を事前に受け取っていないということを言っておりまして、したがって、IMOはIMOの事務局長からロシア側に、なぜ通告が来ていないのかということの照会は行っているというふうに承知しております。

○宮路委員 どうもすっきりしたものを感じないわけでありますが、とにかくIAEAからもその程度の存在としてしか我が国が評価を受けていないといいましょうか、そういうことではないかと思うのですね。これは、先方がそうであるのは何も先方だけの責任ではないわけでありまして、こちらの方にも、外務省の姿勢にもいろいろと問題があるのではないか、こう私は思うわけであります。

 それは、今度ロシアとの関係になっていくわけでありますが、先ほどもお話がありましたように、この間エリツィン大統領が訪日をされて、東京宣言も随分華々しく打ち出されたわけですね。東京宣言の中でこの問題をはっきりと、「周辺諸国の環境に与える影響の見地から、深刻な懸念を惹起していることを確認するとともにこということで、この海洋投棄が大変な問題であるということを双方が確認し合っているわけです。にもかかわらず、そしてまた、細川総理とエリツィン大統領との会談の中において、この海洋投棄即時停止というか即時禁止というか、そのことも総理の方から訴えているわけですね。そうしたことにもかかわらず、もう二、三日たったらこんなことをやっておるわけであります。

 ですから、全くこれは信頼関係、信義の関係というものを根底から覆すようなことですよね。そうだと思うのですよ。それに対して、ではその後、先ほど十八日の十三時に承知したというわけでありますけれども、外務省を中心とした政府の対応はどうであったかというと、先ほど川島先生あるいは今村先生からも御指摘があったように、まことに手ぬるい、また遅い。

 これは十九日の朝日の夕刊でありますが、十九日の朝日の夕刊を見ますと、十九日の閣議でこの問題が取り上げられて、閣僚からも不満が噴出した。そして、「「首相は国民にみえる措置をとるべきだ」と、毅然とした対応を求める意見が相次いだ。」こういうことが出ているのですね。まさにそのとおりだと思うのですね。総理がさしてエリツィンとこの話をして、そして二、三日後には総理のそうした発言を、あるいは要請を全く無視したことがなされたわけなんですから、本来ですと総理みずからが、外務大臣とかなんかではなくて、総理みずからがこの問題でエリツィンに対して抗議を申し込まなければならない、そういうものじゃないでしょうかね。

 江田長官、もし、江田長官が相手の大臣とこの問題について話をしたのに、それが舌の根も乾くか乾かぬかのうちにもう全く言ったこととは逆なことをやっていた。私だったら、もう断固自分のカウンターパートにやりますよ。そういうことをしないで、何か二回目はやめてくれとか、今後日本側としての協力の可能性を検討する作業部会の早期開催をやりましょうとか、その程度のことしか外務大臣から申し入れていないわけですね。この間話をしたそのことに対して、どうしてこういう信義違反というか信頼関係を損なうことをやるのだ、けしからぬじゃないかということが、まず総理の口からあってしかるべきだと私は思うのですよ。
 その辺、どうでしょうかわ。まず江田長官、そして、後で外務省。

○江田国務大臣 閣議の席でということではなくて、閣僚懇談会でいろいろな話題にはなりましたが、これは閣僚懇談会のことですから、いろいろ御説明という種類のものではないと思っておりますが、まあいろいろな意見がございました。

 確かに、きのうは約束していたのに、何だきょうはという、そういう気持ちを持ちたくなる、それはもうおっしゃるとおりのことだと思います。ただ、ロシアにおける政策決定の方法であるとか、あるいは行政各部にわたる監督がどういう体制になっているのかとか、そのあたりのことがどうも余りはっきりはしていないわけでして、エリツィンけしからぬ、こうエリツィン大統領に個人的に怒りをぶつけてみることが何かの事の解決になるものであるかどうかというところは、ひとつ冷静に考えていかなければいけないのだと思いますが、けしからぬ話であることは、これはもう、おっしゃるまでもなく私もそう思います。

 そこで、とる対応でございますが、これは、いろいろ御不満もあるかと思いますけれども、科学技術庁としては、長官が本部長となっている放射能対策本部、これを最大限機敏に機能をさせたと思っておりまして、ひとつその点は御理解をいただきたい。それから、これから先の対応については、遺憾の意というものは、これは強く表明をしたところでございますが、遺憾の意の表明、怒りの表現というだけで事が前へ進むわけではないので、さらに一層、先ほどもちょっとお話ありましたが、感情、情緒だけでなくて、理性的な対応もとらなければいかぬと思っております。

