2003年12月16日

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158 参議院外交防衛委員会−(1)

質問者=佐藤昭郎(自民)、榛葉賀津也(民主)、若林秀樹(民主)山口那津男(公明)、小泉親司(共産)、大田昌秀(社民)斎藤勁(民主)、佐藤道(民主)、田村秀昭(民主)小泉親司(共産)、月原茂皓(自民)、高野博師(公明)、大田昌秀(社民)


平成十五年十二月十六日(火曜日)

○委員長(山本一太君) 外交、防衛等に関する調査のうち、イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画等に関する件を議題といたします。
 まず、政府から報告を聴取いたします。山崎内閣官房副長官。
○内閣官房副長官(山崎正昭君) ただいま議題となりましたイラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画の概要について御説明いたします。
 この基本計画は、イラク人道復興支援特措法に基づいて実施する対応措置について、その基本方針、対応措置に係る基本的事項、対応措置の種類及び内容、対応措置を実施する区域の範囲、自衛隊の部隊等の規模、構成、装備、派遣期間等について定めるものです。
 まず第一に、基本方針について御説明いたします。現在、イラクにおける主要な戦闘は終結し、国際社会は同国の復興支援に積極的に取り組んでいますが、イラクの再建は、イラク国民や中東地域の平和と安定はもとより、我が国を含む国際社会の平和と安全の確保にとって極めて重要です。このため、我が国は、イラクの復興のため主体的かつ積極的にできる限りの支援を行うこととし、イラク人道復興支援特措法に基づき、人道復興支援活動を中心とした対応措置を実施することとします。
 第二に、人道復興支援活動の実施に関する基本的事項について御説明いたします。イラクでは医療等の分野を中心に早急な支援が必要であり、自衛隊の部隊とイラク復興支援職員は、関係在外公館とも密接に連携して一致協力して復興支援に取り組むものとします。また、現地社会との良好な関係を築くことも重要であり、できる限りの努力を行うこととします。
 第三に、人道復興支援活動の種類及び内容についてですが、自衛隊の部隊による人道復興支援活動については、安全対策を講じた上で、慎重かつ柔軟に医療、給水、学校等の公共施設の復旧・整備及び人道復興関連物資等の輸送を実施することとします。また、イラク復興支援職員による人道復興支援活動については、治安状況を十分に見極め、安全対策を講じ、安全の確保を前提として、慎重かつ柔軟に医療、イラクの復興を支援する上で必要な施設の復旧・整備及び利水条件の改善を実施することとします。
 第四に、人道復興支援活動を実施する区域の範囲について御説明いたします。自衛隊の部隊による人道復興支援活動を実施する区域の範囲は、医療、給水及び学校等の公共施設の復旧・整備についてはムサンナー県を中心としたイラク南東部とします。人道復興関連物資等の輸送に関しては、航空機による輸送についてはクウェート及びイラク国内の飛行場施設とし、車両による輸送についてはムサンナー県を中心としたイラク南東部とし、艦艇による輸送についてはペルシャ湾を含むインド洋とします。
 イラク復興支援職員の人道復興支援活動を実施する区域の範囲は、医療についてはイラク国内における病院・医療施設とし、イラクの復興を支援する上で必要な施設の復旧・整備についてはイラク国内における浄水場等の公共施設とし、利水条件の改善についてはムサンナー県を中心としたイラク南東部とします。
 第五に、人道復興支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊及び派遣期間について御説明いたします。
 まず、部隊の規模、構成、装備について申し上げます。医療、給水及び学校の公共施設の復旧・整備を行うための陸上自衛隊の部隊については、人員六百名以内、ブルドーザー、装輪装甲車、軽装甲機動車その他の車両二百両以内と、安全確保に必要なけん銃、小銃、機関銃、無反動砲及び個人携帯対戦車弾とします。人道関連物資等の輸送を行う航空自衛隊の部隊については、輸送機その他の輸送に適した航空機八機以内と、安全確保に必要なけん銃、小銃及び機関けん銃とします。陸上自衛隊の輸送等を行う海上自衛隊の部隊については、輸送艦その他の輸送に適した艦艇二隻以内及び護衛艦二隻以内とします。
 次に、派遣期間については、平成十五年十二月十五日から平成十六年十二月十四日までとします。
 第六に、国際連合等に譲渡するために関係行政機関がその事務又は事業の用に供していた物品以外の物品を調達するに際しての重要事項として、政府はイラク復興支援職員が公共施設に設置する発電機及び利水条件の改善を行うに必要な水・給水設備を調達するものとします。
 第七に、その他人道復興支援活動の実施に関する重要事項として、我が国は、人道復興支援活動を的確に実施し得るよう、国際連合等と十分協議し、密接に連絡を取るものとします。
 第八に、安全確保支援活動の実施に関する事項として、人道復興支援活動を行う自衛隊の部隊は、人道復興支援活動に支障を及ぼさない範囲で、安全確保支援活動として、医療、輸送、保管、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒を実施することができるものとします。また、安全確保支援活動を実施する区域の範囲は、自衛隊の部隊が人道復興支援活動を実施する区域の範囲とします。
 第九に、対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整及び協力に関する事項として、内閣官房を中心に防衛庁・自衛隊、内閣府及び外務省を始めとする関係行政機関の密接な連絡調整を図り、必要な協力を行うものとします。
 イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置の実施は、我が国が、世界の他の多くの国とともに、イラクの復興を支援し、中東地域及び世界の平和と安定に寄与しようとする取組に一層積極的に参画することを意味するものです。政府としては、基本計画に定められた対応措置を、安全の確保に十分配慮しつつ、円滑かつ適正に実施していくため、全力で取り組む所存でありますので、御理解、御協力をお願い申し上げます。
 以上でございます。
○委員長(山本一太君) 以上で報告の聴取は終わりました。
    ─────────────
○委員長(山本一太君) この際、一言申し上げます。
 去る十一月二十九日、イラクにおいて、復興支援に従事されていた在英国日本国大使館奥克彦大使、在イラク日本国大使館井ノ上正盛一等書記官及び現地職員が、官用車での移動中、何者かに襲撃を受け、不慮の死を遂げられました。誠に哀悼痛惜に堪えません。
 ここに、皆様とともに謹んで黙祷をささげ、哀悼の意を表しまして御冥福をお祈り申し上げたいと思います。
 どうぞ御起立をお願いします。黙祷願います。
   〔総員起立、黙祷〕
○委員長(山本一太君) 黙祷を終わります。御着席願います。
    ─────────────
○委員長(山本一太君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐藤昭郎君 小泉総理、そして石破防衛庁長官、川口外務大臣、御苦労さまでございます。
 今日の質疑は、基本計画に基づく、基本計画を決定された、この閉会中審査の最終日でございます。閉会中審査の、二日しかございませんので。しかし、イラクへの自衛隊派遣を決定する、特措法ではイラクへ自衛隊を派遣することができる、しかしこの基本計画では派遣するといった意思をしっかり示したわけでございまして、非常に極めて大事な審議でございます。恐らく、多くの国民が、そして特に自衛隊員、派遣を覚悟した自衛隊員、そしてその家族はかたずをのんでこのテレビを見ているのではないかと推察するわけでございます。
