2001/04 |
福岡事件、司法の危機 (活動日誌から) |
参考: 捜査情報漏洩事件(西日本新聞)
2月8日 福岡事件
10時から、福岡の山下次席検事と古川高裁判事の件につき、法務省と最高裁から事情聴取。
裁判官と検察官の馴れ合いは、決してあってはならないことです。今回のケースは、司法の信頼が、馴れ合いによって崩れているのですから、被害者側のプライバシー等以外は、捜査への支障は説明拒否の理由にならず、すべて明らかにしなければなりません。また、裁判所と検察庁の調査は、身内の調査ですから、不十分です。調査の結果だけでなく経過も、国民の監視の目に晒すことが必要。つまり国会の早期の審議は不可欠です。
2月9日 忌避(司法の危機)
福岡高裁で、古川判事が関与した判決の言渡しに、弁護人が待ったをかけました。山下次席検事から妻の捜査情報を聞いていた古川裁判官も、そのことを知っていた(と思われる)裁判長も、ことさら検察官に有利な判断をするおそれがあり、公正な判断は期待できないから、「忌避」するというのです。申し立てられても仕方がないと思います。山下検事の更迭が何度も報じられていますが、当然のことです。
忌避の裁判を、「法匪」の屁理屈でごまかしては、大変なことになります。厳格な調査をして、はっきりした結論を出さないと、国民が裁判所全体を忌避することになります。国民は、今度の事態は氷山の一角ではないかと、疑っているのです。こんなことが常態だとすると、国民に、裁判所の判断は公正だから信頼しろと言っても、できるはずがありません。国民の信頼を回復できるか、司法の能力が問われています。立法も行政も同じです。
司法の崩壊
司法の状況は、「危機」と言うより「崩壊」だというご指摘を頂きました。そのとおりだと思います。中坊公平さんと佐藤道夫さんの「論争」は、私は中坊さんに軍配を上げます。佐藤さんはまだ、司法官僚をかばっていると思います。
しかし、建て直しの努力を、放棄することは出来ません。そこで私は、まず国民の代表としての国会の関与、次に制度改革(例えば法曹一元など)を、考えているのです。出入り自由の判検事交流は、きっぱり止めなければなりません。
2月13日 司法の信頼回復を妨げる与党
福岡の山下前地検次席検事と古川高裁判事の事件は、司法の危機を通り越して、司法の崩壊だと言われています。関係者だけに、調査を任せていては、国民の信頼はとうてい取り戻せません。そこで私は、参議院法務委員会で集中審査をすべきだと問題提起し、今日1時から、理事懇談会が開かれました。
与党は、まず法務大臣の所信の聴取から始めるべきだと主張。私をはじめ野党は、法務大臣と最高裁長官代理者から、調査の中間報告を聞き、審議を進めるべきだと主張。今日は持ち帰りとなりました。
大臣所信は、森内閣の施政全体の一部分としての、法務行政についてのことです。森内閣の施政方針全体が衆議院の予算委員会で審議されており、さらに参議院の予算委員会での審議もあります。少なくとも、参議院予算委の総括質議が終わってからでないと、参議院の法務委員会だけで森内閣の施政の一部である法務行政の審議に入っても、焦点の合った審議になりません。
それどころか、与党の主張は、各委員会での審議をなし崩しに始め、予算審議を虫食い状態にして、逃げようという魂胆も見られます。筋違いの主張で、野党の追及を逃げようとしているのです。
あくまで私たちの主張通り、この問題に限った集中審議をすべきです。あれこれ口実を設けて逃げる与党の姿勢は、司法の信頼回復などどうでも良いという態度です。国民の厳しい批判を免れません。
法務理事懇
1時からの法務理事懇は、既報のとおりです。その後、自民党の石渡理事と2人だけで協議をしましたが、溝は埋まりません。
2月16日 忌避認容
福岡高裁が今日、古川判事に対する忌避を認める決定を下しました。古川判事は、(1)情報提供により、捜査の帰趨庁に強い利害関係を有することになり、(2)裁判官に対する異例の措置だと認識し、検察に対し「負い目」を負い、(3)捜査指揮権が高検に移ってからは、妻の生殺与奪の権限を高検に握られたから立ちち会いの高検検事に対し中立公平な処理を期待することは困難で、「不公平な裁判をするおそれ」があるというのです。控訴審はやり直しです。