○林説明員 ロシアによる投棄の事実が明らかになって以降、ロシア側に対してはいろいろなレベルで、極めて遺憾であるということを累次伝えてきております。
 先ほど御指摘の、二十日未明の羽田大臣からコスイレフ外相に対する電話会談で第二回目の投棄中止を強く求めたという点に関しては、その時点で第二回目の投棄が二十日にも行われるかもしれないという発言、報道が流れておりましたので、ぜひともこの二十日の第二回投棄をやめさせなければいけないということで、羽田大臣がコスイレフ外務大臣をつかまえて電話をしたわけでございます。その羽田大臣とコスイレフ外務大臣との電話会談が、中心が第二回目の投棄の中止ということにあったということはそういう事情によるものでございます。

○宮路委員 何も感情の問題として相手に申し入れるということを言っているのじゃないのですよ。両トップによるそういう国際会議をやって、会談をやって、そしてああいうものも東京宣言として打ち出した後、そして、長官おっしゃったように、これから新しい日ロの時代を切り開いていこうという、そういうスタートを切ろうとした直後にこういうことをやっているわけですから、それは何も感情の問題として、しかもこれが国際法にも違反した海洋投棄であるわけですよね。全く違法な海洋投棄である。そういうことを平気でやっているわけですよ。それに対して、我が国としてまさに致命的な重要性を持つこの問題、それに対する対応としていかにも手ぬるい、甘いということを私は申し上げているのですよ。感情を守る観点からではなくて国益を守る観点から、そうした機敏な、また断固たる措置というのをとってしかるべきだ、こう思うわけであります。

 外務省の姿勢が、この問題、非常に手ぬるいということを象徴するかのようなこともあるのですね。これは、十月十九日の同じ朝日の夕刊に、松永信雄政府代表が細川総理と官邸で会って、この問題で意見具申をしたというのですね。どう言ったかというと、かつて日本も核廃棄物の海洋投棄を検討し、周辺国の反対でやめたことがある、日本もそういうことがあったのだ、だから、ロシアに対してけしからぬ、けしからぬと言うだけではいかぬのであって、海洋投棄をしないで済むように手伝うことはないかという観点から対策を考えなければならない。こういうまことに、言語道断といいましょうか、事態の認識を誤った、こういうことをやっていると思うのですが、その点どうでしょうかね、長官。

○江田国務大臣 松永さんかどういう話をされたかというのは、私は新聞の報道しか存じていないわけでございますが、確かに松永さんおっしゃるとおり、これからどういうふうにしたらそれをやめさせることができるのかという観点からの物事の判断ということ、これは私は大切なことだと思っておりまして、松永さんの助言でしたか、そのこと自体が何かピント外れのことだというふうには思っておりません。

○宮路委員 ただ、先ほど来お話があったように、我が国の海洋投棄のことは、これは国際条約に照らして適法なものである、ちゃんと許容された方法での投棄のことを考えて、まあ、周辺国の反対でやめた。そういう問題と、今度の全く国際法規を逸脱したその問題と、同じ次元で松永さんは押さえておるわけですね。まさにそういう認識に立ってこの問題の処理に当たろうという程度なのですよ。

 それで、聞いてみたところ松永さんは、政府代表というのは何かと思ったら、対外経済担当だ、それで外務省の顧問もしておられて、外務省の大先輩らしいのですが、ここにも外務省のこの問題に対する認識の甘さ、また、その取り組みの緩さといいますか、そういうものが象徴的に私は出てきているんじゃないかと思うのですが、外務省どうでしょうか。

○林説明員 江田長官もお答えになりましたように、今回のロシアの海洋投棄というのは、そのこと自体非常に遺憾なことでございまして、御指摘のように、ロンドン条約、その決議に違反する投棄だというふうに我々も考えております。

 ただ他方、江田長官が言われましたように、今後どうするかということについては、第一義的にはロシアの自助努力によるものだというふうには思いますけれども、何か我々の方で協力する範囲があるのかどうか、協力をしたら海洋投棄をやめるということの実現が早く行われるのかどうかという観点の検討も必要だろうというふうには考えております。