 昨日も、衆議院で審議が午後からテレビ中継されたわけでございます。私もこれを見ていまして、質疑がしっかりかみ合って、国民がこの問題についていろいろ知りたい、疑問があるといったこの疑問をしっかり答えているかどうかという点を考えてみますと、やはり十分ではなかったのじゃないかと、こんなふうに思います。
 総理もお読みになったと聞いております、解剖学者養老孟司さんのベストセラー、「バカの壁」というのに書いてあることは本当なんだなということをちょっと一瞬感じたわけでございます。人間は話せば分かるというのは大うそであると。人間の脳出力というのはyイコールaxという一次方程式になっていて、聞きたくない話、嫌いな話になるとこのaがゼロになったり、マイナスになっていくと。何回話してもかみ合わないんだというのが言っておられたです。
 私は、基本的に、今日は与党の立場を離れて、できるだけテレビを通じて国民の皆様方にイラクへの自衛隊派遣に関する情報を分かりやすく提供する、そういう点に立ってひとつ質疑を始めたいと思います。
 日本の国会における防衛論議、昨日の野党との戦闘地域の議論はこれ典型でしたけれども、どうしても難解になるんですね。しかし、これは憲法九条を守るという、そしてそれを守りながら自衛隊を出すというためにはどうしても避けられないんです。憲法改正まで自衛隊を出さないというのならこれはある意味分かるんですけれども、そうではない。PKOも憲法を守りながらやってきた。この論議は難解ではあるけれども、ごまかしとかいい加減なものではないんですね。今日は、石破防衛庁長官にも私の疑問にしっかり答えて、国民に向けて説明していただくという気持ちでひとつお願いしたいと思います。
 そこで、世論調査では、残念ながら現時点で自衛隊の派遣に賛成の国民は半分に達していない、しかしイラクの復興支援に日本が貢献すべきだという人は六割を超えているわけでございます。また、平成十二年に防衛問題に関する世論調査、これは防衛庁が行ったんですけれども、自衛隊に関する全般的な印象では実に八二%の人が好意的な印象を持っておられる。
 総理談話にもあります、組織の力を生かし効果的な人道支援を継続的に行い得るのは自己完結性を持った自衛隊においてほかにないという意見を本当に共有してもらいたいと、こう思うわけでございます。
 そして、自衛隊幹部の発言もございました。命には当然従うが、少なくとも半分以上の国民の支持が欲しいという発言がありました。これは痛切であります。けなげであります。このような発言を聞くこと自体が私は政治の責任が問われているのではないかと思います。
 その上で、憲法、法律の解釈の論議よりも、自衛隊の現場の活動、隊員の安全確保に重点を置いて、ひとつ総理にお願いしたいと思います。
 それからもう一点、最後に、この多分日本国内の論議は、アルカイダ等のテロリストも多分注意深く聞いているんじゃないかと思うんです。奥大使、井ノ上書記官のこの非業の死に強い憤りを忘れずに、テロリストには決して屈しない、ならないという思いで御質問したいと思います。
 まず、総理、小泉総理にお伺いいたします。
 この自衛隊の派遣を決定する基本的な認識は、私は、十二月九日の総理談話、総理記者会見での発言で尽きていると思います。しかし、ここで、先ほどの、国民に対して、今日は最終、閉会中審査の最終日でございますから、更に分かりやすく、今回のイラク復興人道支援のこの意義について、テレビを通して国民に再度御説明をひとつお願いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) イラクの国が将来安定した民主的政権として立派に発展していただきたいというのは、日本国民ならず世界の多くの国民、国が願っていることだと思っております。
 できるだけ早くイラク人のイラク人による政府を立ち上げて、希望を持ってイラク国民が自らの国づくりにいそしむような環境を作っていこうということで、今、米英始め各国の国々が部隊を送って、それぞれの任務を果たそうとしている。そういうときに日本として何ができるかと。資金的な支援、物的な支援、人的な支援、日本にふさわしい主体的に考えていかなきゃならない支援、いろいろあると思います。
 そういう中にあって、今世界の中で、アメリカと日本の経済規模を含めますと、約四割近くを世界のGDPで日本とアメリカが二国で占めていると。かつて日本が、アメリカ始め各国から戦後援助を受けた、そして発展してきたという国から、むしろ援助大国と言われるように、世界の国々に支援をできるようにまで国民の努力によって発展、成長してきたわけであります。そういう中にあって、まあ、今後日本は自分のこと、この国だけ考えればいいという状況じゃないと。世界から、日本も、その発展した国としてどのような貢献が必要かということを期待していると。同時に、現在国連におきましても、加盟国に対してイラクの復興支援に努力するようにという訴えも来ている。
 なおかつ、日本の平和と安全を確保する、これは日米同盟が基本であります。日本一国だけでは日本の独立、平和、安全を確保できない。だからこそ、日本の唯一の同盟国であります米国と日米安保条約を提携して日本の安全保障を確保している。同時に、日本としては国際社会の中で孤立してはいけない。国際社会と協調していくことが戦後、敗戦後、発展させる道だということで、日本の安全と繁栄を図るためには日米同盟関係を強化していこう、そして世界の中の日本として繁栄していくためには国際社会から孤立しない、協調していこうということが今までの日本の外交方針であったわけであります。基本方針であります。この方針は過去も現在も、私は将来も変わらないと思っております。また、変えてはいけないと思っております。そういう中で、日本が今、イラク人が希望するような、またイラク人から歓迎されるような復興支援をすべきだと考えております。
 その際に、それは金だけ出せばいいという状況じゃないと。できるだけの人的な支援、汗もかいていこうと。そういうやさきに日本の貴重な外交官二人があの残虐非道な犯行で命を落とされました。あの付近では、日本の外交官のみならず、他の国の軍人でない方々も襲われて命を落としております。そして、このイラクの情勢におきますと、国連の本部が襲撃されてデメロ氏が亡くなる、あるいは赤十字まで攻撃すると。なおかつ、米英軍のみならず、またそれに協力している軍隊の人々のみならず、復興支援に何とか自分の国を立ち上げようと努力しているイラク人に対してまで襲撃している、殺害している。
 こういう状況にあって、私は人的支援という、人的な支援をしようという場合に、果たして自分で安全確保もままならない、あるいは日ごろからどのような危険に対して回避する策も訓練していない、防止策も取り得ないという人を復興支援といって送ることができるかというと、これは無理だろうと。もし行った場合に、他国の軍隊に自分の安全を確保してくださいと頼まざるを得ない。あるいは自分のホテルはどうやって安全確保させるんだと。いろんな活動もどのように自分の活動分野があるんだろうかということは、個人で行くにはなかなか難しいと。NGOを支援していこうと。NGOの民間人は今引き揚げている状況です。じゃ、国連関与しなさいと。国連も安全確保対策にはできない、腰が引けている状況であります。
 となれば、今全世界、国際社会は米英軍に撤退しろと言っていません。治安の確保、安定のためには今の占領当局、行政当局、治安確保が必要だと言っているんです。日本としては、そういう場合、人的派遣を考えた場合に、自分で安全確保策もできると、なおかつ日ごろから十分な訓練をしている、そしてホテルも泊まらないで自分で宿営地も作ることができる、近くに水があれば自分で水をきれいにしてその水を使うこともできる、物資も持っていって自分たちで料理することもできる、そういう自己完結性を持った人的支援を考えると日本には自衛隊しかいない。