2月22日 福岡事件
8時から法務部門会議。法務省と最高裁からヒアリング。山下検事の件は福岡地検に、福岡地裁職員の件は最高検に、告発がなされ、共に最高検総務部長の元で捜査中とのこと。最高裁は、事務総局総務局長、刑事局長らの調査チームで調査中で、適切な時期に公表とのこと。古川判事は、係属事件のない福岡高裁特別部に配置換えで、調査に応じているそうです。「公表時期に妙な配慮を加えると、信用されませんよ」と釘を差しました。
2月24日 福岡事件、法曹一元
福岡事件で最高裁は、事案の調査が終わった後に、適切な時期にこれを公表するという態度です。そのやり方ではやはり、国民には、都合の悪いところは隠すか辻褄合わせをして、突っ込まれないように仕上げた上で、情報公開をするのだと、見えてしまうのです。そこまで信頼が傷ついているのです。分かったことはその都度、情報公開するという姿勢が、必要なのだと思います。
福岡事件の問題点は、検察と裁判所の関係です。私はもう一つ、全く別の点を指摘しておきます。それは、裁判官の質です。古川判事は全く知らない人なので、あくまで一般論です。裁判官の日常の社会生活は、やはり社会一般からはかけ離れています。わが国では特に、裁判官に市民性が欠けていることが指摘されています。市民的自由を嫌う傾向もあります。
現在の日本の制度は、研修所教育を終了した段階で、20代半ばで裁判官のキャリアを始め、10年毎の再任はあるとしても、65歳まで裁判官としての人生を続ける制度です。これは、人を育てる制度でないし、問題のある人を選別できる制度でもありません。仲間内だけで人を育て、問題があっても何とかかくまうか、目に付かぬように排除してしまいます。裁判官任用制度の改善に、やっと議論の火がつきかけていますが、法曹一元の導入を、本気で考えてみてはどうでしょうか。
3月5日 若干のご報告
気がついたことを、1、2、報告します。
事件になっているのは、(1)園子容疑者の一連の事件〈脅迫、福岡西警察署に告訴、福岡地検〉、(2)山下検事の件〈秘密漏洩、地検に告発、最高検で捜査中〉、(3)古川判事の件〈証拠隠滅、福岡西署に告発、同署から福岡地検へ〉、(4)福岡地裁の職員2名の件〈秘密漏洩、最高検に告発、最高検が捜査中〉の4件だと思います。
パソコンの操作については、私も全くの素人で、よく分からないのですが、消去されてなかったようです。福岡西署が、操作ミスなのでしょうか、アクセスできずに焦って、消去されたと判断したが、じっくりやってみたら、出てきたということのようです。よく分かりません。このあたりも、完全情報公開を求めていきたいと思います。
こうした点を私がここで明らかにすると、法務当局は私にも、口をつぐむかも知れません。私は今、最後に全部出来上がったところで「情報公開」するのでなく、「その都度公開」の方がいいよと言っているのですが、特に最高裁の方が固いようです。
3月10日 福岡事件
昨日、福岡事件の処分が発表されました。山下検事は不起訴、停職6か月。依願退職。不起訴理由は、「嫌疑なし」のようです。山下検事の秘密漏洩は、職務上の正当行為だという判断のようですが、彼に事件処理の権限があったのか、判事の身内のことだという理由で判断が歪められたところはないか。身内に甘い処分との批判を受けるのではないでしょうか。
3月13日 法務部門会議
9時から1時間半、法務部門会議。弁護士法改正案(弁護士法人)と福岡事件のヒアリング。福岡事件は、9日に法務省から「調査結果」と法相談話が出ましたが、いろいろ疑問があります。最高裁は、明日の裁判官会議で結果が報告されます。15日に参議院の法務委員会で、私が質疑することになりそうです。
3月15日 参議院・法務委員会
1時から90分間、私が福岡事件について法務委員会で質問。相手は法相、官房長、刑事局長、最高裁事務総長、人事局長、警察庁長官、司法制度改革審議会事務局長。
法務省の報告については、(1)山下次席(当時)にいかなる捜査権があったのか?、(2)主任検事も警察も飛び越し、被害者への配慮もないまま、古川判事に接触した理由は、捜査権の行使でなく、秘密漏洩だったからではないか?。