 なお、松永政府代表が、我々も報道で承知しているだけでございますけれども、外務省を代表してとか、外務省の意見をということで細川総理のところに行かれたのではないというふうに承知しております。

○宮路委員 そういったことで、この問題に対する我が国政府の取り組みが非常に手ぬるいという事例の一つとして、またもう一つ私は、先ほど放射能の対策本部のことをおっしゃいました。その幹事会が、本部というものはなかなか開かれないで、実質幹事会ということで物事の処理に当たっているようですが、この辺の運営は、長官、どうなっておられますか。

○江田国務大臣 幹事会というものは、私は本部長ということでございまして、本部長のもとに対策本部があるわけですが、実際に物事を動かしていくという観点から幹事会というものが別にあって、これが機動的にいろいろ動いておる。今回の場合でいえば十九日に幹事会が持たれて、そこで二十日海上保安庁の明洋出航、その他のものが十九日に決められた。なおその前、十八日だったかな、幹事会を持つについての事務的な打ち合わせもすぐに担当者によって持たれておって、機動的に動いていると思っております。

○宮路委員 この点、私もちょっと調べてみたんですが、幹事会というのは何か関係省庁の課長クラスで構成しているというのですけれども、その構成状況、それから、その会議がどういう人たちが出席して運営されているかというところを調べてみたところ、外務省はその幹事会に総合外交政策局ですか、そこの軍縮課長というのが構成員になっておるわけですね。ところが、実際軍縮課長が出ているかというとそうじゃなくて、出ているのは、もうその都度その都度入れかわり立ちかわり別なところが出ておって、軍縮課が出ているわけでもない。この問題の所管は、科学原子力課ですかがこの海洋投棄の問題は外務省では当たるということらしいんですけれども、そこは構成メンバーになってない。それで、あるときの会合には出ていることもあるけれども、絶えず出ているわけじゃなくて、ロシア課が出たり経済局の海洋課が出たり、それも担当者が出ているというようなことで、この問題に対する取り組みが本当に外務省として一生懸命やっているという、そういう印象というのは全く受けないわけですね。そして、こういう構成も科学技術庁の全く下のレベルで、適当に何かこの会議も開かれているということで、トップまで物事が上げられてきちっとした対応がされている、本当に各省庁とにかく渾身の努力を傾けてこれに取り組んでいるという様子がさっぱりうかがえない、こういう状況だと思うのですよ、間違いなく。

 だから、そういう中から外務省のこの問題に対する対応も、先ほど松永さんの話も出しましたけれども、まことに認識がもう狂っている、こういうことではないかと思うんですね。この点、どうですか。

○江田国務大臣 せっかくの御注意ですので受けとめておきたいと思うんでございますが、その前に、先ほど私十九日と言いましたが、幹事会をやったのは二十日ですので、この点訂正をさせていただきます。

 幹事会の構成員については、変更の際、対策本部の幹事会にそれぞれ付議して、そこの構成員の了解で構成員の変更を行っているということでございます。確かに、今のところ本部構成員は、外務省については幹事会の構成員については軍縮課長ということなんですけれども、これは実際のところはちょっと古うございまして、空中からの放射性物質の降下、これがずっと問題だったものですから軍縮課長ということになっておるんですが、今現に今回問題になっているのは海洋投棄ですので、そこで原子力課長が出てきて実際の話をした。幹事会というものをより機動的に動かすためには、そういうより適材の人が来ていただいて話をした方がよりいい会議ができるということで今回やったということでございまして、私がそのときに交代を本部長として知っていたというわけではありませんが、しかし、機動的に動いているということについては私は何の疑念も持っておりませんで、後からちゃんとその点は私の方に了知されることになっていると皆さん認識していたものと思っております。

 つけ加えることが何かあれば、外務省の方からお答えいただきましょう。

○林説明員 今、江田長官の方から御答弁がございましたけれども、軍縮課長というのは核実験の関係の担当をしておりますので一応幹事会のメンバーになっておりましたが、海洋投棄の問題につきましては原子力課が担当をいたしておりますし、ロンドン条約については海洋課が担当しているという関係がございまして、その都度の議題に応じて専門のところが出ているというのが現状でございます。