 自衛隊が行くから戦争だという見方されている方がおります。今でも自衛隊を戦争に行かせるなというデモで歩いている方もいます。しかし、自衛隊が行くから戦争に行くかと。そうじゃない。自衛隊が今回派遣される場合にも、戦争ではない、武力行使はしない、戦闘行為には参加しないと。人道支援、復興支援に自衛隊でできることをやろうと、その地域も非戦闘地域よく見極めて派遣しますと。
 私は、そういう観点から、これは自分の国のことだけ考えないで、よその国が苦しんでいるんだったらその発展のために手をかすということが、自国の主権を外国から認められると同じように、外国と対等な関係に立とうとする、立とうとすれば、それは日本の責務じゃないかと憲法の前文で言っている。そういうことを考えると、私は、今回の自衛隊の派遣は、まずイラク人が希望を持って自らの国の発展のために努力していこうとする、そのイラク人が必要とし歓迎されるような活動に自衛隊諸君に行ってもらう。
 同時に、今、長年の同盟国であるアメリカが大きな犠牲を払いながら、イラクがテロリストの温床になったらどこの国が困るんだと。日本だけじゃありません。世界が、あのイラクがテロリストの拠点になったり温床になったりしたら不安におびえなきゃならない。なおかつ日本は、エネルギーの面においても中東には、八〇%以上あの地域に石油エネルギーを依存しております。あの地域の安定というのは、日本の経済の発展のために欠かすことができない、日ごろの生活からいっても。そういう点に私は、アメリカが今苦しんでいる、同盟国が大きな犠牲を払いながら、イラクの安定した民主的政権を作るためには、世界が大きな関心を占めている、各国が協力していこうというときに、同盟国として、安全でないから日本はいたしませんということが、同盟国として、信頼に足る同盟国と言えるのかどうか。
 そして、国連が全会一致で、すべての加盟国で要請しているんです、その国の事情に応じて復興支援に努力してくださいと。イラク人のため、まず。イラクの安定は、日本のみならず世界の安定にとって、平和にとって必要だと。同盟国の責任としてアメリカと協力する、これも日本の国益にかなう。なおかつ、国際社会の中で日本は国力にふさわしい責務を果たす。正にイラク人のためであり、日本のためであり、同盟国であり、国際協調体制を図る責任として、この支援活動が、私は、国際社会の中で名誉ある地位を占めたいという憲法の理念に合致しているんじゃないかと。普通の人には行けない。自衛隊だからこそ、訓練もし、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務めると宣誓して、志願して自衛隊に入隊している諸君だからこそこういう仕事ができるのではないかと。
 こういう、危険を伴うかもしれない困難な任務に赴こうとしている自衛隊諸君に、また自衛隊の家族の皆さんには、私は心から敬意を表したいと思っております。願わくば、多くの国民が、普通の一般の市民にはできないイラクの人道復興支援に当たる自衛隊諸君に対して敬意と感謝の念を持って送り出していただければ有り難いと思っております。
○佐藤昭郎君 最後の点は本当に特に大事な点だと、こんなふうに思います。
 さて、一方で、昨日来の論議、まずマスメディアの報道なんか見ていますと、戦争の大義という点が一つ議論になっております、大量破壊兵器が未発見だと。イラクの治安情勢がだんだん悪化してきている、だから武力行使を支持した政府の対応は誤りだったんじゃないか、だから今回のイラク支援もその延長線上で反対であるという意見もありますけれども、これについては、総理、もう一度ちょっと御説明していただきたい、こういうふうに思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) このことについては衆議院の審議においても度々御質問が出たところであります。
 私は、このイラクに対する開戦の経緯、国連で確かに一致しなかった面もあります。しかし、日本政府の考え方として、私は、国連決議にのっとって、過去、フセイン政権は大量破壊兵器を使用していた事実もある。また、査察団が見付けた経緯もある。なおかつ、国連の決議に沿って査察団を受け入れなさいと、無条件に無制限に、あるかないのか証明しなさいという要請に応じてこなかった、あるいは妨害してきたと。そういうことから開戦に踏み切った経緯もあります。私は、その国連憲章に沿った形で正当性があると思って支持を表明したわけであります。
 これから、フセイン大統領が拘束されて、さらにいろんな面において、尋問が始まり、大量破壊兵器等の面におきましても明らかになってくる。あるいは、どの点が解明されるかというのは今後の問題でありますけれども、私は今回のイラクの開戦の経緯におきましても、あるいは今後の面におきましてもフセイン政権を正当化する理由はないと。
 イラク開戦が起こったから今テロが起こっているわけじゃないと。イラク開戦前からテロというのは起こっているわけであります。テロリストがどこにいるか分かりませんけれども、このイラク復興に支援するというんだったらまたテロをするぞという脅しに屈したら、じゃ、だれが一体このイラク、今イラク国民が苦しんで、治安も確保もしよう、生活基盤も整えようというときに、一番喜ぶのはテロリストじゃないかと思うんです。そういうテロリストの温床にしないためにもテロリストとの対決というのは覚悟していかなきゃならないと。
 どこに来るか分からない。東京にいてもテロは来るかもしれない。ニューヨークにいてもテロはあった。バリ島においてもテロはあった。だから、イラク開戦前からテロはあったんですよ。何もしないということ、じゃテロを野方図に認めていいのかと。これじゃいかぬということで世界がテロ対決、時間は長く掛かるかもしれないけれども、困難な仕事だけれども、決意してテロと対策、テロ対策というのは世界協力してやっていかなきゃならない、そういう状況に今も私は変わりないと思っています。
○佐藤昭郎君 私も、防衛庁の政務官としてゴラン高原、自衛隊の視察に行き、シリア、ヨルダン、イスラエル、ずっとあの砂漠地帯を十時間も歩かせていただきました。また、ODAを通じて、私、何回か現地にお邪魔しています。
 外務大臣もよく御答弁されるんですけれども、やはり私は、日本の一・四倍の国土があって、砂漠がほとんどです。やはり相手のフセイン側の善意の協力なしには、百名、二百名、五百名の査察団を送り込んでも、私は、これは大量破壊兵器を発見するのは本当に極めて難しいと思うんです。今、徐々に明らかになるだろうと総理おっしゃった、大量破壊兵器の問題、私は全くそのとおりだと思います。これ、徐々に明らかになっていく問題だと、こんなふうに思っております。
 さあ、それで、外務大臣にお伺いいたします。
 今回、基本計画の決定で自衛隊を派遣すると決定したわけですけれども、いろいろなやはり政府としては代替手段もやっぱり評価と検討されたと思うんですね。これはいろいろな方が意見申しておられますけれども、国連中心の枠組みの確立、イラク攻撃をやった例えば米英は引いて、一五一一に代わる新たな国連決議をやってから出したらどうだとか、イラクの情勢、治安が安定してから出したらどうだとか、イラク人による政府が樹立した後に出したらどうかという、自衛隊、いろいろな政策提言がなされてあったわけですが、政府が今回この基本計画決定でイラクに自衛隊を今派遣するということで、若干幅はありますけれども決定された。
 こういったいろいろな政策手段の評価、また可能性等については、政府としてはどういうふうな考えを持っておられますか。
○国務大臣(川口順子君) 今、先生が幾つかの考え方、代替の考え方についておっしゃられて、それはそれぞれそういう御意見をお持ちの方というのはいらっしゃるわけですけれども、まず、国連中心でやったらどうかという御意見があるわけでございます。