最高裁の報告については、(1)フロッピーが一枚だけ警察に押収されず、後に検察に任意提出されている理由は?、(2)最高裁関係者だけがひとりも事情聴取されていない理由は?。司法制度改革審に、この事件は陪審の必要性を示しているのではないかとか、最高裁に、裁判官会議の議事録を公開すべきではないかとか、質しました。
参院・法務委員会会議録
3月22日 法務委質問(コピー、報告書、公証人)
私の質問は、まず福岡事件のコピー問題。コピーしたのは、令状請求署のほか疎明資料すべて。捜査報告書など20数通、30数通という、膨大な捜査書類一式です。担当者がひとりでコピーし、後にシュレッダーにかけたというのですから、秘密漏洩に当たるという認識があったのではないでしょうか。
次ぎに、最高裁の調査報告書の取り扱い。最高裁関係者はひとりも聴取されていません。その上、マスコミや国会議員にはこれを配布したのに、最高裁のHPには載せられないと言うのです。理由は関係者のプライバシーへの配慮で、例えば子どもが学校でいじめられたりすると言うのです。法務省は調査結果をとっくにHPに載せており、著作権のことなど考えていないと言います。
詰めていくと、今朝は概要を作って載せると言い、質疑の中では仮名処理をして載せると変わってきました。理屈に自信が無くなってきたのでしょう。しかし、最高裁が「都合の悪い」ところの処理を済ませたものだけしか、国民はアクセスできないとすると、おかみ意識丸出しで、司法の信頼は回復できません。最高裁の調査報告書が、そのまま国民の検証に晒される過程を経ることが、不可欠だと思います。最高裁の情報処理が身勝手でないかどうかを検証し、また私の批判が的はずれかどうかを判断していただくため、このHPに、最高裁から入手した調査報告書を全文引用します。なお、最高裁判所規則で、司法行政の情報公開制度を作ることを提案しました。
参院・法務委員会会議録(3/22)
4月2日 最高裁情報公開
夕方、最高裁から朗報。福岡事件の調査報告書については、国民的議論になっており、そのための資料としての価値も高いので、仮名処理をせず、原文のまま最高裁のHPでも公表することにしたというのです。古川判事の分限裁判については、最高裁判決と同じ扱いとし、仮名処理だけでこれもHPに載ります。
さらに、司法行政の情報公開については、3月29日付の事務総長による依命通達で、その制度を整えました。将来は、最高裁規則を検討されるでしょう。
4月3日 最高裁の情報公開
福岡事件の古川判事に対し申し立てられていた分限裁判につき、最高裁は3月30日、大法廷決定を下しました。平成13年(分)第3号 裁判官に対する懲戒申立て事件です。
今日17時頃アクセスすると、最高裁のHPの「最近の最高裁判決」欄に、これが仮名処理の上掲載されていました。ところが22時頃アクセスすると、例の「調査報告書」が「等」付きで掲載されており、開いてみると、福岡高裁長官(第1号)、同事務局長(第2号)に続いて第3号が、掲載されていました。いずれも仮名処理されないままです。
多分、担当した局の処理方針の違いとか、理屈はあるのでしょうが、次第に情報公開が進んでいるようです。
4月18日 訴追委員会と弾劾裁判所
訴追委員会の審議内容は、多分全面公開にはならないのではないかと思います。しかし、結論が出たときには、委員長が何か発表すると思います。
審議内容については、各党から委員が出ているので、この人たちがどうするかです。漏れてくると思います。
訴追委員会の結論は、訴追猶予と不訴追とがあります。猶予は、訴追事由はあるが、罷免まで求めるのは酷という場合です。不訴追は、訴追事由がないか、あると言えないという場合です。
弾劾裁判で白となる場合とは、訴追委員会が罷免相当との結論を出し、訴追したのに、裁判の結果、真っ白又は灰色で、罷免の根拠となる事由が、認められるところまでいかないという場合です。
4月20日 不訴追
裁判官訴追委員会が、古川判事を不訴追としました。訴追委員会は、訴追者です。それを誤り、弾劾裁判所と同じ立場に立った判断をしたのでないかと心配します。
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