○宮路委員 もう時間が参ったわけでありますが、今そういうお話がございましたけれども、要するに、世の中が変わっているのに組織の方はさっぱり変えてない。そしてまた、今その都度その都度弾力的に対応していると言っていますけれども、出席者のメンバーの顔ぶれなんかを見てみたら、全く、おっしゃるようなそういう趣旨に合致して本当に命がけでこの問題に取り組んでいくぞというような、そういうメンバーでもない。これは率直に言ってそうだと思います。

 いずれにしても、この問題、しかも相手国がロシアという大変な相手でありますから、我が国に与える影響というのは極めて致命的と言ってもいいぐらい大きな影響を与える問題でもあるわけであります。ですから、その辺を十分認識していただいて、これを貴重な体験といいますか反省材料として大いに体制の抜本的強化もやっていただきたいし、また、こうした事態を再び迎えたならば、それこそ先ほど申し上げたように、事の重要性を認識して断固たる外交措置も含めてとっていただくような、そういう姿勢でぜひ臨んでいただきたい。そうでないと国民の不信なり不安というものは解消しないし、また、我が国の国益もこれは守れない、このように思うわけでありますから、その点を強く要請をいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。

○臼井委員長 尾身幸次君。

○尾身委員 最初に、今回ロシアが海洋投棄をいたしました低レベル放射性廃棄物の発生源というものがどういうものであったかについてお伺いをいたします。

○江田国務大臣 発生源は、ロシア政府からは、ロシアが海洋投棄を行っている液体放射性廃棄物はすべて低レベルである、原子力潜水艦等の修理や原子炉の交換等の際に発生するもののほか、原子炉の冷却水等が主な発生源であるというふうに説明を受けております。

○尾身委員 原子炉というのは原子力発電所も含むかどうか、お伺いします。つまり、原子力潜水艦のものなのか原子力発電所のものなのかということを私は聞いているわけで、原子炉関係から出てきたことは間違いないと思うのでありますけれども。

○笹谷政府委員 ただいま大臣からお答えしたとおりでございますが、私が承知している限り、原子力発電所から出た廃棄物はこれに含まれないと思っております。

○尾身委員 そうすると、いわゆる今の低レベル廃棄物、海洋投棄されたものは、大部分が原子力潜水艦関係のものであるというふうに理解してよろしいわけですね。

○江田国務大臣 そういうことだと思います。

○尾身委員 そこで、私どもも大分いろいろな意味で意見を申し上げたのでありますが、その結果として第二回の廃棄が中止をされたわけであります。その中止をされたもの、つまり最初に予定されていた、第一回と第二回に分かれているわけでありますが、その中止をされていたものというのは、投棄をする予定であったものはどんなものであったか、中身についてお伺いします。

○笹谷政府委員 お答えいたします。
 IAEAの通知によりますと、低レベル放射性廃棄物を海洋処分いたします、それを二度に分けて投棄するという内容になっております。第一回目も二回目も、ほぼ、濃度それから量的にも、それぞれ九百立方メーター、二回目が八百立方メーターということで承知しております。

○尾身委員 そこで、とにかく第二回の廃棄が中止をされたわけでありますが、ロシア側は、聞くところによりますと、この廃棄は二回目は中止したけれども、さらにいわゆる低レベルの廃棄をすべきものがどんどんたまるということを言っていると思いますし、これが事実だと思います。

 その点について、ただ中止をしたらそれでいいというものではありません。それについて、一体日本政府は、今後低レベル廃棄物の海洋投棄をしないようにということを言うだけで済むのかどうか。現実的な解決策としては、低レベル放射性廃棄物がたまるものはたまるわけでありますから、その点について日本政府としてどういう対応をお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

○江田国務大臣 最初ロシアの方は、一九九七年か九八年ごろまではこれはやらなければどうしようもないのだ、こんなことを言っていたわけですね。しかし、我が方の強い抗議及び要請を受けて、二度目の投棄は中止をした。中止をしたけれども、中止でこれからずっともうこれで断念ということになるかというと、そうは言っていないわけで、今後、今のままでいけば一年半くらいは大丈夫だけれども、その後はまたやることにならざるを得ないという、そういうこともどうも言ってきているということでございまして、海洋投棄を本当に断念をさせるというためには、これは今の、中止を求めて中止ができた、さあよかったというだけでは済まないということでございます。