 これに対して我が国の考え方というのは、これは戦争、武力行使がある前から、国連が十分に関与する形でこれに対応していくことが大事だということを言ってきておりまして、それぞれの段階で国際協調を作るための努力ということをいたしてきております。
 それで、我が国、例えば今の段階ですと、今日、中山太郎元外務大臣がニューヨークに向けてアナン事務総長とお会いになるために出発をなさいますけれども、橋本元総理あるいは高村元外務大臣、外務省の逢沢副大臣、それぞれ今、異なる国に国際協調を作るために行っていらっしゃる。そういう努力を日本としてしながら、これに対応していくことが重要だということを思っています。
 それから、国連では既に全会一致で、一四八三とか一五一一とかいう形で国際社会が全体としてイラクの復興人道支援にかかわっていくことが重要である、それぞれの国がそれぞれの立場でということですけれども、これが全会一致で正に国際が、国際社会が協調した形でやりましょうということは既に決まっているわけです。
 それで、決まっているわけですから、我が国としてはそれに対応をして、それにこたえてやっていくということであって、今新しい枠組みを更に作ることが必要かというと、これは既にあるということであります。それにのっとってそれぞれの国がいかに行動していくかという問題、それぞれの国が実際に人道復興支援に対応をしていくために、先ほど申し上げた特使を派遣したり、あるいは電話で会談をしたり、私も昨日、ロシアのカシヤノフ首相と会談をした際に、ロシアがこのイラクの復興に対してもっとその力を出していただくことが大事ではないかということも率直に申し上げましたけれども、そういう努力をやっているということです。
 それから、もう一つおっしゃった治安が落ち着くまで待ったらどうかという点でございますけれども、これについて、その治安については、今どういう形で前に進めていこうかということのプログラムが既にできております。
 来年の三月末までに、統治評議会とCPAによる治安に関する協定というものを作って、それが合意をされることになるということです。それで、統治権限を移譲後の連合軍の駐留に関してそこで規定をされるということになります。それから、来年の六月末までに、移行行政機構を選出をして承認をする。すなわち、CPAはそこで解体をされて統治評議会の任務が終了するということでして、それまで、じゃ、復興支援をすることを待つのか、日本として人を送るのを待つのか、その間それではどうするんでしょうかという問題があるわけです。
 我が国としては、今、イラクの人道復興支援をするためには時間が非常に重要で、一刻も早くいい状況をイラクにおいて作っていくことが大事である。六か月間、新しい政権ができるまでそれでは何もしないのかといえば、それはそんなことであってはならない。正に先ほど総理がおっしゃったように、テロの温床を作ることに手をかしてはいけないわけでして、その六か月間、これを無駄にすることなく支援をしていかなければいけないというふうに思っております。
 いろいろ様々な意見がありますけれども、我が国としては、国際協調を作りながら、そして時間を無駄にすることなく取り組んでいくということ、考え方です。
○佐藤昭郎君 よく分かりました。
 特にその、国連中心、国連中心と言うけれども、今でもう既にできているんであるという認識、これは大事だと思うんですね。
 一五一一というのをよく見ますと、国連安保理決議、これは、国連を、統合された多国籍軍に、国連は統合された多国籍軍に対しイラクの安全と安定の維持に貢献するすべての必要な手段を取ることを容認と、十四項で、加盟国に対し、上記十三の規定で言及されている多国籍軍に対し、軍隊を含む支援を国連のこの権限の下に提供するように要請するとあって、これは仏、独、ロ、中国、全員これ賛成して出した。この、じゃ、仏、独、ロ、中が賛成していないのに、実行していないのはなぜか。いやいや、これは腰が引いていて、実はこの決議そのものが余り重要じゃないんだというような意見も一時出ましたけれども、私は、これはやはりこの国連の現状を表しているし、国連中心、これは非常に大事ですよ、総理もおっしゃっている、協調していく。しかし、これのみにゆだねて我が国の正にこの平和と安全を、基礎を置くわけにはいかない。両方しっかりやっていかなきゃいけない。国連の現状とやはり限界を示しているのではないかと一種思うわけでございます。
 さて、外務大臣にもう一問、次にお尋ねしたいんですけれども、中東からの報道に、日本が米国と協力してイラクに自衛隊を送ればイスラムの敵として米国とともに聖戦の対象になりかねないことを意識しているのかとか、アラブ世界は日本に敵対したことがない、なのになぜ今、日本はアラブ、イスラム世界に敵対しようとしているのかとか、日本敵視広がるおそれ等の見解、報道が、これは一部だと僕は思う、一部ですね、確かに。これは日本は新聞では報道される。十月末のアルカイダのビンラディンの音声テープが、不当な戦争に参加する国々に報復すると宣言して、英国、スペインなんとなど、日本を名指ししておる。
 こういう中で、こういうものに対してどういう対応を考えておるか。これは、広報もありましょう、いろいろな立場、説明する場合がありましょう。また、テロリスト、我が国がテロリストの標的になるからイラク支援をやめるべきであるというような意見もある。これについて、少し関連していますので、どのように考えておられるのか、政府の対策、これを伺いたいと思います。
○国務大臣(川口順子君) おっしゃるように、イラクのそばにある国々、アラブの国々に対して我が国が行おうとしている自衛隊による人道復興支援に対して十分に理解を得るということは非常に重要であるというふうに思っています。
 これにつきまして、例えば私は、いろいろなその働き掛けあるいは説明の努力をしていくことが必要でございまして、幾つかのことを既にやっております。例えば、中東地域に対して、どういう考えに基づいてこれをやろうとしているか、基本計画を作ったかということですけれども、これについて、エジプトやヨルダンやイランの通信社等々に送って理解を求めたということもあります。それから、アル・ジャジーラ、これは有名なテレビ会社ですけれども、八月には日本に呼んでいろいろな説明もしております。それから、ビデオを作るといったことも行っていますし、今アラビア語のパンフレットも作成中でございます。様々なことを今、それからあとは、イラクの国営テレビ等々の、あの地域の別な、アル・ジャジーラでないほかのテレビ会社も招聘をするということをやっております。
 また、外交努力といたしまして、今、逢沢副大臣に行っていただいていますけれども、私もこの前エジプト、チュニジアを訪問いたしましたときに、エジプトのムバラク大統領、マーヘル外務大臣とお話をいたしまして、人道支援目的で自衛隊が派遣される、するということについて、これを支持するということの御発言をいただいております。
 それから、アラブ連盟の事務総長のムーサさんとおっしゃる方がいらっしゃいまして、この方はどちらかと今、いえば今まで、日本が人道目的で、復興目的で自衛隊を派遣することについては後ろ向きでいらした方なんですけれども、この方も、あくまでも人道復興支援を目的とする自衛隊のイラク派遣については、中東諸国として、ムーサ事務総長としてもこれを理解をするんだという御発言もしていらっしゃるわけです。
 アラブの周辺の国々が、これらの人道復興支援の各国の努力によってイラクが一日も早く安定をし復興していくということが非常に重要であるということを考えておりまして、チュニジアの外務大臣も、そういう形で成る、アラブの国々は国民感情がいろいろあって、軍を派遣するということについてはまだまだ難しいんだけれども支援はしていきたい、そういう形で日本との間で三国協力をしようという積極的な働き掛けもございました。ヨルダン、エジプトとは既にやっております。
 そういったことで、イラクが一日も早く復興、安定をするということが非常に望ましいんだという考えをみんな持っているということで、近隣の諸国に引き続き働き掛けをいたしていきますけれども、既にそういうような考え方を持ってもらっているということでもございます。
○佐藤昭郎君 よく分かりました。
 私もODAの関係でヨルダンの、私はイリゲーションのエンジニアですからワディアラブ・ダムというところ、これはもう二十五年も前に審査してダムを建設し、かんがいダムを建設し、それで、この間、政務官としてゴラン高原に行ったときに途中訪れた。本当に感謝されている。日本で造ったダムが満々と水をたたえている、ヨルダンの用水需要のほとんど賄っている。有り難い。
 私は、このアラブとの世界を考えたときに、日本とかとちょっと発想が逆な言い方をしているんじゃないかと思う。今までアラブ世界に対して日本は一生懸命ODA、そしてまた民間企業の方々も協力してきて、本当にいい友好関係培ってきた。これを壊す、今度のことが壊すからやるなというような意見もあるんですけれども、逆なんですね。これだけのことを築いてきたのは今日このためにあるんですよ。このときにあらゆるネットワークを使って日本の考え方を説明していく、これが僕は、私は一番大事なことだと、こんなふうに思っております。
 さあ、ちょっと警察庁、来ていただいていますかな。
 まあ、そうはいっても、このアルカイダというテロ組織等ですな、タリバンもいますけれども、これはもうルール無視の無法者ですからね、何をするか分からない。やはり自衛隊派遣によりまして、日本に対するテロリストからの恫喝とか実行の可能性ですね、これは予測して対応していかざるを得ない。国内でのテロ攻撃に対する米軍基地とか原発とかターミナル、これはなさっているでしょうし、この事実はやはり国民に向けてしっかり発信しなきゃいけない。
 そういう点で、状況、御説明お願いします。
○政府参考人(奥村萬壽雄君) 警察といたしましては、現在の大変厳しいテロ情勢にかんがみまして、一昨年の九・一一以来行ってきております各種のテロ対策を更に徹底して実施しているところであります。
 具体的には、テロリストを国内に入れないための水際対策、これは入国管理局と十分連携してやっております。それから、テロ関連情報の収集分析と、これを踏まえたテロリストの発見・捕捉活動、そして重要施設の警戒警備といった諸対策を今全国の警察挙げて推進をしているところであります。
 御指摘の警戒警備について申し上げれば、原発につきましては、ライフルあるいはサブマシンガンを装備しております銃器対策部隊が常駐をいたしまして二十四時間体制で警戒警備を行っておりますし、また、米軍基地や空港ターミナル等につきましても機動隊等を運用して十分な警戒警備を行っております。
 いずれにしましても、警察といたしましては、今後とも国内外の関係機関との連携を密にしながら情勢の変化に的確に応じたテロ対策を強力に推進いたしまして、国内でテロが起きないように万全を期してまいりたいと考えております。
○佐藤昭郎君 石破長官、お待たせしました。
 自衛隊の派遣について基本計画が決定された。国民は、これからどんな、まあ決定はしたんだけれども、どんな形で具体的に現地に自衛隊が派遣されていくようなことになるんだろうということで、少し私自身もその流れというものをもう一遍ここで確認しておきたいと思うんですね。
 今後、実施要項の策定があり、対応措置の実施命令がある、続いていくわけですけれども、これについて、どういう状況を判断しながら、自衛隊の準備状況、部隊編成とか装備装着とか訓練ですね。長官は、やはり訓練がきちっとやって、地域の安全確保について見通ししっかりしたものを持たない限りやはり出せないんだということをおっしゃっておられる。この状況、そしてそれがどういうふうな形でスケジュールに影響するのか、これをお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(石破茂君) 先生御指摘になりましたように、法律ができた時点では自衛隊を出すことができるというものでした。基本計画を定めたときに自衛隊を出すというふうな判断を定めました。そして、例えば範囲、活動の範囲と大まかなことを定めたわけであります。自衛についても大まかなことを定めました。今策定中の実施要項において、それを実施の範囲ということから、実際に具体的にやる実施区域というふうに具体化をしてまいります。それが実施要項の段階でございます。
 派遣をするかしないかということは、結局のところ派遣命令を出すか出さないかということに懸かってくると思っています。そうしましたときに、その判断の時期はいつなのかということになりますが、結局、いつも申し上げますように、自衛隊の権限あるいは装備そして能力、それが危険を抑止し危険を回避するに足るという判断を、実際に現場に赴く自衛官が、ここまでやったらばできますというふうな判断、そういう判断ができる時期だと思います。ああ、あれもやっておきたかった、こういうこともやっておきたかった、こういうものも欲しかったというような状況の下で出すということは私はあってはならないと思っています。その判断はプロである自衛官が行う、責任は当然政治が取るということだと私は思っています。
 実施要項、そして派遣命令等についての関係は大まかに言ってそういうことになろうかと思いますが、どういうような形で決めるか、これ現在議論をして作業をしておる最中でございます。しかし、どういう時期に派遣をするかということを申し上げれば、やはり現場に赴く人たちがいろんな情報から判断し、そして権限、装備あるいは能力、それでもう行けるというふうな判断をした時期だと私は思っております。
○佐藤昭郎君 次に、非常に与野党とも論議の的になっています支援活動実施区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項という、基本計画決めた事項について質疑をさせていただきたいと思います。
 非戦闘地域、これは非常に難解でありますが、しかし長官も何回もおっしゃっておられますように、我が国で憲法を守りながら自衛隊を出すということになりますと、この論議は避けて通れない。難解であるけれども、ごまかしではないんですね。これをいま一度、ひとつ国民に向かって二、三の質問で御説明していただきたいんですけれども。
 まず、非戦闘地域という分かりにくい、本当に分かりにくい概念、難解な概念を作ったのはなぜか、これをひとつ御説明していただきたい。
○国務大臣(石破茂君) 委員が政務官のときにも随分とこの議論はいたしました。まさしく難解だけれども、ごまかしではありません。で、非戦闘地域という言葉がイラク特措法に出てくるわけではありません。それは、法律をよく読んで御議論をいただかないと立法府の議論にならないと私は思っています。思い込みで議論をされても、これはいつまでたってもかみ合いません。
 どういうように出てくるかといいますと、対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう、そのような戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じてそのような戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施すると法律には書いてあるわけですね。
 じゃ、おかしいじゃないかと。この法律にはそもそも、自衛隊の活動が憲法で禁ぜられた武力の行使、武力による威嚇に当たるものであってはならないとちゃんと書いてあるじゃないかと。何で、じゃ、こういうような言葉を持ってきたんだというような御疑問があるんだろうと思います。そこはごちゃごちゃになってしまって、非戦闘地域というのは危なくないところなんだろうという思い込みがあって、そういう議論が混乱をしてしまうということがあるのだと思います。自衛隊がやることは憲法に禁ぜられた武力の行使あるいは武力による威嚇であってはならない、当然のことです。これは法律に書いてあります。