 国際的合意あるいは我が国の国民の懸念、こういうものを考えたら、再びこういう海洋投棄をせざるを得ないような状況にならないように、これは第一次的にはロシアが考えることでございますが、我が国としてもそういう努力をしなければならぬ。外交的な努力もあるでしょう、技術的な支援もあるでしょう。財政ということがどうなるのか、いろいろなことをこれから考えていかなければならないわけですが、ロシア側とそういうことまで含めて交渉をしていきたいし、我が国としてどういう技術的な支援の可能性があるのかは、既にもう検討を始めているということでございます。

 技術的な可能性について、もし必要なら詳しく説明させます。

○尾身委員 先ほど、今もおっしゃいましたが、大臣は、外交的はもちろんでありますが、技術的かつ財政的な支援をしなければならないということを、我が同僚議員の質問に対するお答えでされました。その両方について、どういう内容をお考えになっているか、御質問をさせていただきます。

○江田国務大臣 技術的なことについては、私は技術屋じゃないので余り詳しいことはわかりません。蒸発をさせて量を減らすとか、運搬の方法とか、いろいろあるようですが、それは後から答えさせることにして、財政的なことは、しなければならぬと答えたわけではないので、そういうことも含めて検討をすることになるであろう。既に、ロシアの核兵器解体に伴ういろいろな技術支援や何かについて一億ドルということもあるわけですから、そういうものとの関連でどうなるか、これはこれから詰めていく話でございます。
 技術的なことについては、政府委員から答弁させます。

○石田政府委員 技術的な側面につきまして、一言お答え申し上げます。
 液体放射性廃棄物の暫定的な処理でございますけれども、これにつきましては、御承知のように、放射能の部分と水を分けるということが非常に基本的に大事なことでございます。そのためには、例えば液体の放射性廃棄物をイオン交換樹脂を通すことによりまして放射能を取り除くという方法もございます。それから、今大臣がお触れになりましたように、液体の放射性廃棄物を蒸発乾固あるいは蒸発濃縮、いわゆる煮詰めるということでございましょうか、というふうにして分けるということもございます。

 ただ、今お話のありましたように、一年半という数字もあるわけでございますけれども、こういうものを比較的速やかに行う必要もあろうということもあるわけでございます。そういうタイミングをにらみながら、例えば可搬性の、すなわち持ち運びのできるようなそういう設備を持っていくことはどうだろうかということもございますし、それまで時間がもしも余りないとするならば、例えば暫定的な貯蔵施設、これまた例えば船舶によりまして一時貯蔵するということも考えられるわけでございます。

 いずれにいたしましても、そういうことをいろいろ取りまぜまして、私ども技術的に検討をさせていただいているところでございます。

○尾身委員 最初に伺いましたら、今の低レベルの放射性廃棄物は原子力潜水艦から出てきたものであるというお話がございました。そして、この問題を解決するためには、技術的、財政的支援を検討しなければならないというお話がございました。そしてさらに、先ほどのお話の中では、原子力発電所の関係は余り含まれていないようだという話がありました。そうすると、ロシアがしている海洋投棄を現実的にやめさせるためには、ロシアの原子力潜水艦の運航によって出てくるものを日本が技術的、財政的支援をしてやる、そしてそれを処理処分をする手伝いをする、こういうことになるのではないかと思うのでありますが、その点について、大臣のお考えと外務省のお考えをお伺いさせていただきます。

○江田国務大臣 そこが非常に微妙なところだと思いますね。原子力潜水艦の原子炉、そこから出てくる液体廃棄物、この処理を手伝うということによって、日本がロシアの軍事支出の一部分を技術的にあるいは財政的に協力をしていくというような形に仮になるとするならば、これはロシアに対する軍事支援というようなことにもなりかねないというようなこともありますから、そうしたことは、これは日本の国民的立場あるいは国の立場としてやっていいこととは違うと思うのですね。そこで、そのあたりの協力のあり方については、積極性を持つと同時に、どういう枠組みでやるのか、これをいろいろ知恵を絞らなければいけないところだと思っております。

 なお、外務省の方からも答弁お願いします。

○林説明員 御指摘のとおり、我が方がロシアに対して協力することが、いわゆる軍事協力ないしはロシアの軍備増強につながるというようなことになってはならないということは御指摘のとおりでございまして、そういうことにならないような形での協力というものをロシア側とも協議しながら考えていきたいというふうに、我々としては思っております。

○尾身委員 この問題は大変難しい問題でありまして、現実問題として低レベル放射性廃棄物の海洋投棄をやめさせなければならないという要請が一方でありながら、しかし、実際に低レベル放射性廃棄物を出している主体は原子力潜水艦であるという実態があるわけでありまして、これをどう調整するかというのは非常に難しい問題であります。しかし、日本の立場、平和国家としてへ日本の立場をきちっと守りながら、この点については我々も見守ってまいりたいと思いますが、本末転倒のないように、ぜひお願いをしたいと思います。大変難しい問題でありますので、これからのいろいろな形での検討課題に、この点はゆだねたいと思っております。

 そこでもう一つは、放射能対策本部で、先日、海洋投棄をしたところまで行って調査をする、そしてその安全性の確認をする、そのために海上保安庁とかいろいろな機関から船舶を派遣をするということを決定したというふうに聞いているわけでありますが、どういう方式でやるか、その点について簡単に御説明を願います。

○江田国務大臣 これは先ほど、前の委員の質問の際にちょっと御説明しましたが、二十日に放射能対策本部の幹事会を開いて、本件投棄の影響の調査のために、海上保安庁、気象庁、水産庁による海水の採取、分析等、我が国独自の調査の実施を決定をし、具体的には、海上保安庁が測量船の明洋ほか四隻、気象庁は既に出航して海洋気象観測に向かっていった清風丸に海水採取等を実施するように指示、さらに、水産庁は調査船陽光丸を十一月上、中旬に派遣をして魚やプランクトンを採取するという、そういうような方式になっているわけでございます。

○尾身委員 そこで、この調査船は投棄地点から二百海里離れた海域の調査までをするのだ、さらに現場までは行けないのだというようなことで考えておられるようでありますが、しかし、海洋投棄をした現場から二百海里離れてそこで調査をするということではなしに、むしろ投棄の現場までも行って、その周辺も含めて、その現地も含めてくまなく調査をすることが実態把握のためには私は必要だと思うわけであります。

 今までいろいろなこの種の問題が起こってきたときに、日本の船が公海の中で行けるところまでしか行ってないという実情はありますが、今、かつての日本、ロシアの関係と違いまして新しい関係になってきた以上、私は現場まで行って調査をすることができるはずであるというふうに考えておりますが、本部長としての長官の御意見を承りたいと思います。

○江田国務大臣 おっしゃるとおり、これまでは投棄の現場にまではなかなか行けない、投棄海域までは行けないというので、日本海の場合ですとちょうど半分ぐらいのところに線を引いて、そこから日本側のところをたくさん地点を定めて調査をしたということだったわけですね。

 投棄海域まで行って採取をしてくれば、それはそれでさらに精密な調査になるということはおっしゃるとおりでございまして、そこで、今までのところでは、これはロシアと日本とが共同でやるということでなければいろいろな外交上の難しい問題が起きてきたりしますので、共同で調査をしましょうということで共同調査の段取りを進めている。これが今度、十一月の十日、十一日に作業部会をやるということなのでございます。

 しかし、それだけでいいのか。せっかく日ロの新しい関係ということになってきたのだから、その関係を踏まえて、日本側の独自の調査をソ連側の了解もきっちり得て投棄海域でやれるようにしてはどうかというお話もございますし、私も、そういうことができればそれはそれにこしたことはないし、こしたことがなければそれはそのために努力をすべきものだと思いまして、そういう調査をやらせろということを、今、外交ルートを通じてロシア側に申し入れをしようとしているというところでございます。

○尾身委員 ちょっと大臣、御答弁の中身を確認をしたいのですが、放射能対策本部としては、今のこの日ロの関係から見て、私は少なくとも調査船が日本から出ていく以上は、そして、かつ、ロシアの発表によれば投棄をした場所もわかっている以上、当然その地点まで行って調査をするように、当然今までロシア側に申し入れていてもおかしくないはずだと思うのであります。

 ですから、しようとしているというような御答弁でありましたが、それはどういう状況になっているのか。全然申し入れてないのか、申し入れてあるのか、放射能対策本部としてはどういうお考えなのか、その点についてもう一遍お答えをお願いします。