 じゃ、何でこんな概念を設けたか。
 調べてみますと、結局昭和三十四年までこのお話はさかのぼる。昭和三十四年の安保改定のときに、米軍に対する輸送等々の評価をどうするのか。その行為自体は武力の行使でもない、武力の威嚇でもない、しかしながら、そういう行為が米軍の戦闘行為と一体化している。それ自体は武力の行使でもない、武力による威嚇でもないけれども、そうやることが一体化、一つのものとして法的評価を受ける、そういうことも避けましょうねということで、現に戦闘が行われる地域あるいは活動の期間を通じてそのようなことが予測される地域、そういうところでは活動しますまいということを定めたわけでございます。
 それは、安全な地域ということではありません。安全なのかどうかということは、イラク特措法第九条において、防衛庁長官は派遣される隊員の安全に配慮しなければならない、ここで議論されるべきものなのです。安全かどうかは、非戦闘地域なんかあると思うのかという議論ではなくて、防衛庁長官はどうやって条文九条の安全配慮義務というのを果たそうとしているのかという議論において行われなければいけないのであって、非戦闘地域なんかあると思うのかということは、この条文の構成、そしてまた歴史的経緯、それを御理解がいただけないのでそういう御議論になっているのだろうと思っています。
 非戦闘地域という概念は、繰り返して申し上げますが、日本は武力の行使、武力による威嚇は行わない、そして、それが一体化していると判断されるような地域においても行動しない、その憲法の趣旨をきちんと担保するために設けられた条文であって、安全かどうかという議論は九条において議論をしていただきませんと、これはいつまでたっても議論がかみ合わない。
 ですから、戦闘地域で危険な地域、戦闘地域で安全な地域、非戦闘地域で安全な地域、非戦闘地域だが危険な地域、そういうようなカテゴリーに分かれるのであります。まさしく委員が的確におっしゃっていただいたとおりだと思っておりますが、今後ともこの御説明をきちんと御理解いただけるように、難解です、難解ですけれども、日本国憲法の趣旨をどうやって守るんだということを、長年の国会における議論も踏まえ、誠実に条文にしたのが私は特措法だと理解をいたしております。
 以上です。
○佐藤昭郎君 今の御説明で私は理解したんですが、テレビの国民が、見ている国民がやはりよくこれはやっぱり聞いていただかなきゃいけない、そういうふうに思います。
 それで、政府の説明も、確かに今おっしゃいました安全、危険、安全か危険かという概念と、非戦闘地域かそうでないかという概念は直接関係ないんだと。これはやっぱりきちっと、最初から説明がもしきちっとできておればまた少し分かりやすかったと思うんですけれども、そこはこれからの問題だと、こんなふうに思います。
 さあ、そこで、次の段階の実施区域の指定ということに移らせていただきたい。
 これは、基本計画で決められました区域の範囲というのは、長官が昨日から御説明になっておりますけれども、戦闘地域が入っている可能性もある。しかし、今度、次のステップとして要項でお決めになる、決定する実施区域、指定する区域、これはいわゆる、先ほど法律に非戦闘地域とは書いてないというんですけれども、いわゆる非戦闘地域でなければいけないということと、もっと大事なことは、先ほど長官も言われていましたように、自衛隊の部隊等の安全確保をされなきゃいけないと、この二つがあるんですね。これを、長官もさっきおっしゃいましたが、これをごっちゃにすると。ですから、非戦闘地域であること、二番目がそこで自衛隊の部隊の安全を確保しなきゃいけないと、この二つの要件を満たしたところで決めなきゃいけない、こういうことですね。ですから、なかなかに具体的なことどうか。昨日も議論ありました、バグダッドはどうか、サマワはどうか、ナシリアといったような議論がありましたけれども、この二つを見ていかなきゃいけない。
 一番目のこの非戦闘地域であることというのは、私は比較的判断しやすいと思う。しかし、自衛隊の安全をそこで確保しなきゃいけないという要項に関しては、条件に関しては、先ほどおっしゃったような自衛隊の権限、装備、訓練、こういうことも併せて情報を取って判断しないとこれは区域はできないと、こう思うんですね。
 そこで、これから実施要項においてサマワ、バグダッド等の具体的な区域の指定を行うに際しては、私、今さっと申し上げました、どういう基準に照らして、どういう情報を取ってこれから区域を指定していかれるのか、長官からお答えいただきたい。
○国務大臣(石破茂君) まず大事なことは情報なんだと思っています。
 政府の調査団も参りました。専門調査団も参りました。その概要は先生御案内のとおりでございます。
 一体その地域で、南東部は安全である、ざくっと言って南東部は安全である、それではサマワ、仮にサマワといたしましょう、はどうなのだという、いろんな安全に関する情報は、現地の方からの情報、イギリスからの情報、オランダからの情報、合衆国からの情報、いろんなものを総合して情報を精査をして、その地域の危険度はどれぐらいなのだと。ゼロではないわけです。安定はしている、しかしながら襲撃の可能性というのは否定できないと申し上げておるとおりであって、では、どのようなタイプの襲撃があるのだろうか。それもありとあらゆるものを想定して考えてみなければいけません。
 自爆テロという我々が今まで予想していなかった、少なくとも抑止力が利かないという点では自爆テロは我々の今までの考えを超えたものだと思っています。自爆テロにもいろんな形態がございます。それに対して対応できる能力を持っているのかどうか、それを総合的に勘案して、どの地域でやるのだということを決めることになると思っています。
 やはり、その危険に我々の能力をもってして対応できるということでなければ、非戦闘地域ではあるけれど、確かに国又は国に準ずる組織による組織的、計画的な国際紛争を解決する手段としての武力の行使が行われている地域ではないけれど、危険はあるんだと、それを対応できる能力がないんだということであれば、それはやっぱり実施区域ということにはなかなか難しい判断になるだろうと思っています。
 そういうことを併せ考えて、先生おっしゃいますように、非戦闘地域であるということ、そしてまた任務がきちんと遂行できる能力を持っているということ、この二つが考慮の要素だと私は思います。
○佐藤昭郎君 さあ、そこでやはり重要なのは、この議論、まあ自衛隊の隊員諸君も、また御家族も聞いておられると思うんですけれども、大事な点は、まあそこは何とか分かるが、問題はやっぱり指定された実施区域において活動できる隊員のこの安全確保が図れるかどうかという点なんですね、一番のやはり。私ども、そこに焦点を置いてひとつ議論していかなきゃいけない。
 これは、いろいろな憲法や法律論議を起こったとしても、基本的にタリバンやアルカイダといったテロリストの活動というのは憲法が想定していないんですね。三十四年からずっと積み重ねてきた憲法が想定していない分野、活動であって、厳密な論議をしても法律上の議論では防げないと思うんですね、法律で網羅できたとしても。テロリストはルール無視していると。だから、ここはここで一つおいておいて、区域の指定、指定された区域で隊員が安全に活動できるかどうかというそこの点をきちっと政府としては担保していかなきゃいけない。
 その点で御質問なんですけれども、今ぐっと述べてきましたこの一連の概念、それに伴って現地の部隊は活動していくわけですけれども、この概念を構成して、その判断の一部を現地にゆだねなきゃいけない。これはちょっと、ゆだねなきゃいけないかどうかちょっと伺わなきゃいけない。現地に、司令官等に、部隊長等にゆだねなきゃいけないところで、結果的にその部隊長等に過大な責任が生ずると。その結果、この隊員の安全確保に支障が来すというようなことがあってはいけないと思うんです。