○江田国務大臣 これはおっしゃるとおり、そういう申し入れをすべきだということで、申し入れを今しようとしているところなんですが、具体的にどこまで手続が今進んでいるかというのは、外務省の方から答弁をしてもらいます。

○尾身委員 じゃ、外務省からその点について。

○林説明員 御指摘のとおり、当該投棄場所はロシアの二百海里の経済水域の中にございまして、我々としては当然にその二百海里を認めているわけではございませんけれども、そこに政府の船が入ることについては、何らロシア側との了解なしに入りますと不測の事態が起こり得るということがございますので、今回の件につきましては、本部の方からも当該水域に入りたいという御要請がありましたので、現在外交ルートを通じてロシア側にその通報を行っております。既に行いました。

○尾身委員 それでは、これは実は一昨日の自民党の議論の中で、科学技術部会が開かれたときに、当該水域に行くべきではないかという議論がございまして、その中で、科学技術庁にもその要請をし、科学技術庁から外務省経由で、現地まで調査船を行かせて調査をするという方向に転換をしたというふうに私は理解をしておりますが、そういう方向に、最初は二百海里離れたところまでしか行かないという方針を決めたのを今初めて正式の席でお伺いをいたしましたが、現場まで行くように、行って調査をするようにロシア側に正式の外交ルートで申し入れたというふうに、転換をして申し入れたというふうに私は理解をいたしましたが、それでよろしゅうございましょうか。

○江田国務大臣 自民党の皆さんの御努力を大変高く評価をしたいと思います。そのとおりでございます。

○林説明員 科学技術庁の方から、投棄場所にも調査船を入れたいという御要請を受けまして、昨日、外交ルートを通じてロシア側に通報を行ったところでございます。

○尾身委員 今のお話を聞いて、私は、それが当然最初の段階からとるべき措置だったというふうに思いますが、正式に外務省から申し入れた以上、事柄の性格から見て、少なくとも友好関係にあると言われている日本とロシアの関係から見て、ロシア側がこれを断る理由はないと私は考えておりますので、しっかりとした外交ルートでの話し合いをして、ぜひこれが実現をされるように、外務省としても全力で努力をしていただくように要請をいたします。

 それからもう一つ、先ほどの宮路委員の質問に対する補足質問でありますが、この海洋投棄を行う前、事前にロシアはIAEAには通告をしたけれども、IMOには通告をしなかったというふうな話がございましたが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか、もう一遍質問しておきます。

○林説明員 そのとおりでございます。
 我々の方からTMOの事務局に照会いたしましたところ、ロシアから通報は来ていないということで、それを踏まえまして、十月十九日付でロンドン条約の事務局の、ナウケと発言するのだろうと思いますが、ナウケさんからロシアあてに、通報が来てないけれども通報する必要があるという書簡が発出されております。

○尾身委員 これは実は、事前通報というのは大変に大事なことでありまして、そのIMOの事務局長から手紙を一本当したらそれで済むというものではございません。当事国の日本としては、しかるべきできるだけ早い機会にTMOの、あるいはロンドン条約のメンバーの正式の会議の席で、こういう事前通報がなかったのは極めて遺憾であるし、ロンドン条約に違反しているのだからこの点は厳に守るように、きちっとしたロンドン条約の会議で、国際会議の席でそういうことの再確認をすべきだと思いますが、その点について外務省の方針を伺います。

○林説明員 ロンドン条約の締約国会議が、来月、ロンドンで開催される予定になっております。その際、海洋投棄の問題についても当然大きな議題になるということが予想されておりますので、その会議の場で、本件についても議論をしたいというふうに思っております。
○尾身委員 それから、先ほどからお話に出ております、これからの日本の低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の問題でありますが、今後どうするつもりかについて、簡単に大臣からもう一言お願いします。

○江田国務大臣 簡単に申し上げますと、科学技術的見地のみからいえば、低レベルの放射性廃棄物をIAEAの基準にのっとって海洋投棄をすることは、安全上は問題がないと認識をしておる。しかし、科学技術だけのことで物事を決めるわけにいかないので、ロンドン条約の締約国会議で全面禁止という方向が出てくれば、そのときにどういう態度をとるか。これは、全面禁止という方向性で関係各機関の調整を進めていくということでございます。