 ここら辺の、これは安全確保の方に入っていくわけですけれども、今の一連の規定の中で、現地の部隊等が過大な負担をこの法律の中によって、規定によって日本が他国の軍隊と比較して非常に過大な現場で負担を負う、そういうことが想定されるのか。あるいは、それを除外するためのどういうようなことが考えられるのか。ちょっと天を仰いで、質問の趣旨が少し分かりにくいですかね。
 要するに、部隊の安全をこれから区域を指定して図っていくというところが大事なんです。そのときに、今の論議と現場の部隊の行動との間にどういうふうな難しさがあって、それをクリアするためにどういうことをお考えになっているのか、それを伺いたい。
○国務大臣(石破茂君) 他国の将官、いわゆる司令官の立場で物事を考えた場合に、他国の司令官に比べて負担が過大になるということは絶対にあってはならないことだと思っています。同時に、判断に遅れや迷いが一瞬でもありますと、それは起こる結果が大変重大なものになるということも考えなければいけない。
 すなわち、判断が遅れず迷わず行われる。そしてまた、そのときにイラク特措法を持ってきて、えっとこの条文はなんてやっていてできるはずはないわけですよ。小説「宣戦布告」の中に防衛六法持ってきてどうだどうだなんというような戯画的な場面がありましたが、あんなことがあっては絶対にいかぬわけであります。
 ひとつ、これは二つのことを申し上げたいと思います。
 先ほど、戦闘地域か非戦闘地域かということと安全か安全じゃないかは別の判断だということを申し上げました。しかし、条文の中にはそういうような地域、あるいはそういうことが行われると予測されるようになった場合には一時休止し、退避をして、避難をして判断を待つと、そういうような条文もございます。それは、戦闘行為と一体化にならないようにという配慮でございますが、結果的に安全に資するということはございますでしょう。
 昨日も衆議院で答弁を申し上げましたが、やはりそこの判断というのは、少しでもそういうような状況が予想されれば抑制的に、抑制的にというのはそこで頑張っているという意味じゃない、反対の意味で申し上げているのですけれども、そういうような判断がなされるべきなのだろうと思っています。結果的に安全に資する、裨益するといってもいいのですが、そういうことはあるだろうと思います。
 もう一つは、この場合に、例えば武器の使用等々は、現場に指揮官があるときは指揮官の命令に従うということになっております。そうしますと、迷いや遅れがあってはならないと申しました。そのことのために法律はこう書いてあるけれども、そのことをより具体的にするために部隊行動基準というのをきちんと定めるということだと思っています。その場合に六法全書を開くのではなくて、この場合にはこうする、この場合にはこうする、この場合にはこういう判断なのだという部隊行動基準をきちんと定めまして、そしてそれを頭で覚えただけでは絶対駄目なのであって、それが体で覚えるか、きちんと反応できるか、そこまでやる、そうした場合には絶対にその責任は問われないのです。ROEに従って行っている限り、それは責任は問わないのだ、だからその判断を瞬時に行う。それを瞬時に行えるように頭ではなくて体で理解するということと、先ほどの一時休止し、避難するとして指示を待つというものをきちんと組み合わせていって、指揮官に過大な負担を負わせることなく任務の確実性を図るということだと私は思います。
○佐藤昭郎君 ありがとうございました。
 この武器の使用、安全対策の実施と安全確保、武器の使用という点まで踏み込んで今お話しいただきました。いろいろな報道といいますか、によると、例えばよくこういうことも言われるんですね。今の特措法の規定、これは十七条の一項から四項の規定、この武器の使用についての規定、これがあるから自衛隊は現場において通常の軍隊より殊更に危険が増す、あるいは行動が大きく制約されるというような意見があります。
 例えば、部隊の安全確保は、まず一つの、近隣の他国軍隊、ここはオランダ軍ですかね、我々の近隣、これから、その救出、救援の要請があったときに駆け付けられないとか、誘拐された自衛隊の救出、自衛隊員の救出はできない、武器の使用はできないとか、イラク復興支援職員を守ることができないと。これはいろいろな、これに伴って上辺のこの言葉を追って、しっかり理解していただかないためにこういう間違った議論が出てくるところがあるわけですが、今、長官もおっしゃった、これも含めて現場の判断、一瞬のうちに判断していかなきゃいけない。ROEの問題もありました。ROEの話は今伺ったわけでございますけれども、現場の行動がこの正当防衛、緊急避難ということに限られている、あるいはこれを大事にしなきゃいけないということ、これは憲法九条からずっと引いてきた条文ですが、これによって自衛隊の現場の行動が殊更他国の軍隊と比べて制約されることがあるのかどうか、そしてまた、この武器使用基準を緩和しなきゃできないのかと、そういうことは、あるいは緩和したら非常にいいのかと。非常にいいというよりも効果的なのかどうか、必要なのかというような点について、長官のお考え、聞かせていただきたい。
○国務大臣(石破茂君) 先生御指摘のような議論がございます。マスコミの論調の中にも武器使用基準を緩和せよというようなお話、あるいは国会における御議論でもそういう話があります。じゃ、どういうふうに緩和するんですかというふうにお尋ねしたときに、こういうふうに緩和せよというお答えがなぜかないのですね。
 例えて言うと、じゃ警告射撃もせずに撃てと、こういう話なのですかというと、いやいやそうではないと。じゃ、一体何ですかということになるわけであります。
 よく向こうが撃たなきゃこっちは撃ち返せないという、撃ち返すといいますかね、向こうが撃たなければ正当防衛で撃つこともできないという議論がありますが、それはうそです。きちんと戦後の最高裁の判決、判例を読んでいただきたい。その中に、昭和二十四年の判決、判例だったと思いますが、例えば撃とうとして懐に手を入れたとき、もうそこで急迫性を判断するというような判例があったと思います。向こうが撃たなければ正当防衛として危害射撃が危害許容要件として認められないのかと、それはそうではありません。要は、どの時点で、不正に決まっているわけですから、基本的にね、どの時点で急迫性を判断するかということであって、向こうが撃たなきゃ撃てないなぞということは日本の法律は言っておりません。判例でも言っておりません。そこのところは急迫性をどのようにきちんと判断するか、その練度の問題です。その点において不十分であるという御指摘は当たりません。
 だとするならば、任務遂行を妨害する行為に対して武器の使用ができるのかというお話になります。しかしながら、我々がやりますのは治安維持活動ではありません。そういうことをやるわけではありません。基本的に人道支援ということが任務であります。人道支援をメーンに任務としているときに、それを妨害するような行為があったとして、それに対して武器を使用しなければいけないというような必然性があるとは私には考えられません。同時に、それが正当防衛でもなく緊急避難でもなく、かつまた武器等防護でもない場合に、そのような任務遂行を妨害している行為があって、それに対して武器を使わなきゃいけないというのは一体どういう場合ですかというふうにお尋ねした場合に、それはきちんとしたお答えはないわけであります。
 それじゃ、政府復興職員、復興職員に対してどうなんだというお話ですが、基本的に、そのような職員の方は自衛隊ではございませんから、安全が確保されたという地域で行動されることに相なります。そういうところでそのような危険に遭遇するということは考えられないし、そういうところに派遣をするということはそもそもあってはならないことであります。そこでそういうような行為が行われた場合に、基本的には現地の治安機関といろんな御相談をしながら、どのようにしてその方の安全を確保していくのかと、そういう御議論をまず詰めるべきだと思っています。
 それじゃ他国の、例えばオランダの部隊が攻撃されたときに助けに行けない、それはおかしいではないかという御議論があります。しかしながら、どの国も基本的に自分の部隊は自分で守るというのが当たり前のことであって、そのときに他国の支援を要請して自分の国の軍を出すなぞという無責任なことはどの国も当たり前の話やらないのです。
 実際に現場において、そういうことになったらどの国は何をやるのだということをきちんと詰めて自分の国の安全を図っていきます。その中で、日本はこういうことですよということを御説明をし、そしてまた日本の場合には、何度も同じことを申し上げますが、人道支援という仕事に行くわけです。それに安全を確保するのにふさわしい装備を持っていくわけです。それが本当にオランダがそういうような要請があったときにできるかといえば、それは任務が違うのですから、実際にそのようなことは生じ得ない。軍の共同活動というのはそういうものだということでございます。
 しかしながら、この条文を満たすような場合には自衛隊が活動するということもあり得ますが、条文はそのようなことを基本的に、オランダ軍がやられている、日本がそれを助けに行くというようなことは予定をしていない。それは実際に軍の活動において、そのようなことはあり得ないという基本的なことでございます。
○佐藤昭郎君 よく分かりました。
 私は、これは外務大臣にもお伺いしようと思ったんですが、ちょっと時間の関係であれなんですけれども、例えば捕虜の問題とか拘束された場合の取扱いの問題、日本には軍事裁判制度がないから不利なんだとか、いろいろないわゆるマスメディアの報道がされておるんですけれども、よく調べてみると、よく御説明聞くと、それはきちっと他国の軍隊と同じような取扱いを自衛隊員は受け入れられる、受けられるというようなやはり仕組みになっているということはよく勉強していかなきゃ分からないことですけれども、それは私の口から申し上げさせていただきました。
 さあ、今、もう少しですけれども、長官の方から武器使用基準についてもお話出ました。自衛官の中にも、私、この情報を間違って受け取って、またその間違った情報を発信される方もいらっしゃるというような、非常に嘆かわしいようなのがあるのは事実です、一部でございますけれども。やはり部内での情報管理そして広報、よく教えてあげる、ここのところはですね、今、長官がおっしゃったこと。やはり陸上自衛隊、特に陸上自衛隊においてはやはりどうしてもテロ、こういった問題に対する対応、こういうPKO、国際協力活動、これはどうしてもなじみのない分野なんですね。だから、隊員の訓練や装備やいろいろな今までの積み重ねと違う分野なので分かりにくいところがある。これはひとつ長官の方から、もうお答え結構ですけれども、十分ひとつ徹底していただきたい。
 それから、マスメディアにはよく、派遣に反対する家族がよく報道されるんですね。嫌がる自衛隊員をなぜ派遣するのかなどと、国民の間に間違った情報が流れている。この点も隊員の士気や訓練状況、昨日おっしゃっていただいた、非常にしっかりしている。私も実感します。これはやっぱり何らかの形で、大々的にPRするものではないけれども、きちっとした形で実像、マスメディアが、一部のマスメディアが報道される状況じゃないということを何らかの機会にひとつしっかり言っていただきたいと思います。
 最後に、総理、私、これで質問終わらせていただきますけれども、最後に総理の方から、九日の記者会見であるいは総理談話で私は尽きていると思うんですよ。本当によく私は重大な決断、そしてそれに伴うことを御説明された。しかし再度、少し状況も変わってまいりました。国民のあるいは自衛隊員の知識も大分増えてきたと思います。再度、国民の理解と支援をお願いする。そしてまた、派遣される自衛隊員、そして家族への言葉、これは私、十二月十日に先崎陸幕長を通じて北部方面隊の皆さんにおっしゃっていただいたこと、非常にいい言葉だと思います。ひとつ総理の口から直接その点も含めてお言葉をいただきたいと。それをもって私の質問を終わらせていただきます。よろしくお願いします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 自衛隊は今までも日本国内での活動のみならず、海外においてもPKO活動等、立派に任務をこなして各国から高い評価を受けております。
 今回、イラクの人道支援、復興支援、これに自衛隊の諸君に行っていただき、そして、必ずしも安全とは言えないかもしれないけれども、困難な任務にあえて当たっていただく。それは、まずイラク人自身が今後希望を持って自らの国を立ち上げていく、そして自分たちの国は自分たちの手で発展させていくんだという、その環境整備に行っていただくわけであります。決して、自衛隊諸君が行くというから、戦争に行くのではない、武力行使に行くのではない、戦闘行為に参加するために行くのではないと。
 まず、米英始め多くの国々が、現在でも犠牲者を出しながら、イラク人の政府を早く立ち上げよう、復興支援に協力しようということで現在でも活躍されている。なおかつ、開戦の経緯を超えて国連が全会一致ですべての加盟国にこのイラクの復興支援、人道支援に努力してくれと要請をしている。そういう中で、日本人として、日本国として何をすべきかと。自分の国のことだけ考えずに、日本がこれまで発展してきたのも多くの外国からの支援があったからこそであると。今、おかげさまで支援をできる、援助をできる立場に立ったと。
 そういう中にあって、日本としては、このイラク人の復興、安定、そしてイラクが安定した民主的にできるために手をかすということは、イラク人がまず一番喜ぶ。同時に多くの国が、イラクがテロリストの基地にならないで、テロリストの温床にならないで、イラクの安定した政権が中東全体の安定に導けばこの地域においての経済活動も活発になる、この地域の安全、安定というものが世界の平和と安定にも導いていく。
 そういう観点から、私は今の困難なイラクの状況にあえて、一般市民ができない、一般のふだんから訓練していない国民ができない、自分の能力ではいかんともし難い、そういう訓練もしている、能力も持っている、装備も持っている、そういう部隊というのは、今、日本国民、日本国の中において自衛隊しかない。ならば、戦争ではないんだから、復興支援、人道支援、そのために派遣するというのは憲法の理念にも合致すると。資金的支援もします、物的支援もします、人的支援もしますと。今、しかし、人的支援している人は自衛隊をおいてだれがいるんですかと。NGOの方々も引き揚げている、国連職員も治安部隊持っていない、そういう中で、私は自衛隊の活躍できる分野はあると。あるんだったら、できるだけのことをすると国際社会に約束している、日本として。
 私は、そういう意味において自衛隊の諸君が、防衛庁長官からの話を聞きますと、自分たちは元々自衛隊に入隊したときから志願して入ってきたんです、宣誓して入ってきたと。それは、事に臨んでは危険を顧みず身をもって責務の完遂に務めると宣誓して入ってきたんですと。命を受けて行くのは、既に自分たちの仕事が認められて決意を固めて行きますという隊員が実に多いと。そういう決意を聞いて実に心強く、良き自衛官を持ったなという誇りで一杯であります。
 こういうときに、私は、我々一般国民はでき得ない、自衛隊の諸君がイラクに行って復興支援、人道支援、イラク人が希望する、イラク人から歓迎される仕事をするということに対しては、立場を超えて多くの国民が敬意と感謝の念を持って送り出していただければと思っております。
○佐藤昭郎君 終わります。
 どうもありがとうございました。


2003/12/16

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