○尾身委員 もう一つ質問させていただきたいのですが、今回のロシアの海洋投棄は、今大臣が言われた科学技術的見地から見て、IAEAの基準での投棄は安全上問題がないというふうにおっしゃいましたが、今回のロシアの投棄はIAEAの基準に合っていて安全上問題ないというふうに判断をされるのか、それに抵触しているというふうに判断をされるのか、その点はいかがでしょうか。

○江田国務大臣 安全上どうであるかというのは、これは調査をしてみなければわからないことでありますが、IAEAの基準に合致しているということについて言えば、基準に合致していないと私どもは判断をしております。

 どういう基準かという細かなところは必要なら答弁させますが、まず、非密封、密封をしていない液体放射性廃棄物でございまして、まずその点だけをとってみても、これは明らかに基準に抵触をしておると考えております。

○尾身委員 それから、日本の将来の低レベル放射性廃棄物の投棄問題につきまして、全面禁止、全面禁止というお話を大臣はされておりますが、ロンドン条約では、すべて一時停止をするという表現になっているわけであります。ですから、すべてという言葉は、私、全面禁止という、全面という単語に置きかえてもいいのではないかと思いますが、いろんな科学的知見とか何かがはっきりするまで、一時すべて停止をするということに同意をしたというのが私はロンドン条約の本旨であるというふうに理解をしておりますが、この点について外務省からちょっと、それでいいかどうか、御意見を伺います。

○林説明員 現在、ロンドン条約に基づきます決議で、一時自粛がなされております。この自粛決議は二度にわたってなされておりまして、八三年と八五年の二回にわたってなされております。

 八五年、現在有効な決議につきましては、その前回の決議以降、科学的な部分についての調査研究の結果が出たことを踏まえて、社会的、法律的、経済的に廃棄をどうするかという調査研究が出るまで、一時全面的に自粛するということになっております。

○尾身委員 そこで、大臣は全面禁止と言われますが、ロンドン条約の趣旨は、いろんな科学的知見、研究等がまだ完全に進んでいない現状にかんがみ、全面的に一時中止をするということになっているわけであります。ですから、その点については、私は今のロンドン条約の趣旨については賛成であります。まだまだこれからいろんな社会的、科学的、技術的状況が変わってくると思いますし、科学技術の進歩もあると思います。

 したがいまして、この問題については、さっき同僚の森委員からも質問がございましたが、永久に全面禁止をするというふうに受け取られかねないような表現を、大臣、先ほどからとっておられますが、その点については、私は、安全性の確保を最優先としながらも、原子力開発を順調に進めていくという世界人類的な要請もありますので、その辺を十分踏まえながら対応していただきたいというふうに要望いたしまして、この点についての大臣のお答えを最後にいただきまして、質問を終わらせていただきます。

○江田国務大臣 今外務省の方からも答弁ありましたとおり、これまでのところ、ロンドン条約の締約国協議会議というんですか、ここでは二度にわたってモラトリアム決議がなされておる。それは、すべてであるが一時であるということで、それが今現在のところですね。

 それで、これからその全面禁止ということが議題になってくるであろう今度の……(尾身委員「全面とすべてと同じなんですか、違うんですか」と呼ぶ)それはそのときに、だから十一月の締約国会議でどういう議題になってくるかということはまだ決まっているわけではありませんので、何とも今この段階で言えることではないと思いますけれども、一時ということでなくて全面的ですから、これから先もずっと禁止という、全面停止ではなくて、モラトリアムではなくて、全面禁止ということが話題になってくることは考えられる。

 そこで、私がさっき申し上げたのは、科学技術的にこれは安全であるというのも一つの政策判断ですが、科学技術的だけではなくて、ほかに、海というものの人類にとっての意味合いを考えて、やはりそういうところにこういうものを投棄をするということはやめようという、そういう政策判断もあるであろう。日本としては全面禁止という方向性を持って今調整中だということでございますが、おっしゃるように、技術進歩というものはこれからまだまだ進んでいくわけですから、そうすると、また事態が変わればそれは将来にわたってどういう変化があるか、これはいろいろな可能性は今後ともあると思います。

○尾身委員 済みません、大臣の御答弁、ちょっと納得しかねる点がございますが、時間がございませんので、後でまた追加の質問をさせていただきます。
 ありがとうございました。

○臼井委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四十二分休憩

1993/10/22-    

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